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持続的減税がベストの景気刺激策(追記あり)

2008年11月26日 12時14分34秒 | 経済関連
この前に触れた疑問に対する答えが、もう提示されていた。はや!
bolus doseでは改善しないぜ、ということだそうです(笑)。

(ところで、日本語だと「恒久減税」と言うことが多いと思いますが、タイトルでは意図的に「恒久」とはしていません。日本でそんな減税は多分ないのではないかな、とか思ってしまうので。)


テイラーさんに怒られちゃったよ。いや、怒ってはいなけど。でも、ダメ政策なんですと。

Why Permanent Tax Cuts Are the Best Stimulus - WSJ.com


中身は各自でご確認下さいませ(笑、わたくしには要約を提示するだけの能力がございません。「やま~がた」くんでも訳してくれりゃいいのにね。冗談だけど)。
副題にもある通りに、短期の財政政策は長期の経済成長のプロモートには「効かないぜ」ということだそうです。


極めて短い時間経過の中ではbolusで入れることはあるかもしれないが、それで病気が良くなるわけじゃない、ということかな。そう考えると、言ってることは判るかも。
示された図中では、小切手給付では消費拡大にならない、ということだそうです。確かにそう読み取れるわけですが、一つ思うことは「もし給付しなかったなら、図がどうなっていたか」ということがあるかな。給付しない場合だと、もっと消費が落ちて急激に折れてるグラフになっていなかったのだろうか、と。給付効果が過ぎた所あたりから消費が下降気味に見えるのですが、給付していない場合だとこれがもっと早くに落ちてきてたとか、落ち方がもっと激しかったとか、そういうことってないのだろうか?、と。

ベア・スターンズショックから、リーマン&AIGショックまでには約半年のラグがあったわけですが、もしも一時的にでも何か策を使っていなかったとすると、これらがもっと短い期間で連続的に破綻危機に見舞われてしまって(実際、春頃の時点でリーマンの危うさは取り沙汰されていた)、ダメージが深刻になっていた可能性もあったりするのではないだろうか、と。

このことは「消費拡大に効果がない」ということとはちょっと違うので、春頃の時点でもっと別な政策を選択しておけば良かった、ということにはなるかな。


で、効果がないということは、経済学者の中ではコンセンサスができているよ、ということらしいです。
ミルトン・フリードマンの恒常所得仮説とか、フランコ・モジリアーニのライフサイクル仮説とか、そういう理論上では一時的所得増加では明確な消費増加にはならない、ということが判っているのだよ、と。

なので、テンポラリーな小切手給付という政策は、「意味ないじゃん」と。
そういうことが判っていながら、やっちまったぜ、と(笑)。


テイラー先生は、財政政策決定の際によく出される、3T(テンポラリー、ターゲティング、タイムリー)という「お題目」は、間違ってるぜ、と仰っているわけです。今年春に出された「stimulus」パッケージは、ダメ政策ということですわな(笑)。

3Tじゃなくて、3Pだと。
permanent、pervasive、predictableの3つだそうです。

具体的には、
①税制のコミットメント
②オバマの賃金アップキャンペーン~1回こっきりの小切手じゃなく持続的に
③所謂「ビルトイン(automatic)スタビライザー」を再認識(GDP比2.5%程度)
④財政収支に配慮した長期的政府支出を再構築
を薦めている。

先の短いブッシュ政権が、「古びた静的ケインジアン理論」に基づいて財政支出による刺激策を出したことに批判的です。


なるほど。
しかしながら、市場は長期的財政政策の効果が発揮されるまで「待ってくれた」であろうか?
長期的な財政政策が正しいのだ、ということは、そうなのだろうと思えるのだが、かといって、マーケットが持ちこたえる為にはある程度の「迅速性」も必要となるので、多少の「鎮痛」は必要なのではないか、というのが私の考え方である。痛みが酷ければ、根本的な治療目的さえも達成が困難となるからだ。局面にもよると思うが、とりあえず今できる「酷い痛みをとる」ということをやらないと、痛みが病気の根本原因ではない、と言われても、それは正しいが市場は「痛み」には割と敏感に反応してしまうと思うので。
それに、今から「○○横断鉄道の測量にかかります、工事開始は来年の秋で、完成は3年後です」とか言われても、今夜のメシさえも食えないのに、「未来の鉄道工事の賃金」が今の空腹を満たしてくれるものとも思われないからである(笑)。


でも、基本的考え方は整理されていて、勉強になりました。



ちょっと追加です(16時過ぎころ)。

クルーグマンはやはり異を唱えていますね。

Conservative crisis desperation - Paul Krugman Blog - NYTimes.com


面白いのは、テイラーが「古びた静的ケインジアン理論」だの、複雑で動的グローバル経済を説明するには不十分な論理だのと書いていたことに対して次のように言っている。


『Taylor’s argument against the obvious answer — government spending as stimulus — is pure gobbledygook: 』

テイラーの明確な解答―刺激策としての政府支出―に反対する論説は、真の「お役所的言い回し」だ:

(中略、テイラーの論説が書かれている)


で、これを平たく言うと、

『Translation: la la la I can’t hear you.』

ラララ♪♪~聞えないぜ~


だそうです。

パンチ力がありますな(笑)。
「政府支出派の意見」を聞えないフリをしているようなものだ、と。

確かにリセッションに見舞われると、毎回毎回「恒久減税」を実施するんか、という問いには、うまく答えるのが難しいのでは。比較的短い、或いは軽症の景気後退の度に恒久減税を実施していては、いずれ減税できなくなる(笑)。これが日本でなら、永久に所得税なし、ということになっているな。何たって、失われた十数年ですので。


関係ないけど、クルーグマンは「伊藤のレンマ」の伊藤先生の死を取り上げていました。偉大な数学者だった、ということなんですね、やっぱり。