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上限金利問題の論点整理(追加あり)

2006年09月09日 19時01分13秒 | 社会全般
記事へのコメントで大変厳しいご指摘を受けました。
以下にそれを引用いたします。


まさくにさんは結局のところ、何を主張されているのでしょうか?これといった主張はなく、官僚や経済学者を独自の理論-俗に言うデンパやトンデモのこと-で批判しているだけでしょうか?

貸金の上限金利を下げることに賛成していらっしゃるみたいですが、その理由はあるのでしょうか?
多重債務者を減らしたり、借金苦による自殺者を減らしたりできるとお考えなのでしょうか?
いまいち見えてこないんですよねぇ。

もっと明瞭簡潔に意見を展開されてはいかがでしょうか?




ご指摘はごもっともですね。スミマセン。
なので、ちょっと整理してみようと思いますね。

1)「経済学理論」派

主な論拠は早稲田大学消費者金融サービス研究所のペーパー

①貸出金利は需給で決まり、引下げで超過需要が発生する
②市場は十分競争的
③貸出金利はリスクを正確に反映する
④闇金が大量発生する
⑤750~1000万人が借りられなくなる
⑥借り手は合理的に低金利を選択している


2)私の考え

①上限は引下げられるべき
②市場は十分な競争環境ではない
③情報の非対称性がある
④逆選択の可能性
⑤上限引下げと闇金発生に因果関係は見出せない
⑥貸出金利はリスクを正確に反映しているわけではない
⑦超過需要発生とそれに伴うGDP減少の推計は過大
⑧借り手は必ずしも合理的に低金利を選択していない
⑨信用情報の業者ごとの違いによって、参入障壁となっている


1)に対する反論として、いくつか質問をしましたが、誰も答えていないのが今までの状況です。


次の事項を経済学的に説明せよ。

①坂野論文を支持するなら均衡金利水準は27%以上が前提であり、その推定が可能なはずだからそれを示せ。
②均衡水準がそれ以下なら、GDP減少額は過大な推計に過ぎないのではないか。過去の引下げ時に貸金は必ずしも信用供与額が減ってない。
③借り手と貸し手の情報格差があるのに、消費者金融市場は公正取引が行われる市場なのか。
④十分競争的で「貸出金利がリスクを正確に反映する」ことが言えるなら、全ての業者でコストが一致しているはずである。見かけ上は、そのようになっていないのではないか(業者Mのコストmと業者Nのコストnが一致するか、mやnがリスクrに比べ十分小さいことを示せ)。


ここまでで、「消費者金融市場は十分競争的である」とは到底思えない、ということです。また、上限引下げによって、均衡水準を下回るということが示せないのなら、今のところ、引下げは中立的(どちらとも判らない)としか言えない。貸出金利の水準とリスクは必ずしも一致していないので、堂下論文のような「リスク」と「金利」分布を置換するのは不適当。リスク差よりも、コスト差が反映されている可能性があるのではないか、と。


本当に経済学理論が正しいのなら、説明して下さい、と。
今まで、正しいと言っていた人々は、容易に答えが出せるから、それを受け入れているのだし、それを論拠として支持しているのですから、説明可能なはずです。


⑤闇金発生は経済環境や貸金の借り手増加によるもので、上限引下げに原因があるとは思わない。また01年以前の引下げと闇金発生の関係について示せ。

⑥借り手が合理的に低金利業者を選定していることを示せ。アンケート調査では必ずしも金利で選択していないことが見られる。

⑦借り手の信用リスクによって、クレジットカードキャッシング、ノンバンク、銀行カードローン、銀行系貸金などの、貸金業よりも低い金利帯商品からは排除されており、最初の借入時点で貸金だけからしか借りられない人はどの程度存在しているか。


