いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

それは零細だからだよ

2007年12月20日 14時23分42秒 | 社会全般
どうも羨ましがる人々が多いみたいだけど、そんなに零細がいいなら、即サラリーマンを辞めて独立した方がいいんじゃないかな、とか思わないでもない(笑)。

はてなブックマーク - 零細企業経営者・個人事業のための凄い節税対策 住 太陽のブ主ログ


確かに制度としては「優れモノ」だろうと思うけれど、大した利回りでもないだろう。紹介されてるシミュレーションをやってみたよ。

例えば、毎月5万円の掛金で20年継続すると合計掛金は1200万円、これに対する返戻額は1393万2千円でしかない。恐らく現在の利回りを基準として計算しているから、将来指標となる国債金利が上昇したりするともう少し増えるかもしれないけど。

言えることは、銀行の積立預金みたいなものに比べると格段にいい、ということはあるだろう。目標額を返戻金に設定して積立を考えると、1年複利で運用ならば金利水準が1.541%くらいになる(利息は20%源泉徴収されるとして)。つまり、この成績をコンスタントに上回れる投資対象があるなら、そちらの方が投資効果は大きい可能性はある。この共済掛金では源泉徴収されないと思うので、1年複利で運用利率が1.4%だと目標額に達するだろう。つまりは、この独法の試算基準は長期金利から運営経費等の分を減額してみると、いい線だろうね、ということ。日本国債を買ってただ持ってるだけで返戻額分を楽勝で払える程度の運用しかできない、ということだ。これなら、ボケた天下り連中がやっても誰でもできるからね(笑)。

<ちょっと寄り道:
この共済の加入者がもっと増加しないと、この独法が持ってる金の全体額が大幅に縮小してしまい、存続できなくなってしまうという恐怖感を抱いていることだろう。だから、若い人たちにもっと加入して欲しい、という釣りを狙っているのだろう。共済金を分割で受取っていたり、今後廃業で受取る人数が多いはずだろう。それは団塊世代が続々と退職していくのだから、自営の人たちも引退する人数が多いんじゃないかと思う。それと、昔の自営業者の比率は結構高かったのだが(=昔は加入者数が多かった)、最近の就業人口では自営が大幅に減少したので、加入対象者そのものが非常に少ない。となると、今の独法の所有資産は支払が大幅に超過するので、利息収入から運営経費を出せなくなる、ということだ。天下り指定席も減らさざるを得なくなる、と。だから、何とか加入者を引き込もうとしているのだろう。

集めたお金が1000億円になれば、金利が1.5%でも、この運用収入だけから15億円が生み出される、ということだから。加入者には14億円付加して払っても、自分たちのところには1億円を抜くことができる。この1億円を天下り野郎の給料に充てることができる、という寸法だ。大雑把に言えば、こういうカラクリだということ。昔の加入者が多かった時代であれば、積立金として残された資産が1兆円とかあれば、ここから得られる利息収入だけで200億円とか300億円とかになるのだから、楽チン経営だったのさ。ところが、昔の加入者たちに「お約束していた支払額」というのは、失われた15年以前だったので利回りが4%超とかだったのだろう。だから大幅な逆ザヤとなっていることが予想され、今、加入して掛金を払う若年世代は、こうした昔の加入者たちに利息を回す原資を提供しているのと同じだろう。運営交付金も削られていくから、独法は維持するのに困ってきているのだろうよ。いずれにしても、加入者を増やして運用する資金規模をまず大きくし、運用利回りが低下していても払えるような体制を作り上げない限り、天下り野郎どものイスが危ない、ってことだろう。
 昔:運用資金1兆円 利回り4% 運用収入400億円
 今:運用資金2兆円 利回り2% 運用収入400億円
みたいにしない限り、維持できないってことではないか。現状では廃業した支払請求の自営業者たちが多くて、運用資金の総額が恒常的に減り続けているのではないのか。
 今:運用資金8000億円 利回り2% 運用収入160億円
というふうになってしまって、「困りましたねえ」ということだろうと思う。このまま行けば、加入者数が激減して存在意義すら問われるようになる、だから加入してくれ、と騒いでいるようなものだろう。>

ただ節税面で考えると、実質的な利回りは大幅によくなる、ということは言えるだろう。この独法が「とても頑張って」運用成績を上げているから、とかではなくて、単なる税制の恩恵ということ以外にメリットはないだろう。経済産業省の中小・零細企業向けの政策の一部だからできることだろうな、と思う。


だけど、ちょっとよく考えて欲しい。
一生個人事業主で過す場合に、生涯に獲得する「お金」はサラリーマンに比べて多いのか、ということがある。
企業に勤めている人たちには、退職金が貰えることが殆どだろうと思う。大企業とか公務員なんかでは、結構多額の退職金が貰えるはずだろう。でも、個人事業主にはそれがない。法人であればこうした退職給与引当金を計上できると思うので、課税対象額から除外されているはずだろう。これがちっぽけな個人企業(個人事業主)であったとしても、同じく退職金の引当を行えるのは不思議でも何でもないと思うのだけどね。個人事業主には雇用保険も無かったので、事業を畳むと何らの保障もなかったんですよ。

それから、年金の受給額は大幅に異なることも重要だ。
一般企業であれば厚生年金になるので社会保険料分は企業が半分負担している。サラリーマンが厚生年金保険料を14000円払うのと、個人事業主が国民年金の掛金を同額払うのとでは、受給額は大幅に異なるということだ。これは年金受給期間全部に渡って影響を受けることになる。仮に死ぬまで15年間年金を受給していたとして、その間の給付額は大幅な違いを生むであろう。サラリーマンの専業主婦である妻の分まで貰えるのだ。個人事業主は妻の分は独立して別に掛けなければならないからね。法人である企業にしてみると、これら社会保険料分は法人の利益からは除外され課税されないのだから、個人企業であっても同様に課税されない部分が増えることがあってもいいと思えるが。

これをやったとしても、大手企業なんかの生涯獲得収入額(年金の部分を含めて)に比べれば、全然安いだろう。退職金の額も、この共済で満額7万円を40年掛けていったとしても、公務員の退職金には及ばないだろう(笑)。夫婦で国民年金と公務員共済の年金受取額との差額を考えても、夫婦で年間300~400万円くらいの差が出るのだから。

そういうわけで、零細の個人にはほんのちょっぴりのお得感で我慢せよ、という罠が仕込まれているだけだ。公務員を勤め上げた連中には、生涯の獲得収入では到底敵わないのだよ。
特に今の時期であれば、「独法改革」に焦点が当たっているので、この共済の運営主体も存続が危ぶまれているのではないかな、と思ったりする(笑)。


これに関する話は、もう随分前に取り上げて書いたんですけどね。

中小企業基盤整備機構の貸金業

谷垣大臣の試練




日本売り~小銭を惜しんで大利を逃す?(追加後)

