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女王陛下の疑問

2008年11月18日 20時46分55秒 | 経済関連
イギリスのマスメディアというのは、日本人記者にはないウィットとユーモアセンスを持っている。正直、羨ましい。何歩も先を行かれている感じがする。日本というのは、政治的成熟が全然足りない。討論や議論という面においても、未だ足元にも及ばないだろう。

女王陛下、それは良いご質問です なぜ誰も金融危機に気づかなかったのか――フィナンシャル・タイムズフィナンシャル・タイムズ - goo ニュース


それにしても、この記事は秀逸だ。

今回の金融危機の間抜けぶりを一言で表せばこうなる、というのが、まさに「女王陛下のご質問」だ。

  ※※ そんなに「おおごと」なのに、「なぜ誰も金融危機に気づかなかったのか?」

いやはや、人間の考えるようなことというのは、得てしてこんな有様でして。
これも一つの勉強というやつです。
LSEの教授をもってしても、愚か者ばかりであった理由を発見することは難しいかもしれない。


以下に記事の一部引用。

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またデリバティブの実際の価値がどれくらいなのかも、誰もよく分かっていなかったのです。イラク戦争の比喩をさらに使い続けますなら、賢明なエコノミストたちは(ラムズフェルド前米国防長官が言うところの)「知らないと知られている、知らないもの(known unknown)」としてデリバティブを扱いました。賢明なエコノミストたちは、自分たちがデリバティブについて実はよく分かっていないということを、自覚していたのです。

しかし、分かっていなくてはならなかった政治家や規制当局者たちはどうやら、分かろうとしていなかったか、あるいは分かろうとする姿勢が不足していました。なので彼ら政治家や規制当局の担当者たちは今になって、デリバティブの問題は「そもそも存在すら知られていなかった、知らないもの(unknown unknown)」だったという、フリをしております。つまり、連中の言うことを信じてはなりません。

そんないい加減なことで、どうして政治家や規制当局者はやっていられたのか? ひとつには、いつも都合よく「心配ありません。大丈夫です」と言ってくれる御用学者ならぬ御用エコノミストが常に都合よくそばにいたからです。エコノミストたるもの本来は(社会科学の分野における)科学者であるべき存在です。なのにそうやって科学者たるべき者を、宮廷お抱えの魔術師のように扱いはじめると、危険なことになって参ります。つまり、彼らの言葉の中から自分に都合のいいことばかり選り好みして聞いているのは、危ないということです。

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どうです?
アランは中々ツボを心得ていらっしゃる。
「御用学者ならぬ御用エコノミストが都合よくそばにいる」
「科学者たるべき者を、宮廷のお抱え魔術師のように扱いはじめると、危険なことになる」
まさしくその通りなのですよ。
で、極めつけは「unknown unknown」。うまいこと言うってやつですな。


引用部以外にも、『人当たりのいい口達者な男』とか、『巨大な拳と剛腕を誇るあの男、つかみあいの内部闘争にかけては天賦の才能に恵まれた、あのむっつり不機嫌なスコットランド男』とか、読みながら思わず笑いで吹き出してしまう部分が盛りだくさんです。


歴史のある英国ならでは、ということでいえば、次の部分も素晴らしい。

『どこかで似たようなことをお聞きになった覚えが、陛下にもおありでは? ウィンザー城とか火事とか、そのようなことで?』

『それに歴史を振り返りましても、権力者が国民への責任を負わないまま巨額の借金を積み上げた挙げ句、最後には首を切られるという事例は過去に数多あります。』

『せめて今回のこれは、ピューリタン革命のような内戦などなくして、なんとか切り抜けたいものでございますね、陛下。』

記事を書いたアランは、本当に才能があるね。洒落てる。
思わず笑ってしまうように書かれているのですから。



ところで、日本人の私にはちょっとよく判らないが、多分、「東京モンには負けへんで」というライバル心むき出しの大阪人とか、「東京に”下る”予定」とかのような「東の方の方々はがさつな成り上がりのおヒトが多くて…」みたいにニッポンの都(中心地)を自認する京都の人といった違いに似てるのが、大英帝国なのかな、と。

で、英国に是非実現して欲しいことが一つだけあるのですよ。
それは、サッカー代表チームを、「UK統一チーム」のひとつだけにして試合に出てもらいたい、というもの。

イングランド代表、スコットランド代表、ウェールズ代表、みたいに分かれているのを、喧嘩しないで一つの代表チームにして出場して欲しいんです。もしやったら、内戦が勃発してしまいますか?(笑)万が一にも、負け試合だったりしようものなら、違う地域のサポーターからリンチに遭ってしまいますか?