この辺はあくまで推測でしょうね。理論がどうの、ということではないと思いますけど、どうしてそう考えるか知りたいところですね。


寄り道:
これも前から書いてるが、「イギリスには上限金利はない」と、鬼の首を取ったように言う連中がいるのですが、それは「無制限」を意味するものではないんですよ。イギリスの場合、暴利的信用取引であると裁判所が認めた場合には、”裁判所が契約を再締結させる権限”が設けられてるのですよ。つまり、「暴利な金利」「青天井金利」なんてものは、確実に破棄される、という事前情報が与えられており、それによってある程度の歯止めがかけられるのですよ。日本でもそうするなら、金利規制は外してもいいかもね。

でも、裁判所に持ち込まれたら、上限いっぱいで通してくれるかな?裁判所判断というのは、既に判決もあるんだし、「利息制限法内で十分」ということであって、それでも借り手の状況によっては「暴利的」と認定されるかもしれず、そうなればもっと引き下げられるかもしれんね。私の個人的な気持ちとしては、そっちの方がはるかにいいけど(笑)。判決で裁判所が「利息制限法にしとけ」と言ってるのに、それでもなおかつ「いうことをきかないヤツラ」がいるんだからね。いっそイギリスと同じ方式にしてもらった方がいいんじゃないか?


戻ったので、追加です。

経済学理論派によく見られる理由は他にもありましたね。

「1000万人が借入不能になる!!」

という説を支持していたのは、bewaad氏や池田氏に共通です。

では、何故貸せなくなるのでしょうか?
これは大体が2社以上から借入している債務者ということになりますよね。坂野論文に基づいて、管理債権(破産)となるのは、「金利」や「借入額」には有意差がなく「ライフイベント」が原因なんだ、と主張していたのですが、なぜ「借入金利の高い者」から順に市場から排除されるのでしょう?


「破産はライフイベントが原因なんだよ!」ということで、借入金利の高い人たちと低い人たちで「ライフイベント」の発生率に違いがあるということはないように思えますよね?それとも、金利の高い人はライフイベント発生率が高いというデータでもあるのでしょうか?


ある貸金業者が全員20万円融資している、次の顧客を有していると仮定しましょう。

・2社から借入している顧客100人、平均債務50万円、貸出金利20%
・3社から借入している顧客100人、平均債務90万円、貸出金利25%


どちらも同じ融資額20万円で、前者が20%、後者が25%ですよね。この場合、前者と後者のライフイベント発生率が同じ確率である時、予想される貸倒になる人数は同じですし、債務額も同額です。であれば、金利の高い顧客の方が利益は大きいですよね、確実に。なのに、どうして借入金利の高い層、つまり債務残高の多い顧客を「先に切らねばならない」のでしょうか?

考えられる理由は「貸出金利の高い顧客層では、ライフイベントの発生確率が高い」ということくらいしかないのでは。金利の高さも、債務の多さも「無関係だ」というのがライフイベント派の主張ですからね。


もしも同じ確率でライフイベントが発生しても、債務残高の多い(=金利の高い)層が「返済困難に陥りやすい」というのであれば、債務残高や金利が説明力を持つ要因ということになってしまうのではありませんか?でも、経済学理論(ライフイベント原因)派は、金利水準も債務残高も関係ない、というのですからね。きっと整合的な説明があるのでしょう。


企業はわざわざ「利益の多い」顧客から順に貸すのを止めると。不思議ですよね。しかも20%引下げになってしまえば、借入先が1社、多くて2社程度しか認めないというのも、極めて不可解ですね。1000万人が市場から締め出される、と言うからには、それなりの理由があるはずですよね?経済学理論で説明可能な。


⑧貸出金利の高い顧客層では、低い顧客層に比べてライフイベント発生確率が高いことを示せ。
⑨利益の大きい(貸出金利の高い)顧客1000万?人が優先的に市場から排除される理由を示せ。


経済学理論派は、容易に説明できるでしょう。

私が直接聞くことはできませんので、できれば他の経済学徒から是非聞いてみてもらえませんか?経済学理論に従えば、疑う余地のない当然のことのようですので。

ご指摘にもありましたように、所詮ド素人の電波かトンデモ批判程度ですから。