2007年12月19日 19時00分10秒 | 経済関連
いやー、株式市場は酷い惨状だね。
今年はあまり株式投資をやらないようにと思っていたけど、流石にここまで下がると、やっぱり買おうと思って、先月くらいから色々と仕込みをしてみたんですよ。大した額じゃないけど。

しかし、今の状況を見ても上がる要素があんまりないね。誰が売ってくるのか判らんのだけど。
サブプライムショックで先月15000円割れとなったけど、再び落ちていきそうな気配だね。年末だというのに、盛り下がる日本市場。景気の先行きも暗い。何だか侘しくなってくるね。


日本の市場が世界中で最も落ち込んでいるのは、見放す人々が多いからだろう。
自分の投資を考えても、似たようなものかもな、と。今後値上がりしそうな株と、あまり期待できそうにない株を持っている時、手元にキャッシュを必要とするなら、まず先に「期待できそうにない株」の方を手放してしまうもんね。それと同じようなものではないかな。世界の投資家たちにとっては、日本市場の魅力が大幅に落ちている、ということではないか。だから、外国人投資家たちの中でキャッシュをかき集めねばならない事態を生じると、まず日本株を売って現金を引き上げていってしまうのかもしれんね。持っていてもしょうがないな、と思ってしまうからだろう。

現在の日本市場の正確な時価総額は判らないけれども、たぶん百兆円規模で消滅してしまった可能性があるのではないかと思う。

株式時価総額 11月

これで見ると11月末時点では東証一部で約493兆円だ。全市場合計でも502兆円弱しかない。これが6月末だとどうだったかというと、こうなっていた。

株式時価総額 6月

東証一部で約567兆円、合計では578兆円だったのだ。つまり、たった5ヶ月間で80兆円近くが消滅したことになる。これが日本の失った価値なのだ。これで景気回復と呼ぶのは、調子がよすぎなのではないか、って話だね。日本がデフレに逆戻りしてしまって、アメリカが沈んでいく時、代わりに日本が牽引役にもなれないということだ。

今、メガバンクが金を出す出さない、というような話が持ち上がっているが、僅かな金を惜しんで100兆円規模で消滅するのをよしとする発想はいかがなものか、と思わざるをえない。銀行単体で難しいのであれば、こういう時こそ「護送船団方式」でもいいので、それぞれが持ってる金を出せる分だけ出す方がいいのだよ。年金運用だって、こうした大幅下落の影響を受けて、運用損が膨らんでいる。このままいけば、もっと損失は大きくなるであろう。1兆や2兆円を損するとかいう話ではなくなっているのだよ。


先月書いた話がコレ>ジャパンマネーは世界金融の救世主となれるか


米国の大手銀行が基金を作るとか言ってるが、たぶん当初予定していた800億ドルには遠く届かないことが判って、必死で金をかき集めようとしているのだろうと思うよ。日本のメガバンクだけが寄り集まったとしても、焼け石に水かもしれない。その程度では「全然効かない」ということなのだろうと思う。もっと一気にやらなけりゃ、効果が限定的になってしまう、ということだろう。いくら流動性を供給しても原因に対しては効果がないのだ。ショックでいえば、どうにか代償されてはいるが、このままいけば不可逆期に突入するかもしれないということ。そうなると、循環の維持システム全体(この場合だと金融システム全体)の機能不全に陥ることになるだろう。

以前に少し触れたことがあるが、薬を使う時、量の問題というのがあって、エピネフリン(アドレナリンと同じ)の作用は少量の時の発現効果と、もっと量が多い場合では異なるのである。観察される現象も変わってくる。投入量が少ないことで、予想していた効果が出ないとか良くない反応が生じてしまう可能性もある、ということを念頭に入れておかねばならない。なので、原因に対しての政策を打つのであれば、着手前から第1段階、第2段階、第3段階というふうに、次の一手を予め考えておかねばならないだろう。問題が大きければ大きいほど、単一の治療法だけではうまくいかないので、政策パッケージで対応するということになる。これは何でも同じなのでしょうけれどね。

先月の記事にも書いたが、FRBが金利引下げで対応しようとすれば「インフレ懸念」という大きな副作用があるので、これを主軸に据えるのは難しいだろう。エンドトキシン・ショックの如く毒素が体全体に回れば多臓器不全となり、回復不能となりかねないのだ。毒素とは、サブプライムの債権破綻というのと同じであり、これが組み込まれた大量の債券が壊死(=紙くず)となるということだ。これに対しては、ボリュームを維持して循環虚脱を防ぐのと、毒素を中和か薄める、感染源を除去する、ということになる。今のところ流動性大量供給でボリュームは維持されているが、感染源の除去ができていない。毒素については、危険な債券を緊急避難的に買取して金融機関に毒が回るのを防ぐことは可能だろう(今はその原資がなくて窮しているのだが)。根本の感染源は返済能力のない借り手たちだが、末端の貸出業者と伴に、破綻処理を進めるしかないだろう。完全破綻(不動産差押え)のような処理ばかりではなく、金利減免とか返済条件の変更(返済期間延長し一回返済額を軽減、当面金利負担のみ返済を続ける、等?)などが行われるかもしれない。

これらを一括してやっていくことになるが、買取債券が想定よりも大量であったりすると買取能力をオーバーしてしまうことも有り得るので、別な資金調達も考えておく必要があるだろう。米国内で500億ドルをどうにか都合をつけたとしても、これではカバーできない可能性は高いだろう。1千億ドル規模の資金を日本が出せば、当面の危機的な状況は回避されるであろう。これでも日本市場で消滅した数十兆円に比べれば、はるかに少ない額だということ。更に追加的に資金が必要であるなら、条件を色々と付けて、有利な交換条項を入れて担保に取ることを考えればよい。


この問題を放置したままでは、日本市場そのものが今のジリ貧から抜け出せないよ。

NIKKEI NET マネー&マーケット:国内株・日本株・日経平均株価

ここのデータにある通り、日本市場の益回りは5%以上あり、年度末予想では6%近くまでいく。世界経済の減速で若干落ちたとしても、5%以下にはならないだろう。利回りだって長期金利と似たようなものなのだ。日本市場は割安だろうと思うし、ここでみんなが「今は買いチャンスだ!投資しよう」という機運にならないことが残念なのだ。以前にライブドアの問題なんかがマスコミを賑わせていた時には、バブルだの虚業だのと責めていたが、今こそ「買いチャンスがやってまいりました。みんなボーナスを株式に回して儲けましょう」みたいに大々的に宣伝をやってくれればいいんだよ(笑)。

日本の長期金利が低いのと、デフレを脱却していないこともあって、イールド・スプレッドを見ても投資判断には役立たない、みたいなことになってしまうのかもしれないが、どう見ても益回りは長期金利を大幅に上回っており、3倍くらい違うんですよ。こんな状況で儲かってしまうのは、デフレだからだ。株式や不動産などへ投資するよりも、キャッシュで持ってる方が儲かるからだ。デフレを永続させるという経済運営が異常過ぎるのと、企業のキャッシュ(収益)が突出しているからだ。

だから、みんなで株を買いに行こう!