そこまで仲が悪いとは思わないんですが、「スコットランド人とイングランド人を一緒になんかするな」みたいに現地の人たちは思っているのかなあ、と考えてしまうわけですよ。いつだったか、DVDで観た『ナルニア国物語』なんかも、スコットランド神話っぽい作りなのかな、と思ったんですよね。兄弟姉妹が東西南北を治める王につくのですが、一番偉いのが北の王だったから。

まあウェールズには「アーサー王」伝説があったりするから、スコットランド人としても黙ってられませんぜ、みたいに考えたとしても不思議ではないかも。ロビン・フッドの物語がイングランドかどうかは知りませんが、弓兵が特徴的と言えばやはりイングランド軍でありましょう。すると、スコットランドには英雄がいないということになってしまい、寂しいでしょう?負けたみたいで悔しいでしょう?
そういう「心のスキマ」を埋めるには、やはりヒーローが必要なんですよ。ファンタジー世界でなら誕生させられますからね。


そういうわけで、サッカーの統一チームをお願いしたいな、と(笑)。




大麻の解禁問題について(の続きです)

2008年11月18日 03時07分40秒 | 社会全般
遅くなりましたが、前の続きです。



いくつかの論点を考えてみる。


1)健康への影響

①精神疾患の問題

マリファナと精神障害との関係、英医学誌に掲載 国際ニュース AFPBB News

【7月29日 AFP】マリファナ(大麻)を吸引する人はそうでない人に比べて精神障害をわずらう割合が40%も高い。医学専門誌「ランセット(The Lancet)」が28日、このような調査結果を報じた。
 この調査結果は、マリファナ使用者の統合失調症や妄想、幻覚症状などの精神障害の発生率に関する35の調査に基づくもので、ヘビーユーザーの場合には非吸飲者の2倍の発症率に上るという。同調査結果は他にも、うつ病や不安感などの心理的障害の危険性も指摘しているが、マリファナとの直接的な関連性は不明確であるとしている。一方で、調査結果には交絡因子が含まれている可能性は否定しきれず、最大の問題は、マリファナが精神的な病を引き起こすのか、あるいはマリファナを吸う人々がすでにそのような傾向にあるのか、という点であるとしている。(c)AFP

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ランセットですから、信頼性はまずまずと思っていいでしょう。交絡因子の可能性は排除できないが、それでも「統合失調症」「妄想」「幻覚症状」などの精神障害のリスクは高まりそう、ということです。これまでにも、因果関係が証明できないとか、確たる証拠がない、ということは言われてきましたので、何か目新しい証拠が出たということは言えないとしても、危険性はあるかもしれないということが補強された、ということでしょう。

他には、ラットの実験でTHCの作用として「muricide」が報告されています。若年(学生)での常用者において、攻撃的行動が顕れることがオランダの疫学研究で報告されています。


②肺疾患や発ガンのリスク

長期使用者において、bullaの形成例が報告されています。また、肺ガンの発生リスクはタバコよりも危険であることが示唆されています。
バイキン博士のつぶやき マリファナは肺ガンの危険因子

他の資料など(あくまで例示です)
>Epidemiologic review of marijuana use and cancer risk.Alcohol. 2005 Apr;35(3):265-75. Review
>Marijuana smoking and head and neck cancer.J Clin Pharmacol. 2002 Nov;42(11 Suppl):103S-107S. Review

一般的には、通常使用の大麻程度では重大な障害をもたらさないとする可能性はあるかもしれませんが、長期使用例や他剤併用例などの要因によっては、発ガンリスクや免疫抑制(=易感染性)などが問題になってくる可能性はあるかもしれません。


