いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

消費者金融市場の貸出金利は「リスクを正確に反映する」とは言えない・2

2006年09月05日 15時11分08秒 | 社会全般
前の記事からの続きです。lydiaさんの質問に回答してみたいと思います。


>あたかも借り手が合理的に行動しないことが事実であるかのように書いてありますが,それをサポートする証拠はあるのですか?

「合理的ではない」と完全否定はどんな場合でも困難でしょうが、そう推定する根拠はあります。借り手の調査ですけれども、これによれば金利によって「貸し手」を選択しているとは思われませんね。

多重債務問題の現状と対応に関する調査研究

この中では金利で選ぶ割合が5%未満に過ぎないのですよ。


>1.銀行のリスク評価のばらつきは小さい
2.銀行間で十分競争が働いているため,(調達金利+リスク評価)以外の超過利潤は生じない
という2点を仮定したことによるものですね.確認していただきたいのですが,上の2つのうちどちらか1つでも成立しないならば,まさくにさんの言うような結論は成立しません.


銀行の事業資金融資の信用リスクや審査水準、競争市場かどうかを肯定又は否定してみたところで、消費者金融市場の問題が明らかになるわけではないと思います。銀行の例は、理解する上で参考になるかと思って書いてみたのですが、lydiaさんが経済学を十分熟知しているならば、このような説明は不要でしたね。銀行の事業向け融資は、上限金利もないですし、市場は別のものだと思っています。「銀行の競争が『十分』働いている」というのは、どの水準を言っているのか判りませんが、lydiaさんの主張するように、「低い金利のところから借りればいいだけ」という理屈を銀行に適用しないのは何故なのか不思議ですね。


lydiaさんの指摘のように、仮に銀行融資が「十分な競争市場でない」として、「金利がリスクを正確に反映する」とは「言えなくなる」だけであって、銀行の金利は競争が十分な場合に比べて「高く設定されている」と言えるだけですね。銀行の融資はもっと金利を下げられるはずだ、ということでしょう。銀行の貸出金利=短期プライムレート+上乗せ部分、という形で表せば、短期プライムレートはその時点での定数ですので、上乗せ部分は競争が十分な場合よりも「見かけ上高く設定されている」=リスクを過大評価している、ということですね。本当のリスク評価部分はもっと小さいはずで、そうであるなら「貸出金利はリスクを正確には反映していない」ということ結論付けることになると思いますが。


参考までに、都市銀行はどうか知らないですけれども、地方銀行や信金等の金融機関においては、地域間格差は存在するのではないか、と言われています。これは金融機関の不良債権比率が高い場合に、貸出金利が高めとなっていることが指摘されており、こうしたbank effectは皆無とは言えません。同一の企業が融資を受ける場合であっても、所在地域によって「高い金利」を要求されてしまうことになります。このような場合の説明要因としては、「競争環境が十分ではない」ということは有り得ますが、必ずしもそういう要因ばかりではなく、他の供給側要因の方が説明力のあるものもありますので。そのような場合においても、借入金利が10%も異なる、などということはなく、ある範囲での金利分布になるでしょうね。


>価格X=費用A+利益B

念の為申し添えますが、この「費用A」というのは、あくまで私の知る「費用」であって、現実のお金で表現されるものです。経済学的な用語として考えておられたのなら、違います。専門用語には不慣れなので、日常生活の延長上で使ったのです。従いまして、機会費用は含まれるものとなっていませんし、通常の「費用」という意味で書きました。それ以下の説明で用いたコスト部分というのも、そういう意味でしたけれども。


>価格は(限界)費用Aで決定されます

と、ここで気付いたのですね。ひょっとして機会費用のことが、私の書いたことからは抜けていたな、と。

金融庁 貸金業~懇談会資料

(こちらの資料では、規模によって費用構造が異なっています)

もしも、消費者金融市場の全ての業者について、コストが全部同じである、ということになれば、実際の資料から得られる数字(普通の会計上の数字ですよね)以外の、「機会費用」を推計することになりますが、それは果たして可能なのでしょうか?「貸出金利=コストm+リスク評価部分r 」と表せるとして、全ての業者において、コスト部分が同じということですよね?それは会計上の費用の差を埋めるだけの「機会費用」が全てに存在していることになるかと思います(もし間違いならゴメンナサイ)。実際に、それほどの大きな機会費用の差が存在するとは思えないのですけれども。もしも、これが示せるものがあれば、お伺いしたいと思います。単なる個人的な意見ですが、銀行カードローンでも、オリックスのローンでも、クレジットカードキャッシングでも、或いは貸金(アイフルとか・・・)でも、機会費用が大きく異なるとは感じないですね。金利差で言えば、20%くらいですけどね。
貸金業だけで見ても、大手と準大手やそれ以下の費用構造は異なっているので、その分だけ「機会費用に差がある」ということですよね。それか、消費者金融市場は細かく市場が分断されており、借り手は隣の市場には入らない(入れない?)ということでしょうか?


>コスト高さは金利の高さに反映され,金利が高い業者は市場から退場しますから


消費者金融市場において、競争が十分成立しているかどうかは判断が難しいのですが、「金利の高い業者」が市場から撤退しているとは思えず、先に示したように借り手側が「金利」を正しく認識せず借入を行っていれば、「非効率」な業者が存在しても不思議ではありませんね。年収200万円の20代男性が、初回借入を行う場合、銀行カードローン・ノンバンク・20%以下のクレジットカードキャッシング等を全て断られるのか、というと、必ずしもそうではないと思えますが(確認したことはないのですけれども)。貸金以外の業者から完全に排除されているというのなら、貸金市場は「ハイリスクな顧客のみ」を相手にしているのであり、そこの顧客は全員がそれよりも低金利の業者からの借入は「不可能」ということになると思いますが、そうとは思えないですね。貸金業者の中でも、初回貸出金利が全ての業者で同じなどということは確認できないですね。社内下限金利が、他社の社内上限金利を上回っている業者は普通に存在していますので。


文献では大手貸金が独占的競争市場の可能性が指摘されていますが、部分的なものですから一概には言えないでしょうけれどね。

消費者金融サービス市場の競争度

それから、昨日の記事の後、別なコメントを頂いていたのですが、ちょっと見落としていました。でも、こちらの議論が進んできたので、このままの進行とします。前のコメントに一部答えていないところがありますが、御了承下さい。