というのは冗談ですけれども、株式や不動産への投資割合がもう少し増加し、インフレ率が正の値をとるようにならない限り、こうした異常な経済環境は改善されないだろう。そもそも、それが今の「日本売り」へと繋がっているのだ。


いつでもそうだが、日本では決断する人がいない。
故に、遠目でボケッと見てるだけなのだ。頭が良くて優秀な方々が日銀とか政府に大勢いて、政策とか運営とか考えてやっているのに、全くの無能というか、かえって余計なことだけはする(無用な利上げとか)が、やらねばならない肝心なことに対しては放置なのだ。優秀な人たちを集めて、全力で考えろ、と指示をすればいいのに、それができないのだ。着手しよう、実行に向けて行動しようという人が、まるで出てこないのだ。


千載一遇のチャンスかもしれないのに、僅かな銭を出し惜しみして、日本の貴重な資産を百兆円規模でパアにするような無能揃いの国なのだ。日本という会社の経営トップが悪けりゃ、いつまで経っても会社は浮かび上がれんのだよ。そんな連中が日本の中枢を握っているのだから、一般国民は迷惑を蒙り、苦労を強いられるのである。


今日のグラフを見たけど、酷いね。
ジリ貧というか、もう、防衛戦線がズルズルと後退していく、みたいな感じだな。防波堤になるものがない。
買い資金が絶対的に足りてないので、売り物を吸収できないみたいだね。新たに戦線に参加してみても、ダメだな。特に私では持ってるモノが少ないもんね(笑)。「退くな、戦線に踏み留まれ、撃ち返せー!」とか言って、売りに立ち向かおうと思っても、みんなズルズルと下がっていくから、戦線が維持できず撤退していく。防衛ラインが崩れると、下がるから戦線離脱者が増加するのでまた下がる、の悪循環みたいだね。


そもそも日銀のタコ助のせいで、05年12月の株価よりも、今年は大幅に下回っているのだな。当時でも日経平均で16000円以上だったからね。この2年間の企業成績は悪くなかったし、景気は回復しているという腐れコメントは継続していたにもかかわらず、日本企業の時価総額では数十兆円が消えることとなったのだ。

日銀の超ド級の無能さと将来見通しの悪さとリスク管理能力欠如のせいで、日本国民は数十兆円の損害を与えられたんだよ。日本以外の主要国で、この2年間で日本みたいに大幅に株式市場が下落した国があれば、是非とも紹介してくれよ。経済月報でも、日銀短観でも何でもいいので。全部、過去の失敗通りだったろ?言ってきた通りだったでしょ?


福井日銀総裁みたいに、自分の懐具合を肥えさせることに熱心だけど、日本国民は額に汗して這いつくばって稼げ、バブルに踊るのはもってのほかだ、円キャリーも諸悪の根源だ、みたいな主義主張を持つ人間にとっては、大変好ましい結果であったでしょう。

良かったですね、目論見通りにバブルを徹底阻止できて(爆)。日本を不幸にすることが、そんなに嬉しいんですかね。ここまで愚かなのは、不思議でならない。


日銀は、国民に金を返すべきだ。

福井総裁とか、刑務所に入れて欲しい、本当に。
残された僅かな生涯かもしれないが、死ぬまで刑務所で「清貧暮らし」を実践させてやって欲しい。そうでもしない限り、タコ助には失敗の大きさが感じ取れないであろう。



日本政府はUFOの存在を未だ確認せず

2007年12月18日 14時30分03秒 | いいことないかな
何かの冗談かと思った。

「UFO、存在の確認なし」政府が議員質問書で閣議決定(読売新聞) - Yahooニュース

地球外から飛来してきた未確認飛行物体(UFO)について、政府は18日、「これまで存在を確認していない」とする見解を閣議で決定した。文部科学省によると、政府がUFOの有無に関して正式な見解をまとめて公表するのは、これが初めてという。

 山根隆治参議院議員(民主)から提出された質問主意書に対し、答弁書を閣議決定した。それによると、政府はUFOの存在を確認していないとしたうえで、「特段の情報収集、外国との情報交換、研究などは行っていない」とし、「我が国に飛来した場合の対応についても特段の検討を行っていない」と説明している。

 航空自衛隊は、日本の領空に侵入するおそれのある正体不明の航跡を探知した場合に戦闘機を緊急発進させるが、「鳥など航空機以外の物体を発見することはあるが、UFOを発見した事例は承知していない」と答えた。

=====


大爆笑。
民主党の山根議員って全然知らないんだけど、これは釣りですか?(笑)
一発狙い?それとも、官僚への嫌がらせ?

ま、何にしてもいいのだけれど、こんなものを閣議決定せにゃいかんというのも笑えるね。閣議の時に、官僚から説明があるのかどうかは知らないけれど、こんな感じだったのでは。

役人「えー、続きまして民主党の山根議員の質問ですが、UFOについてです」
総理「ハア?何ですか、それは。UFOですか。イジメとか嫌がらせですか?」
役人「そういうことでもないとは思いますけれども…」
総理「じゃあ真剣に訊いてきている、と。変わってますね」
役人「ええ…でも回答しなければなりませんので」
総理「答えはこれでいいんじゃないですかねえ」
役人「では閣議決定ということで…」
総理「こちらも真面目に答えるのも芸がないかな」
役人「それはどういう…」
総理「せめてピンク『レデー』は確認済み、と書いておくとか。ウフフォフォ」
役人「…、…ええ、気が利いてますね。でもレデーではなくレディーですね」
総理「そうかい?昔はレデーって習ったもんなんだよ、レデー」
役人「ええ、しかしながら正式にはピンクレディーですので、レディーが正しいかと」
総理「まあ、どっちだっていいじゃないですか、冗談なんだから。フォフォ」
役人「(シラーって感じだけど、まいっか、レデーで)……」

最後はオヤジの冗談に笑顔で応える下働きの人、みたいな感じで。


まあこんなことは実際には起こらないでしょう。
ピンクレディーのUFOとか知ってる人は減ってきてますでしょうか?
ああ、ヤキソバにもあったね、UFO。インスタントのやつ。

答弁書に、「ピンクレディーの歌謡曲、及びインスタント食品における名称においては確認されている」とか書いたら、山根議員は怒っただろうか?


