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傍論、傍論って暴論ゆうな!

2008年04月18日 16時54分34秒 | 法関係
名古屋高裁判決に対して、「傍論で違憲っていうな」だの、「傍論に過ぎないからいいんだ」だの、言いたい放題な方々がたくさんいるわけですが、まず判決文を学ぶことをお勧めします。法の精神を学ぶべきは、政治家や御用学者や報道関係者であると思います。それと、辞め際の「最後っ屁」みたいに言う人がいるかもしれませんが、それも全然違うと思います。裁判官は法に則り、忠実に判断されたものと思います。

「蛇足判決こそ違憲」 イラク派遣 最高裁判断封じる(産経新聞) - Yahooニュース

(一部引用)

 福岡地裁判決の問題点を指摘してきた弁護士の稲田朋美衆院議員も「最終的な憲法判断は最高裁にあるというのは憲法81条からも明らか。非常に高度な政治的判断について、上告を封じ、最高裁判断を封じることは憲法に違反している。まさに『蛇足』の判決だ」と批判する。

 控訴審で国は「控訴人(原告)の法的利益を侵害していない」などと主張しただけで、憲法判断には言及もしていない。一方、原告側の証人申請だけが積極的に認められ、法廷は違憲主張の独壇場となった。

 白鴎大法科大学院の土本武司院長も「裁判所は訴えたことについてのみ判断する義務がある。争点になっている訴え以外のことについて判断を下すことは、やってはいけないことだ」と批判している。

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傍論も何も、「主文」だけしかなかったら、中身がまるで判らんじゃないの(笑)。被告は原告にいくらいくら払え、とかだけ聞いて、何が判るというんですか?大体、こういう連中は都合の悪い時になると「蛇足の判決」だのいうが、この前の大江氏の裁判なんかで原告側請求が認められなかった時でも、そんな主張をしていたのか?
「名誉毀損は認められなかったが、判決では~~は認定されなかった」とか自慢気に言ってるじゃないの。そういう時にも「蛇足」だの「傍論」だの言えっての(笑)。こういう都合のよい使い分けは、報道しか知らない一般国民には殆ど判らないからね。都合の悪い時には「傍論にすぎない」、気に入った部分だけは「裁判には負けたが、~が認められた(or事実認定されなかった)」と切り取ってるだけじゃないか。判決を冒涜するにも程がある。

原告(控訴)側が主張しているのであれば、被告側が受けて立って反論するしかないではないか。論破しようと思わなかったのであれば、原告側が自らの主張を立証するのを黙って見てるしかなかろうて(笑)。違憲主張の独壇場、って、産経新聞ご用達の小林節慶大教授(日本の憲法学者の真意を問う)みたいに、憲法違反だ違憲立法だ、と一方的に違憲主張を言い立てるのはごく普通に見られる現象なんではありませんかね?(爆)

裁判中において、原告側の憲法違反だという主張は、さほど珍しくもあるまいに(弁護士の決め台詞は「憲法違反」?)。しかも小林節教授のご高説によれば、判決の効力自体が「判決以前には不遡及とすべき」とまで仰るわけですから、今回の国側勝訴であっても「判決後から」しか効果がないんだろ、って話になるわな(笑)。そんな裁判がどこにあるかっての。話が逸れた。

産経記事中に登場する、元最高検検事だったらしい土本氏にしても、保守系で重宝されているみたいだが、こんなことを言う人が元最高検ってのは、日本の法学・法曹界というものがどういうものなのかを表しているであろう。魂を売り渡したというのは、こういうことなのかもしれないな。争点以外には判断を下すな、というごく普通の原則を言っているだけなのだが、それはあたかも本件裁判において「主張点ではなかった」かのような誤解を与え、まるで裁判所が勝手に独自の判断を持ち出したかのように産経記事が構成されているのだ。法曹の風上にも置けない。私の中では、またしても検察の信頼は地に落ちた。最高検レベルでさえ、これなんだよ。原告側主張に違憲だという主張があったからこそ、判決文で述べたに決まっておろう。主張してない論点について勝手に触れたわけではないだろ。
法とは何だ?
法を守るべき立場の人間が言う言葉か?

憲法の番人であり、最後の砦が裁判所なんだよ。それを「傍論」だの「蛇足」だのと中傷し、挙句の果てには元最高検の人間をして「やってはいけないこと」だと?それが元検事のいうことか?ふざけるんじゃない。ドイツの行政裁判所が違憲判決を出した(米軍基地問題についての補足)ことは書いたが、日本人もこういうドイツやフランスの気質を学んだ方がいいんじゃないかと思う。オレは、魂を売り渡したような法律家の言うことなど絶対に信じない。詭弁士に過ぎないような人間が、法律家だか法曹だか判らんが、中に混ざっているということは銘記しておいた方がいい。