③使用法や濃度の問題

米国内のマリファナ濃度急増、25年前の2倍に 国際ニュース AFPBB News

ONDCPによると、押収されたマリファナのうち調査のために抽出されたサンプルで、マリファナに含まれる向精神成分を示すTHCの平均値は9.6%。1983年にはわずか4%以下だった。ミシシッピ大学(University of Mississippi)のPotency Monitoring Project(効力監視プロジェクト)によると、最近数か月に測定されたマリファナで最もTHCの濃度が高かったものは37.2%と驚異的な数値だったという。

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近年THC濃度は高くなっている、ということかと思います。素材の要因だけではなく、他の常用薬や喫煙・飲酒習慣の有無によっては、新たな問題が顕在化する可能性はあるかもしれません。


④医薬品としての有用性

この可能性はあるかもしれません。現在は研究段階ということで、医師が正しく用いることで治療薬として期待できうる、ということは言えると思います。しかし、これはあくまで専門家である医師が処方するということであるので、一般人の自由な使用を認めるというものではないでしょう。これは制限のある他の薬剤と何ら変わりません。薬事法で規制を受けるか、大麻取締法かの違いだけのようにも思えます。


2)若年者の問題

上の横浜衛生研の資料にもありましたが、米国では10代の若者の使用経験は約半分と大変多いです(オランダでさえ18歳以下は禁止されている)。因みに、05年に米国で押収された大麻草は約24t以上でした(全世界では約7.2t)。

www.customs.go.jp/mizugiwa/mitsuyu/report2006/18haku04.pdf
世界における密輸動向等-28-

オランダや米国では若年者の常用者が見られることから、入手の容易さが問題となりそうです。日本においても摘発者の低年齢化が見られ、危惧されます。


3)国際的な犯罪

アフガンが世界最大のアヘン栽培地として問題とされてきたように(2000年時点で4000t以上)、世界生産の約9割近くを占めているとされています。ロシア、トルコなどに経由したり、オランダ、ベルギーを中継して西欧へ密輸されているようです。オランダは薬物規制が緩いということがあるせいなのか、世界各国への密輸基地となっているようです。日本への密輸もオランダやドイツなどから行われているようです。

要するに、「麻薬がテロの資金源になっている」とか非難している欧米諸国は、まず自国の薬物取締と摘発を徹底強化するとか、完全解禁する(笑)とか、薬物汚染の啓蒙などを行うべきでしょう。たとえば英国では、大麻使用経験者の割合はオランダよりも高く、不正に購入していることによって「テロへの資金供給源」となっているようなものです。

大麻生産地はインド、タイ、パキスタン、バングラディッシュ、カザフスタンなどのようです。テロと関係があるのかどうかは判りませんが、こちらはアフガンのように攻め込まれてはいないようです。

需要家の多くが欧州か北米であるので、そうした国々にこそ責任があるものと思います。日本も密輸国になっているでしょうが、今のところ緩い規制に傾いてはいないのではないかと思います。


4)規制をどうするか?

一応、国際条約があるので、原則的には今と同じ「規制」という方向性でよいと思います。
仮に、もっと自由化したり解禁したりした時、長期常用者などの問題が発生してくることになるのではないかと思います。サラ金で破産者とか多重債務者が増えて問題となったのと似たようなものです。人口の2%が使用者となるとして、200万人程度ということになるでしょうか。そのうち、統合失調症の人が1%増えるとなれば(残り99%は「問題などない」という解禁派の理屈だ)、新たに2万人の精神疾患患者を生み出すことになってしまいます。タミフル問題では数万人というオーダーではなく、もっと少ない数であってでも「大問題」とされたのに、こうした「1%」という人数を社会が許容できるのでしょうか?

「重箱の隅をつつくようなことを気にする」のが医療、みたいなことを以前に書きましたが、そうした水準を問題としてきたのに、今後に「いや、99%に問題は発生しない」みたいな理屈で片付けられるのかというと、それは難しいのではないかと思えます。マリファナビジネスが盛んになってよかったね、なんてことは、私には到底考えられませんね。

なんというか、解禁するメリットみたいなものが想像できない。


米国が完全解禁とするまでは様子を見ていいのでは(笑)。