よくこんな質問を出そうと決意しましたよね。
その蛮勇には敬服いたします>山根議員どの


関係ないけど、ウチの子はかつて「ヤマネ、かわいい~」とか言ってて、「ヤマネ萌え」みたいになってたよ。学校の図鑑を何度も借りてきて、かわいいを連発していた。新聞に出てたヤマネとかその他小動物の写真を切り抜いて集めていたからね。



いい加減にしてくれ

2007年12月17日 20時58分14秒 | 社会全般
随分としつこいな。
日経の社説も産経と似たり寄ったりのレベル。

NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋-日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

(一部引用)

 同訴訟は全国5つの裁判所に提訴された。9月までに出そろった地裁判決は「国に感染被害を止められなかった責任があるかどうか」について、感染源である薬剤の種類や薬剤を投与された時期で区切って判断した。その結論は、「どの時期も責任なし」からほぼ原告の訴えどおりに広い範囲で認定したものまで、5つの判決がそれぞれに異なる。

 大阪高裁が提示した和解案は、国の責任を限定的にとらえる内容で、原告側は薬害被害者の一部が救済されないとして拒否する意向を表明した。同高裁は和解案と同時に出した所見・説明書で「(原告側が要求する)全員、一律、一括の和解金支払いによる解決が望ましいが、被告の国・製薬会社の格段の譲歩がない限り、地裁判決の内容から外れられない」旨、述べている。

 ここで留意すべきは、裁判で争われる「国の責任」の有無とは賠償責任が生じる「違法な行政」があったか否かだ、という点である。肝炎訴訟のような、行政の不作為を問責するケースでは「行政権限を行使しなかったことが著しく不合理」と判断された場合だけが「違法な行政」になり「国の責任」が認定される。

 国民が薬事行政に求める「安全確保の責任」が、そんなものでないのは論をまたない。当の厚労省も「“著しく不合理”にならなければいくらサボっても構わない」などとは考えていないだろう。血液製剤を原因とするC型肝炎感染が発生し広がった原因に、「著しく不合理」とまではいえなくても薬事行政の手抜かりや怠慢があったのは明らかだ。

=====


責任があったか、なかったか、というような2択(マスメディアの好きな論調だ)でいえば、簡単に「行政に責任はあった」という方向になっていくだろう。社説で「そんなものでないのは論をまたない」とまで言われているからね。要するに、完璧を求められているということだ。「薬事行政の手抜かりや怠慢があったのは明らか」と断言されてますし。

私の個人的感想を言えば、薬事行政は十分であったとは言えない、とは思いますよ。しかし、完璧ではなかったにせよ、一応の対策はとっていた。回収指示もしていた。その回収で漏れがあったのは業者や医療機関側に主たる責任があるのであって、特に医療機関が返却してなかったことや使用を継続したことには、個別に責任があるものと思われる。全てが厚生省のせいではない。責任の大きさというものには違いがあるのであり、過失の賠償はそれに応じたものであるのは普通だろうと思うのだが。

私だって、肝炎訴訟について裁判で決着を付けるのが望ましいなどと考えてはいません。原告側が個々に因果関係を特定したり、感染原因を立証することが甚だ困難であり、行政の責任を問うことも主張としては判らないではないが、現実に裁判で争うとなれば原告側主張が全て通る可能性というのは厳しいと言わざるを得ない。それ故、裁判で時間を浪費するよりも早急に決着を付けることに重点を置き、医療費等の負担を受けずに済むようになる方が肝炎患者の方々にはメリットが大きいと判断しているからだ。争うことが「大変難しい」事例であると思うからこそ、時間を使うのは無駄だと思うからですよ。


過去に問題となってきた薬事行政の怠慢について考えるのと、C型肝炎については同じように考えることは大変難しいと思いますよ。
例えば、HIV訴訟は80年代末から始まっていて、その当時から血液製剤の「ウイルス感染」の問題は判っていたでしょう?何故、マスコミはその時に「血液製剤を使用禁止にせよ」とかのキャンペーンをやらなかったんですか?87年の青森の感染例が報道された後で、フィブリノゲン製剤は使用禁止にすべし、とか主張できたでしょうが。その時にどうして「薬事行政の怠慢だ」と追及キャンペーンをやらなかったんですか?いくらでもできたんじゃありませんか?(笑)マスコミ全部が「不合理にならなければいくらサボっても構わない」などと思って、行政の追及をやらなかったわけでもあるまい?国民が社会の木鐸(笑)に求める責任が、そんなものでないのは論をまたないのではありませんか?

要するに、後になってから「何故あの時やらなかったんだ」と追及するのは、バカでもできるってことなんですよ。マスメディアの卑怯な所は、「自分たちも何もしてこなかった」ということを棚に上げて、後になってからいくらでも責任追及キャンペーンをやることなんですよ。自分たちに責任を感じる、などということもなければ、反省の言葉を述べるでもないでしょう?「87年に判明した時点で、もっと調査報道を頑張っておけばよかった、もっと我々にもできたことがあったんじゃないか、感染被害の拡大をもっと小さくできていたのではなかったか」というような、自省を書いた新聞はどこかにありましたか?「HIV訴訟の時から、肝炎ウイルスの感染リスクについても注意を払っておけばよかった」と、自らの失敗として感じる人たちなんて、マスメディアの中の誰一人として存在してないんですよ。そういう連中が寄って集って、自分たちにはよく判ってないことを、さも判ったような顔で偉そうに「政治決断せよ」みたいなことを言うのです。

まあ、よく考えていたなら、そんなことは安易に言わないでしょうがね。
もし責任を問うのであれば、まずそれ以前の話としてどうして肝炎になるのか、感染リスクはどういったものがあるか、血液製剤以外での感染はどうなのか、などといったことについて等しく情報提供を行って、そこで初めて「血液製剤での感染」という問題を言うべきだろう。今のようなマスメディアの騒ぎ方では、「何かの薬のせいで、ウイルスをうつされたんだ」という誤解が撒布されているだけだ。「HIVと同じような薬害」というような、誤った認識を抱いている人々が多くなるだけ、ということ。社説を書いている人たちも、殆どがそうした認識を持っていると思われ、その考え方が間違っていると指摘されていてでさえ、なおかつ判ってないわけだから、世の中の一般の人々に間違えないように理解してもらうのはかなり困難なのですよ。それは、マスメディアの垂れ流す断片情報からだけでは、正しく理解することは難しい、ということだ。社説子が判ってないことが、何よりの証拠ということ。


HIVの場合には、血液製剤以外の感染要因なんて「極めて稀」というレベルなんですよ。HIV陽性の方々を多数集めてみたら、ほぼ全員が「血液製剤による感染」なんですよ。だって、他にHIVウイルスを持っている日本人というのは、ほぼ皆無に等しいからです。ゼロではないかもしれないが、その人を発見するのは極めて困難な程度でしか存在していなかったからですよ。血友病の方々以外で、100万人の全員検査を実施したら、1人いるかいないかくらいであって、多分ゼロだろうという水準なのですよ。なので、血液製剤投与以外の感染経路は、水平感染の可能性は極めて低い、ということです。お互いにウイルスを持ってない人たちばかりですので、水平感染が滅多に起こらない、ということだったのです。なので、HIV感染は血液製剤以外の要因というものを疑う余地はほぼゼロに等しい、だから全員一律に救済するのは問題なかったのです。

