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オール人力狙撃システム試作機

Resounding Defeat in The City

2008年10月29日 21時09分07秒 | 経済関連
今、日本経済は「cliff」の端っこに立たされている。日本の政治家がこの危機にうまく対処できなければ、このまま本当に崖の下に足を滑らせてしまうかもしれない。これまでの経験則では、うまく対処できない政治家や日銀や財務省だったということは言えるだろう。国民はこれら責任者たちの失敗の後始末をさせられ続けてきた。それが言うなれば「Lost Japanese Economy」という長き低迷期だった。今度も同じく、彼らがヘマをやり、経済対策が失敗に終わる可能性はあるだろう。

だが、日本経済の飛翔力はこれまでの「超低空飛行」に馴れており、多くの国民は「あの時よりはまだマシだ」と思っているかもしれない。失速して墜落しそうだし、息切れしているのは確かだが、二度と飛べなくなるほどの酷い状態ではないからだ。止まり木で少し羽を休めて、再び飛び立てばいいだけなのだから。

もっと遠くに目を向けると、日本よりも不幸な人々は大勢いる。それを思えば、日本は「まだマシだ」と考えるに違いない。日本の受けたダメージは、致命傷にはならない。勿論痛みはあったが、死ぬような傷ではない。しかし、海の向こうでは瀕死の状態に陥った国々が、IMF―駆け込み寺といった感じの「最後の高利貸し」に似てなくもない―の門の前に列を作って並んでいるらしい。各国首脳はこの高利貸しが一体何ドルくらい貸せる金を持っているのか、自分の国にはどれくらい貸してくれるのか、大層気にしているようだ。そのドアを叩かずに済んだだけでも、日本は幸福だといえるだろう。


ところで、もうすぐ公開となるジョン・ウー監督の「Red Cliff」は、三国志を題材にした映画だ。三国志は中国の古い歴史ドラマで、日本でも人気が高い。小説(私も例に漏れず、吉川版を高校生の時に読んだのだった)や、日本では定番のゲームやアニメなどで親しまれている。古くは―80年代だった、NHKで1年以上に渡り人形劇として放映していたのだった。それくらい、日本には馴染みのあるドラマなのである。「Red Cliff」は日本で好成績を収める素地が揃っているといえるかもしれない。

この「Red Cliff」とは「赤壁の戦い」のことで、曹操軍と孫権・劉備連合軍とが戦った。何でも大きな中国らしく、主に巨大な川―まるで海と見まごうばかりの長江―を舞台にした水上戦であった。詳しくは映画を鑑賞してもらった方がよいが、重要な部分だけをこっそり書いておこう。

簡単に言うと、曹操軍は大敗を喫する。これは日本においては有名な話だ。赤壁の大敗として知られている。私の拙い英語で言うとすれば、「resounding defeat in Chibi」ということかな。曹操軍は大軍を率いていて、孫権・劉備軍に比べて兵力では数倍も上回っていたが、ある計略によって敗北するのである。その計略とは、これも有名なのだが―「苦肉の策」の方ではなく―、「連環の計」と呼ばれるものだった。平たく表現すると、「グローバル化」みたいなものだ。大兵力の船を「連環」したことによって、火計に弱くなってしまったのだ。炎は次々に燃え移り、大損害を被ってしまったのである。連環された船が燃えてしまうと、損害を受けていない隣の船もが共に燃えてしまう、ということだ。そう、これは今の世界経済の危機に極めて似た状況なのである。まるで、世界中の経済が連環の船と同じで、どこかの船が炎上してしまえば、その炎は「飛び火」していってしまう、ということ。


今年2月には、「Japain」と揶揄され、お可哀想に…と辛辣な皮肉と同情を英国雑誌から頂戴した(ご都合主義の人々(笑))が、まだあの時には欧州や英国はゆとりがあったから、自分の国の心配よりも日本に余計なお節介を焼いてくれたに違いない。それくらい余裕があり暇だった、ということだ。日本の政治家―当時はまだ「Fukuda」だった(笑)―が、「大盤振る舞い」をするような旧式のリーダーであり、経済改革・構造改革に着手しないことを非難していたが、今となっては、そうした直訴は国外からはすっかり聞こえなくなってしまった。

大英帝国はこの第3Qに16年ぶりのマイナス成長に転落し、ブラウン首相とダーリング財務相とが揃って「政府が借入を増やすことが適切だ」との考えを持つと表明しているようだ、とロイターは伝えていた。さてさて、これはどうしたことか、「大盤振る舞い」と日本を批判する英国では、政府が借金を増やそうとするのが当然としているらしい。欧州では1、2を争うほどに対外純債務残高の大きい英国が、今度は政府に別な借金をさせようということのようだ。加えて、ブラウン首相はIMF出資金として中国や産油国の外貨準備金を当てにしているようだ、と中国の新聞が伝えた。これには更にオマケがある。英国では、政府の借入制限する財政ルールがあるらしいのだが、これを撤廃する腹積りのようだ、という観測が出ているそうだ。私が何度か指摘してきたが、彼らは自分の都合が悪くなれば「ルールを変えよう」と言い出すのが欧米得意の戦法らしい。空売り規制や時価評価会計の変更に続いて、これもその一例と言えよう。

市場は全世界で連環されている。自由資本主義の良い部分もある。だが、「赤壁の大敗」の如く、その連環には危険も伴うものなのだ。そのリスクをどこかでコントロールするべく、安全機構のようなものが入ってなければならないだろう。現在の金融危機のフォーカスは、少し前までのUSから、UKやEUに移ってきている(新興国への資金投入割合は英国や欧州の金融機関が多いからだ)。
偶然にも、米英ともに、連環ならぬ「United」だ。これから、真の「Red Cliff」が姿を現すだろう。Chibiではなく、The Cityで。
クラスター爆弾による空爆の如く、金融ゲームによって生み出された無数の子爆弾は広範囲に撒布され被害をもたらした。ここまで、米英の評価損は約2兆6千億ドルとBOEが報告したが、「連環の計」によって燎原は更に広がるだろう。

はるか遠くの、海に囲まれた極東の辺鄙な島国である日本にさえも、火の粉が飛んできたくらいだから、日本とて「降りかかる火の粉」には全力で対処せざるを得ないだろう。残念ながら、日本も世界経済と深く「連環」されているからだ。世界が焼き尽くされるのを黙って見ているわけには参りますまい。