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教育の経済学分析を頑張って欲しいです

2006年09月03日 18時19分15秒 | 教育問題
以前に社会科学の方が理系よりも将来所得は多いかもよ、とか記事(将来を考えるなら、社会科学選択が有利)に書いておいたのですけれども、大変よくまとまっている文献を見つけたので紹介したいと思います。

日本の教育経済学:実証分析の展望と課題


小塩隆士先生と妹尾渉先生の共著になっておりますが、過去の実証研究を中心に基本的文献がたくさん紹介されており、ざーっと見ていくのには勉強になりましたよ(が、難しい部分もあるね、私にとっては。笑)。中にはいいペーパーがあるESRIでございます。民間シンクタンクなんかに分析とか外注する必要がないのではないの?といつも思うのですけどね。ふんだくられてるし。まあ、これは関係ないからいいのですけど。


中身は割と楽しく読めますよ。例のベッカー先生も登場しますし。人的資本論はベッカー先生なのかー、と初めて知りました。


中身は是非ご自身でお読みいただくとして、特に目を引いたのは「数学の成績」と将来所得の関係ですけれども、数学の成績がいいと所得の多い職業に就く可能性が高く、期待できるかもよ、と(笑)。これはひょっとして理系にも反撃チャンスかも、と思わせといて、実は文系だけど数学を頻用する経済学分野であったりなんかすると、もうガックリ、って感じでしょうか。でも、階層化を軽減する可能性があるかもよ、ということらしいので、低学歴・低所得層の親御さんたちは、「とりあえず、『数学だけ』はガンバレ、受験には数学を必ず選択せよ」と言ってみるのも一つの方法ではあります。ナルホド!!


それから、教員とか教育の成果に関する研究もありますが、古いものも多く、日本での実証研究は少ないようですので、お手の空いてる経済学者さんたちは、こぞって教育分野の分析をお勧めいたします。本当に。格差社会が云々とか、階層化・格差再生産なんかもこうした教育の実証研究によって、本当の要因とか、一般的に言われてるのが正しいのかどうかが見えてくるかもしれません。案外と、違ってたりすることもあるかもしれませんし。教育学的或いは社会学的な分析とも違った視点が生まれると思いますし。


それより何より、安倍構想では「教育改革」というのが目玉の一つですので、「再チャレ」ものとかの関連もあって、「予算」が付きやすいと思われます。これは「研究費獲得の狙い目」であると思いますので、どしどしご参加下さい。

とか、こんな冗談を書いてしまうと、本当に「予算目当てなんでないの?」という誤解を生ずる恐れがありますよね。ゴメンナサイ。でも、教育分野の経済学的ま実証分析は本当に大事だと思いますよ。何故なら、昨今ハヤリの下層とか下流とか言われる家庭に育ってしまえば、本当に次の世代も、その次もずっと浮かび上がれない、という危惧はありますから、もしも教育のやり方とかでそれが変われるのであれば、チャンスを広げてあげる政策は必要だと思いますので。



貸金業者数減少は上限引下げが原因か

2006年09月03日 16時46分52秒 | 社会全般
何度も書いてきたが、弱小業者数の減少が始まったのは00年の金利引下げ以前からです。堂下論文とか貸金業界の人たちが言うような、「2000年の上限金利引下げのせいで中小業者は減少した」というような、安直な推定は当然なのでしょうか?こういうのが、当たり前と思うことに甚だ疑問を感じますね。


大手の貸出比率は経年的に上昇してきた。これは競争力があることで達成されただけであって、普通に考えれば大手スーパーが弱小個人商店を駆逐するのと何ら変わりないように思えるが。上限が引き下げが本当の原因だ、などとは思えないのである。


金融庁の統計上の区分としては「消費者向無担保金融業者」というのがありますが、一般的な貸金業はこれです。で、90年には約8000社あったのですが、90年代は一貫して減少傾向でした。90年以前でも、上限が段階的引下げが行われていたので、どこからが引下げの影響なのは不明ですけれども、かつては貸金業者は事業者向けも含めて約8万社あったと言われていますが、それが90年には約21000社に減少してきたのですね。なので、ずーっと昔からほぼ減少トレンドを続けてきて、大手への集約化が進んでいったという過程を見ているだけとも考えられるのです。


で、約8000社から98年には6067社、99年には5859社に減少してきたのです。10年くらいで2000以上減ってきたのです。大手の無人機登場が93年、広告緩和が95年、社内上限金利引下げが97年頃までですから、その間は中小業者数は確実に減ってきたのですよ。ところが00年の上限引下げ直前には逆に増加しているのですよ。6029社に増えている。引下げ完了後の01年には6218社ともっと増えたのです。この時に多かったと思われるのは、財務局の認可を受けて、通常の借り手を釣り上げる「闇金」が増加したことです。結局、上限金利引下げが直接原因とも言えず、大手・準大手のグループがそれ以下の規模の業者を駆逐していったのだろうと思いますね。


しかし、これ以降闇金被害が社会的に取り上げられ、警察の取り締まりも強化され、03年の取立て規制などの強化(貸金業規正法改正等)された結果、違法業者の登録は行いにくくなったので、かつての減少トレンドに戻っただけなのではないかと思えます。


貸金業と隣接市場とも言える、質屋ですけれども、これも時代と伴に減少傾向なのであり、上限金利は日賦業者と同様に特例的に認められてきた109.5%で変わっていなかったのですが、90年頃の約1600社から01年には約400社まで約4分の1にまで減少を続けてきたのです。質屋は金利引下げには関係ないので、貸金業の方へと需要がシフトしていったためであろうと思います。


日賦業者は89年に約400社だったのが、96年には約1260社へと大幅に増加しました。これも109.5%の特例金利があったので、闇金などがこれに目を付けて、日々取り立てを行うことが可能なことも悪用されたためなのだろうと思います。


それから、これも前から書いていますが(貸金業の上限金利問題~その12)、民間金融機関の個人向け貸出は大幅に減少してきたことは、貸金業の貸出競争を招いたとも思えます。銀行・信金などの個人向け融資(目的別ローン、カードローンなど)は90年には約21兆円程度あり、このうちカードローンが約13.7兆円あったのが、03年には約4.4兆円まで減少したのですね。つまり約9.3兆円の信用供与が失われたということです。それと期を同じくして、貸金業の信用供与額は増加の一途を辿りました。銀行の不良債権問題とか、厳しい銀行検査とか、そういうことも関係しているかもしれませんが、要するに、民間金融機関は大幅に貸金市場から撤退していき、逆に貸金業者が同時期に約3兆円から約11兆円まで残高を増やしてきたのです。


闇金被害の顕著な増加や自己破産の増加は、これらの影響を受けて大体98年頃から増加してきたのですよ。特に、98年以降は国民所得の減少というのが明らかとなってきていたので、そうした時期とも一致しているのです。00年に上限金利を引き下げた結果、闇金被害が増えたとも、破産が増えたとも言えないのではないかと思いますね。そういう要因ばかりではないと思います。


経済学理論を信じている人々が、なぜ実際の数字で理論の正しさを証明しないのか、不思議ですね。「理論的にも実証的にも明らか」などと豪語できるのは何故なのか、その気持ちを知りたいですよね。「理屈はもっともらしく」、でも現実と全くかけ離れているなら、到底信用できるような理屈じゃありませんね。しかも、最後の決め台詞が一緒なのも笑えます。「教科書嫁」ですから(笑)。