サリドマイドやスモンによる被害というものもこれとほぼ同様で、他に疑われるべき要因というのは皆無に等しい、という水準だからこそ、因果関係を推定することもその責任や補償について単一に考えることができたのですよ。サリドマイドによる奇形以外に先天奇形が有り得なくはないかもしれないが、それは起こりうる可能性がサリドマイドの危険性に比べれば極めて低く、原因として「サリドマイドではなく、先天奇形だ」などと主張するのはほぼ無理だからです。


何も置いてない部屋に机があり、机の上にアイスクリームがあるとしよう。部屋には、Aさんしかいない。1時の時点でアイスクリームが机の上にあって、2時に見たらアイスクリームは消えていたとしよう。すると、アイスクリームは何処へ行ったのか、ということになるが、ここから推定されるのは、「Aさんが食べたんだろう」ということだ。他に隠す場所もなければ、捨てる場所もないのだから、消えるわけがないもんね。こういう時、Aさんが「アイスクリームはドラえもんが4次元空間に飛ばしたんだ」とか、「溶けて空気中に蒸発したんだ」とか主張しても、その可能性は極めて低いということは誰でも判るだろう。疑うべき要因が単一なので、結論を得やすいのである。

しかし、この部屋に10人の人間がおり、部屋には暖炉や流し台やダストシューターなどがあれば、どのような結論が出せるだろうか?
1時に机の上に置いてあったアイスクリームが2時には無くなっていたら、この理由を探し出すのは容易ではない。色々な証拠や証言などを精密に組み立てていかない限り、結論が出せないのだ。Aさんが食べた可能性と、Bさんが暖炉に投げ入れた可能性とが残されたとしても、最終的に真実を明らかにするところまでは行けないかもしれない。そういう事柄は世の中にたくさんあるんだ、ということを認識し受け入れてもらう以外にない。この時、Aさんが食べたに違いないのだからAが弁償せよ、と勝手に決め付けることはできますか?と言ってるんですよ。マスメディアがやっているのは、全然間違った犯人探しを行っており、その間違った犯人に弁償させようとしているだけなのだ。
いくらでも好き勝手に言えますよ、そりゃ。
「Cさんがシューターに落としたんだろ」とか適当に決めて、「Cは責任を認めろ、遅くて歯切れが悪い、何をぐずぐずしているのだろうか」とか文句を言ってやれば済むんですからね。無責任なヤツラほど、何だって言えるんですよ。


こういう話であれば、真実はもっと調べなければ判らないはずだ、と誰しも考えるのに、何故肝炎だと直ぐに結論が出せるのだろうか?科学的応用力がないのは、子どもたちではなくて、大袈裟に嘆いている、高学歴の社説を書いているような連中だ、って思うわけですよ。


C型肝炎の場合には、血液製剤が原因だ、と特定するのは、極めて困難です。若年世代で水平感染機会の滅多になかった人であれば「血液製剤が最も疑わしい」と言えるでしょうが、輸血していたりするような場合であれば、輸血が最大の要因として考えられるのであるから、それを退けられる証拠を出せない限り無理ですね。同世代内のキャリア率の高い世代(今の高齢世代だ)であれば、水平感染の機会自体が多かったわけで、それを全て否定するのは困難でしょう、と言っているのです。
フィブリノゲンが用いられなくなった今現在においても、「新たなC型肝炎患者は確認されている」のですからね。この感染者たちは、血液製剤投与以外の何らかの理由がなければ感染したりはしないのです。少ない割合かもしれないが、感染しているんですよ。これらを考慮することなしに、何故血液製剤が原因だ、ということろに短絡的に結びつくのか、ということです。


それと、国の責任を認めるとしても、責任割合みたいなものが出てくると考えるのは普通なのではありませんか?
自動車事故で過失を認める場合にも、全てが100%の責任割合となるわけではないのです。過失責任の範囲で賠償されるだけです。責任があることを認めていても、100%の賠償義務を負うとは言えません。「責任の重さ」ということを考えるのではないですか?行政に落ち度があってそれがたとえ改められていたとしても、全ての感染例を防げたわけではありません。HIV感染の場合とは違うんですよ。HIV感染はほぼ全部が血液製剤に起因するものでしたが、C型肝炎の感染は「血液製剤投与による感染」例というのが、全体のごく一部なのです。これを同列に責任を問うというのも、賠償を課すのも、おかしいと言っているのです。落ち度がなかったとしても、多くのC型肝炎の感染者を防ぐことはできず、水平感染も生じていた、と推定するのが合理的だろうということです。


どうして新聞記者はこういうことさえも考えることができないのか、不思議です。

責任はありやなしや。
あると認めるのだな?
あるなら、全部賠償せよ。
責任があるなら、全部お前が払え。


こんな主張は明らかにおかしい。




ある訴訟の話

2007年12月15日 18時53分07秒 | 法関係
男が裁判で訴えた。


私は肺ガンにされたんだ!私の人生を返せ!
昔、専売公社からタバコを購入していたのだが、国が売っているものだから信じて買っていたんだ。
まさか肺ガンになるなどとは露知らず、長年危険なタバコを投与され続けてきたんだ。
国の独占的事業だったのだから、国がそういうタバコを売っていいと認めていた。
だからこそ販売していたんじゃないか。
危険なタバコの販売をしていた国は、販売を止めさせるべきだったのだ。
それなのに、何らの対応も取ってこなかったんだ。
だから私は肺ガンにされてしまったんだ!

大勢の人たちが被害に遭ってるんだよ!
タバコを投与された人間は、実際に「肺ガンになっている」んだ。
まだまだ知らずにいる人たちはたくさんいるんだ。
みんなに知らせることができないのはどうしてなんだ。
一刻も早く知らせないと、みんな肺ガンになってしまうじゃないか。
人の命を何だと思ってるのか!

肺ガンには、他の原因や理由でもなるって?
何を言ってるんだ。
実際にタバコを吸った人たちは、大勢肺ガンになってるじゃないか。
それとも、私の肺ガンになってることを疑うと言うのか?
危険なタバコを売られたから肺ガンになったんじゃないか。
安全なタバコだったなら、こうはならなかった。肺ガンになることもなかったんだ。
私の人生をどうしてくれるんだ!

タバコを吸ってない人でも肺ガンになってるって?
私は危険なタバコを吸わされたから、肺ガンになったと言ってるんだ。
知らないうちに危険なタバコを吸わされたから、肺ガンになったんじゃないか。
実際、危険なタバコを投与された人たちは、吸わない人たちに比べて何倍も肺ガンになってる。
これも全部危険なタバコのせいだ。
国が危険なタバコを売っていたせいなんだよ!
危険なタバコを投与されたのを知らずに肺ガンで亡くなった人が大勢いるのだ!
命を何だと思ってるんだ!!
私の命は今もこうして削り取られていってるんだ!
お前らみたいな役人に何が判るって言うんだ!