こういう連中に比べれば、名古屋高裁は真摯に法に基づき判断したものと思う。裁判官の言ってことは、よく判るからね。

イラク派遣訴訟控訴審判決要旨

判決要旨を読むと、これまでの憲法判断や解釈に沿って判断されている。検討の道筋としては極めてオーソドックスなものであり、特に内閣法制局を中心とした法解釈論に立脚したものであると考えられる。これら論点については、既にブログに書いてきたものとほぼ同じであるので、割愛する。

自衛隊のインド洋派遣に関する考察

続・自衛隊のインド洋派遣に関する考察


傍論だ傍論だ、と騒ぎ立てる(×××の悪い)連中の為に書いておくが、裁判の原告側請求は、例えば損害賠償請求とかなのだから、主文に「~は違憲である」なんて主文が登場することなんざ永遠にないだろう。あんた方は一体何を言ってるんですか?法曹の人間ですら、こうした悪意の主張をするというのはどういうことですか?

また例で申し訳ないが、書いてみます。

今、「○○建設法」という法律が作られ、甲という地域において○○が建設開始となったとする。建設主体は国で、甲地域のAさん、Bさんが○○建設反対を主張したが聞き入れられず、国を訴えることにした。○○の建設について差止請求と、建設に伴って蒙った損害の賠償請求であるとする。

・原告=A、B
・被告=国
・原告側主張:
①「○○建設法」は憲法違反
②違憲なのだから工事を止めろ
③工事が違法行為につき賠償せよ
・被告側主張:
④原告の権利を侵害しない


◎原告勝訴でも主文に「違憲である」なんてことは謳われない

原告側主張の①が認められ、傍論中で「○○建設法」は憲法に違反する、と認定されたとしても、主文にはそんなことは書かれない。違憲立法なのだから、違法な法律を根拠として建設工事が行われることは認められず、必然的に工事は差し止められるであろう。同時に、憲法違反による損害賠償責任は国が負うものとなるであろう。従って、原告側勝訴であろうと、原告側の請求を認め○○建設を中止せよ、ということと、(損害賠償として)いくらいくらを払え、ということしか主文には出てこないであろう。
法曹(元検事だの弁護士だの)であるなら、そういうことを十分判った上で「傍論だ」とか言ってるので、もっとタチが悪いんですよ。被告側である国が原告側主張の①に反論できるなら、相手側論点を潰せばいいものを、④だけしか主張しないのは被告側の国がバカだからだ。ただ単に①への有効な反論ができなかっただけに過ぎない。もしも議論の正当性が国にあるなら、相手側立証に穴を見つけられるはずだし、その穴を確実に指摘しておけばいいだけだ。原告側論証は崩されるのだから。

◎請求が適法でない、という理由は珍しくない

上記例で原告A、Bのうち、Aは建設工事現場の「半径△m以内」の住居があって、建設工事に伴う具体的な損害を蒙っていることが明らかであるとしても、Bはずっと遠くに居住しており建設工事からは実害を受けない、ということもあるでありましょう。そうなると、Aについて損害賠償すべし、となるけれども、Bには賠償されないことはあります。「○○建設法」が違憲立法であり、工事そのものも違法であるとしても、Bには請求権がない、という判断は普通に有り得ます。そういう場合には、Bの差し止めや賠償請求権(行使)は認められず、不適法である、と判示されてしまう、ということ。そもそも、そういう権利を有する人でなければこれら請求権をもたず、同時に実質的損害を受けてないので違憲かどうかを裁判所に判断してもらうことを請求できるわけではない、ということです。たとえそういう願望を訴え出ても、「あなたにはそういう権利はありません、不適切です」と言われる、ということ。はなから原告として不適格、とか言われる事もあるかもしれません。
仮に、「半径△m以内に居住する者」が請求権があるとして、原告全員がその条件から外れている場合には、「○○建設法は違憲」、だけどあなたもあなたも請求権はなく差し止めや賠償は認められません、という判決になってしまうことだって有り得ます。


名古屋高裁判決では、「○○の建設が違憲かどうか」というのを検討したのが「イラク派遣が違憲かどうか」ということである。原告側請求権の妥当性を見れば、実際の損害を蒙っていない(例ではB)人が訴訟を提起して「違憲ですか、どうですか」と確認する行為(訴訟)は適法でない、という判断が下されたものと思います。
また、最高裁判例では具体的事件を離れて違憲か否かだけを形式的に判断することはできない、とされているのであるから、抽象的違憲確認請求権のようなものはないよ、と言われたのは当然ということになりましょう。

いずれにせよ、傍論で言うな、と言ってる連中というのは、まともな判決文を知らないかロクでもない主張をしている、と考えた方が宜しいでありましょう。

貸金の過払金(不当利得)返還請求訴訟にしても、主文だけあればいいというなら、「業者甲は乙に100万円払え」が判るだけで、何が違法であったか全くの未知のままでよい、ってことなんだな?(笑)
傍論なんていらねえぜ、ってか?

いい加減にしろよ。