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貸出金利の条件について

2006年09月14日 21時49分20秒 | 社会全般
消費者金融市場の貸出金利について考えてみたい。

市場の競争が十分であると仮定する。


貸出業者のコストは一定、ある期における収入と損失を考える。

貸出量 M
コスト率 C(その他コスト=M×C)
リスク評価相当部分 r
貸倒率 R
貸出金利 (C+r)

金利収入:M×(C+r)×(1-R) ・・・①
経費=貸倒損失+その他コスト:M×R+M×C ・・・②

例えば、1万円を100人に貸し出し、貸出金利25%、破綻率10%とすると、
金利収入=100×0.25×0.9=22.5万円
貸倒損失=100×0.1=10万円
ということです。

貸し出す業者の選択としては、収入が経費を上回れば貸し出すことになるので、次が成り立つということになります。

①≧②

つまり

(C+r)×(1-R)≧R+C ・・・③が成り立ちます。 これをr について整理すると、

r ≧R(1+C)/(1-R) ・・・④

となります。コスト率Cが10%、貸倒率Rが7%である時、r≧0.0828 となります。これはどういうことかと言えば、貸出金利(C+r)は約18%以上であれば収入が損失を上回るということになります。


上限金利規制では、③式において(C+r)の最大値を規定するので、これをkとおくと、③式は次のように表せます。

k≧(R+C)/(1-R) ・・・⑤

変形して、

R≦-C/(1+k)+k/(1+k) ・・・⑥

この時、Cやkはゼロより大きい値を取るので、kの値を小さくする(上限金利を引き下げる)ことは、結果的にRを小さくする効果を持つ(貸倒率を下げる)。更にCが大きくなるとRの最大値は小さくなり、コストの多い場合には許容されうる貸倒率Rが小さな値しか取る事ができなくなる。

非効率業者である場合には、kを大きくしてしまうことで、RやCを余分に増やすことが可能になってしまう。


k=0.2の時(上限金利が20%)、⑥式は

R≦-5C/6+1/6 ・・・⑦

となる。仮にRが8%であるとすると、R=0.08であるから、⑦式におけるCの範囲は、C≦0.104である。つまりコスト率は最大でも10.4%である。k=0.2で成立する条件ということである。これを超えるコスト率(貸倒率は除かれる)の業者は非効率である可能性があるのではないか。


競争が十分であれば、r は常に最小値をとるはずであり、業者間でコスト率Cの違いが存在しない時にはCは一定であるので、④式においてr はRに依存する。貸出金利が23%、Rが8%である時、④式から

0.23-C=0.087(1+C) より
C=0.1316

これは調達金利や営業経費等の合計(勿論、貸倒損失は除かれる)が13.16%ということであり、これよりも現実の経費が少ない場合には貸出金利が高すぎると考えられる。


今の時点で存在する消費者金融市場の業者のうち、10%以下や15%以下の貸出金利が選択されている業者は複数存在する。貸金業界の10~11兆円以外にも「消費者金融の信用供与」は存在しており、信用供与額でいうと約32兆円程度ある。つまり合計では、貸金業は3分の1程度のシェアということだ。32兆円のうち、貸倒が1兆円だと随分と話が変わってくる。コスト計算も調達金利や営業費用に開きがあるので、一緒ということにはならないだろう。分断市場であるとすれば、市場を越えては借り入れられない、ということだ。それを言うのは難しいと思うけど。30分の1の貸倒率ならばRは3.33%に過ぎず、その場合r の最小値は0.0345×(1+C)となり、Cのとる値が0.1ならばr は約3.8%、貸出金利で13.8%に過ぎない。Cが0.15であっても貸出金利では約19%だ。


つまり、貸金業界の貸出金利の高さは、a)不十分な競争(最小のrとなっていない)、b)高コストによる非効率(Cが高すぎる業者が存在し、業者間で一致が認められない)、c)高い貸倒率(Rの高すぎる業者が多く、消費者金融市場全体とは傾向が異なっている)、といったことが考えられる。