こういう危険なタバコを販売してきた国に責任があるのだ。
その責任を認め、賠償するのは当然だ!
全員一律に救済せよ!
命の線引きをするな!
私の時間を返せ!
危険なタバコを買わされたからこそ、こうなったんだ。
国は安全なタバコを販売する義務があったんだ。何故それをしなかったのか。
危険なタバコであることを、国は隠してきたんだ。
その責任を取れ!


私の命あるうちに、総理は決断せよ。
政治の決断をしてくれ。

総理は『遅くて歯切れが悪い。何をぐずぐずしているのだろうか。』


というような訴訟も同じく可能だと思います。
やってみたらいいと思いますよ。
「政治決断」で救済を求めることができますから。


C型肝炎も同じく、他の理由でもなっているし、原因が全て血液製剤にあることが判るわけではないのだ。血液製剤を投与されてなくても、感染者は現実に大勢いる。それをただ一律救済すれば、今後上に書いたような因果関係の不確実なものであっても、賠償させられることになるだろう。製薬会社は、関係の薄い事象にすいても賠償義務を負わされるし、非常に長期に渡る将来までリスクを負わされることになるし、原因を特定できなくても賠償しろ、ということを常に求められるだろう。

特に恐ろしいのは、
「たとえ相手側主張が誤っていても、賠償させられる」
ということだ。
被害に遭ったことをセンセーショナルに演出できればそれがいつでも可能、という法もルールもない、マスメディアが好き勝手に行う懲罰システムとして作動する、ということだ。


マスメディアの連中には、こうしたことが考えられないのだろう。



何でも救済される国

2007年12月15日 18時10分02秒 | 社会全般
まただな。

「【主張】薬害肝炎訴訟 首相の政治決断が必要だ」事件です‐裁判ニュースイザ!

『遅くて歯切れが悪い。薬害C型肝炎訴訟への国の対応である。
被害者を救済する政治決断を先延ばしにしたうえ、薬害を招いた責任をはっきり認めようとしない。裁判所が和解を勧告しているのに福田康夫首相は何をぐずぐずしているのだろうか。』


政治的に解決するべきものと、必ずしもそれが望ましくないものについてでさえ、考えが及ばないのだろう。こういう輩が増えるからこそ、建設不況を招いた建築基準法改正のようなことになるのだろう。耐震偽装でのメディアの騒ぎっぷりは異常だった。あれと同じだ。


参考までに言っておきますが、耐震偽装のマンションなどを買わされた人々は、是非国を訴えることをお勧めします。こういう考え方はどんな場合にでも通用すると思いますので。マンション購入者は、血液製剤投与を受けた人と同じです。何らの落ち度もなく「欠陥のあるマンションを売りつけられた」ということですので。マンションを供給した業者にも責任はありますが、建築確認などの許可は国とか自治体にその責任があるのですから。「許可したのは国や自治体」ということですよ。

従って、泣き叫び、涙ながらに救済を強く訴えると、「政治決断」で全員が一律に救済されるでしょう。
偽装された全建築物の許認可の権限は公的なものであって、そこで設計上の虚偽などを見つけるのは役人の仕事であり、役所に責任があるのですから。本来的な原因がどこにあろうとも、全く無関係に国が責任を認め賠償しろ、と誰もが認めているんですから。

何が違うと思いますか?
何も変わらないんですよ。権限があった、だから全員一律に救済すべし、という論理を、こうした新聞の社説に書いてしまうくらいですので、これは産経だけに限らず、他の新聞記者たちも同様です。こういう主張というのがいかに見当違いなものなのか、それを認めてしまうとどれほど広範な賠償義務を負うことになるのか、全く考えていない連中は、揃って同じようなことを言っていますので。それに、肝炎問題とは違って耐震偽装の場合には、因果関係が不明なことなどなく原因と結果が極めて明確になっていますので、「欠陥があった」という結果からは間違いなく業者や許認可をした役所に責任があった、ということに遡及できますからね。

よって、建築物の欠陥は全て許可をしたり確認をした役所の責任を問うことができ、(建物ごとの)全員一律に役所が救済する義務を負うことになるでしょう(笑)。いい訴訟案件ではないですか。やったらいいですよ。ありとあらゆる責任を問う連中ばかりで、自らは何らの責任も負わない連中は、いくらでも好き勝手なことを言えるからね。



名誉毀損と批評は別だと思うけど

2007年12月14日 18時49分28秒 | 法関係
ちょっと「賞味期限切れのネタ」(笑)という気がしないでもありませんが、少し書いておこうかな、と。


能力不足と事なかれ主義のBPO~TBS「朝スバッ」の不二家報道について


ここで取り上げたのだけれど、名誉毀損の該当するや否やという話の論点は、大体似たような感じかな。

で、問題は辛口(辛辣?)な批評が名誉毀損となってしまうかどうかであるけれども、これがもしも該当するということになれば、軒並み刑法に引っ掛かってしまうことになり、自由な言論は妨げられることになるだろう。

はてなブックマーク - ブログの辛口評価は事実でも名誉毀損 - 愉快痛快奇奇怪怪

報道機関だって許認可制でもなく、文筆家とか何かの評論家などでも、誰がそれを名乗ったとしてもそれを否定することはできないのであるから、一般個人が表明するのと本質的には違いがないであろう。

「飲食店○○の料理はマズく、接客態度も悪く、最低の店だと思った」
というような主張が刑法に抵触している、ということになれば、これはこれで一大事ということになるね。


いくつか例を考えてみよう。

例:

・○○銀行の行員は態度や対応が悪かった
・○○証券の職員は金融商品の説明が下手で分らなかった
・○○貸金の取立て屋はキツイので恐ろしかった
・作家の○○の作品は最低の本だ
・翻訳家の○○の本は間違いだらけだ
・化粧品の○○は効果が全然なくダメ商品
・痩せ薬の○○は全然痩せられない
・○○石を使った~はニセの効果を謳ってる

先のリンク先にあった日経記事に沿って言えば、これらは、主観的評価が主体の意見ということになります。

これら摘示した事項が真実か否かには無関係に名誉毀損罪であるということになれば、ほぼ意見を言うな、批評してはいけません、ということになるだろう。
このような法学的見解は、ちょっと信じ難いね。

ネットでもありがちではないかと思うが、
「漫画家○○の~という作品は、作画が低レベルだし、ストーリーもいい加減だし、面白くも何ともない。素人同然の出来栄えだ」
というような意見だね。

漫画家○○を殊更に誹謗中傷する意図をもって攻撃しているとか、漫画家○○の信用を失墜させることを目的としているとか、そうした「故意性」が証明されるならば犯罪行為として取り締まるべき対象となるかもしれないが、それが成立してないのであれば、刑法で処罰するべきものとも思えない。


ま、素人考えですので、信用ならないのですけどね(笑)。

私も訴えられるかもしれない。ヤバいかも。



「日本の裁判官がおかしい」のだそうです

2007年12月14日 15時24分14秒 | 法関係
やっぱりね。
というか、同じように感じている方々もおられる、ということです。

日本の裁判官がおかしい ニュースを斬る:NBonline日経ビジネス オンライン


エリート云々が関係あるかどうかは知りませんが、このままで裁判員制度なんかをやっていけば、司法の信頼性は低下するだけになりそうです。
裁判官だけでやってもトンデモ判決は生み出され、ここに更に裁判員が加わるのですからね。専門家だけでやっても正しく考えることさえできてないのに、素人が加わってきちんとできるんですかね?

このままでは、司法への信頼は低下していく一方になるだろう。

いろんな判例について、妥当性について検証することさえ十分できてないのだから、ますます混乱していくだろう。過剰なまでの感情論が横行していくだろう。裁判官と感情的な裁判員は手に手を取って、被害者の感情を昇華させてくれることだろう。現状でさえ、そういう傾向なのだから、この拍車がかかること請け合いだと思うよ。



漏れ(笑)

2007年12月13日 19時22分34秒 | 社会全般
例の海自の情報漏れで逮捕者を出す事態に。

中日新聞海自3佐を逮捕 イージス艦情報流出で神奈川県警社会CHUNICHI Web


なるほどね。
恐らく取調べでは、こんな感じだったのではないかな。

刑事 「素直に吐いた方が身のためだぞ」
隊員 「そんなこと言われても…”しらね”えもんは知らね」
刑事 「もうネタは上がってるんだ。わかるだろ?」
隊員 「誘導尋問にしては、随分イージーすぎじゃない?」
刑事 「何言ってるんだ。おちょくってるのか」
隊員 「だって、イージスだけに…」
刑事 「プッ、、って、ダジャレ好きかよ…」

「護衛艦しらね」の隊員は、「シラね」というのが口癖だった…


なわけないだろ!


ところで、今回の事件では警察捜査となり、逮捕となったわけですが、例の情報本部の空佐の事件はどうだったかといえば、これもまたウヤムヤなんですよ。

参考記事:失踪事件の謎に迫る

失踪事件の謎に迫る~2


空佐を取調して、警務隊はその後にどうしたのか?
報道では空佐の処分などは判らない。どういう真相であったのかも、今回の事件のように警察が刑事事件として扱うこともないわけだ。

不思議ですよね?
情報漏れということだけで言えば、同じようなものなのではありませんかね?

「大使館の女」や「読売新聞の記者」がスパイとかでないことが判るんでしょうかね?もっと警察が取調をやらなくてもいいのか?

どこから見てもクサい事件だわな。
実質的に事件があってもなくてもどうでもいい、ということなのですからね。一時の注目を集められれば、それで目的が達せられるのですから。

財務省ノンキャリアの集団強姦事件と同じ構図だわな。
その後に一切報道から消え去る、というのが。大使館の女も、読売記者も、どうなったんかね?罪を問われずとも済む理由というのは、一切明らかにされてないし。

参考までに、週刊誌では、高校音楽講師の鬼畜の所業とか人物像なんかは出てたらしいですよ。見出し広告しか見てないけど。こんな事件でも、十分いいネタとして使われとるのに、官僚の事件で餌が2人もいるにも関わらず、一切報じられない。

捏造事件であれば、作ることだけはできても、その後に裁判とか実際にフォローできんもんね(爆)。



今度は遺族が提訴

2007年12月12日 12時23分11秒 | 社会全般
こうなると何でもアリだな。

<薬害肝炎>関東の女性遺族が提訴へ 感染者リスト該当者(毎日新聞) - Yahooニュース

(以下に引用)

薬害肝炎訴訟弁護団は11日、厚生労働省が放置していた418人分の感染者リストに記載されていた関東地方の女性(1月に84歳で死去)の遺族が、12日にも提訴することを明らかにした。リスト該当者の提訴は5人目で死亡のケースは初めて。
弁護団によると、女性は87年に心臓の手術を受けた時、止血用に血液製剤フィブリノゲンを投与された。輸血でC型肝炎に感染したと思い込んだまま、多臓器不全で死亡したが、今月10日になって、長男が医療機関からフィブリノゲン投与の事実を初めて知らされたという。【清水健二】

=====


また清水健二記者ですか。それは別にいいですが、マスメディアの報道によってこういう事態を招いたのだよ。根本的に間違った情報を供給し続けることで、原因としては想定し難い人々であっても「金が貰える」ということで訴えることになるのだよ。言った通りでしょ?

動く歩道の例で言ったように、腕に傷跡さえあれば誰でも「動く歩道のせいだ」という主張を可能にしてしまうからなんですよ。マスメディアの論調のせいで、「動く歩道を通過したことがある」というだけで、金が貰えるようになるから誰でも訴えるんです。今なら、原告団に入っておくだけで補償対象となるかもしれないのですから。

いっそ、和解は放棄した方がいいよ。
国がこれらに応じてしまえば、殆どの場合に原因が異なるにも関わらず、全ての補償をさせられることになる。悪しき前例を作るだけだ。全件裁判で争うべきだ。被害に遭われた方々には申し訳ないが、こうまで扇情的な戦術に出るというのなら、法廷で全件争っていったらいいですよ。
トコトン追及をおやりなさい。闘争に膨大な時間をかけて、徹底的に糾弾していけばいい。


記事の84歳の女性の方は、平均寿命には届いてなかったけれども、フィブリノゲンを投与されなかった人と大差なく生存しておられたようですので、生命予後に重大な影響を与えたようには見受けられません。また、死亡原因ですけれども、MOF(財務省の方ではありませんよ、たとえ財務省が機能不全に近いとしても。笑)ということのようですので、重篤な感染症とかなのかもしれません。悪性腫瘍の末期でも可能性はあるのかもしれませんが、その場合原発巣がどこかというのが問題となるでしょう。肝以外の臓器に原発する腫瘍であれば、C型肝炎だったのでというのはあまり関係がないでしょう。

弁護団の作戦は、リストの全員に早急に通知させる→対象人数をできるだけ増やす→可能な限り問題を大きくする→社会的に注目を集められるようにする→譲歩圧力をかける→できるだけ多く金を取るようにする、ということだな。
「動く歩道を通ったことがある」という理由だけで補償が得られるのだから、今なら金を取るチャンスですぜ、ということです。


マスメディアのいい加減な報道のせいでこうなったも同然なんですよ。
散々ウソの情報を流す報道姿勢のせいで、誤った認識が作られ、真実とは言えないような「~のせいだ!」という主張が何でも通るような「空気」が作られている、ということです。
マスメディアがこの責任を取ることも、謝罪することも、一切ないのです。




こんなところにも

2007年12月11日 17時34分12秒 | 社会全般
また「で」だよ。
しつこいな。これはオレに対する挑戦か?(笑)
《一応解説しておきますと:
本当は自分に向かって撃ってはいないのに、「さてはオレを撃ってきたな」理論。当然、これへの反応は「撃ち返してやるぜ!」(笑)。典型的なイナゴ行動》



<薬害C型肝炎>追加提訴2人が「フィブリン糊」で感染(毎日新聞) - Yahooニュース

(以下に引用)

薬害C型肝炎訴訟で11月30日に追加提訴した30人のうち2人が、血液製剤フィブリノゲンを原料とした手術用接着剤「フィブリン糊(のり)」の使用で感染したと訴えていることが分かった。フィブリン糊による感染者が原告になったのは初めて。

 訴えたのは静岡県内の40代男性と東京都内の70代男性で、いずれも心臓手術で使われたフィブリン糊で感染し、慢性肝炎になったという。

 同製剤は大量出血に点滴で注入されるのが一般的だったが、80年代は他の製剤と混ぜて糊状にし、手術の縫合にも用いられていた。薬事法上の承認を受けた本来の用法ではないが、製造元の旧ミドリ十字(現・田辺三菱製薬)が当時、使用を勧める冊子を医療機関に配布していた。

 同社によると、80年以降のフィブリノゲン推定投与者約28万人のうち約7万9000人がフィブリン糊を使用。感染率は約1.5%で、点滴投与よりも危険性は低いとされる。【清水健二】

=====


ですからね、「フィブリン糊『で』感染した」って、どうやって証明すんの?
毎日新聞記者になるからには大変優秀な人でしょうから、毎日新聞の清水健二記者には立証できるものなのでしょう。

やってみせて。
是非、毎日新聞上に「フィブリン糊で感染しました」って結果を載せてくれ。



ところで、昔って、キットじゃなかったみたいだね。知らんかったよ。

血液凝固系のカスケードで御覧頂いた通り、フィブリノゲンは活性化されたトロンビンの存在下(触媒作用)でフィブリン(モノマー)となるので、フィブリノゲンの単独投与では凝固せんわな。
つまり、ここにトロンビンを加えないと止血効果はあまり発揮されない。
トロンビンはどこから持ってくるか知らんけど、別な血液製剤を買わせる、みたいなことになっていたのかもしれんね。この使用法であると、フィブリノゲンとトロンビンの両方が販売できる。

他には、自己血から調整することも可能だね。術前に採血しておけばできそう。こっちの方が安上がりかも。でも、作るのは面倒だな。

昔って、どの程度糊が使われたかは知らないけど、術者の好みもあったんじゃないでしょうか。



ちょっと話が飛ぶけど、一般の方々の中には「止血剤を使います(ました)」みたいな医者の言葉だけを記憶していて、よく判らんのに「自分にフィブリノゲンが使われた」みたいに思い込んでいるケースは多々あると思いますね。

医者が言う言葉って、相手に大まかにしか伝えようがないので、「血がちょっと出てるので、これからフィブリノゲンという血漿タンパクの一種を使います…云々」とか言いませんものね。
血止めとか、止血剤とか、接着剤とか、言った言葉には、様々あるでしょう。フィブリノゲンやフィブリン糊のこともあったかもしれんけど。

接着剤と聞いて、「アロンアルファのことだ」とか思い浮かべる人たちって、あんまりいないでしょう?でも、よくあったんですよ、これが。外科的な治療では、アロンアルファを使うんですよ。本当に接着剤になるの。創が閉じるから、出血も止まるし。普通は医療用のアロンアルファなんて思い浮かばないから、接着剤と聞けば「ああ、フィブリン糊だ、オレは糊を使われたんだー」みたいに心配することになってしまうかもしれない。

止血剤にしても、単なるボスミン注射かもしれないよ。局所的に使うことはよくある。血管内に投与するのでなければ、殆ど問題ないし。血管内投与では、トラネキサム酸とか、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウムとか、色々あるよ。それこそビタミンKそのものかもしれないし。ヘパリン使ってて、そのリバースにプロタミンとか。

自分には何か良くない薬が使われたんだ、という思い込みは相談などでもよく見かける話ではないのかな、と。止血剤とか接着剤とかの言葉を覚えていて、その代表例が問題となっているフィブリノゲンやフィブリン糊で、それだけしか知らないので他の可能性というのが思い浮かばない為に、心配になるのだろうと思う。



肝炎訴訟に関する雑考~10(ちょっと追加)

2007年12月11日 16時41分22秒 | 社会全般
薬害を訴えている方々の怒りとか、悲しみとか、そういう心情があるのは、よく判ります。「同情なんか欲しくない」とか、「自分が感染してないのに何が判るのか」とか、「死の恐怖を知ってるのか」とか、言われてしまうかもしれませんが。けれど、今の方向のまま闘争を続けるのは、救えない患者さんが多くなるだけだ。なので原告団のやり方には反対しているのですよ。

仮に、感情的に訴えて、政治家の誰かを追い込めたとして、「補償せよ」ということが認められるかもしれない。その結果、ごく一部の人たちや、リストの人だけは救済されるかもしれない。だが、C型肝炎の患者さんは、もっと膨大なのですよ。1人500万円を払え、ということになったとして、100人で5億円、1万人で500億円だ。今の製薬会社と国で分担するとしても、果たしてそこまで払えると思いますか?フィブリノゲン製剤投与を受けた人たち全員を一律で救済するのに、20万人が対象であるとしても1兆円にもなってしまうのですよ。到底、払えないでしょう?そんな要求を突きつけているのだという自覚がなければ、どんな難しい要求でも可能かもしれませんが。
こういう闘争みたいなものが、相手の受け入れ難さを増大させ、かえって逆効果だと言ってるのです。

ここで解決可能な方向性を考えるなら、訴訟となった人たちの一部は要求を認め、対象の方々には製薬会社から払うものとし、係争を終わらせるしかないのではないかと思います。これまでかかった医療費の自己負担分などについても、製薬会社が支払うことにすればいいと思います。それ以外のC型肝炎患者の方々についての医療費は、前に書いたように特定疾患治療研究事業の但書部分の変更で、将来に発生する費用を公的負担とすることにするのが望ましいと思います。

製薬会社はそもそも旧ミドリ十字で、今はその会社すら残っていないのに、今の合併後の会社に無理難題を押し付けても解決が遠のくばかりでしょう。もしも患者救済の費用拠出が少なすぎる、というようなことを責めたいのであれば、全国の患者団体とか障害者団体等に毎年いくらかでも寄附を継続させる、などの対応も取りえるのではないかと思います。会社が継続不可能なくらいに負担を求めれば、貰えるものさえ貰えなくなってしまうだけで、誰の利益にもなりません。

原告団が意地でも補償を取り付けたい、ということになれば、あなた方は救われるかもしれないが、結局自分たちさえ良ければいい、というのと実質的には変わらなくなってしまうのですよ。そういう闘争は終わりにして下さい。気持ちの治まりがつかないかもしれませんが、他の大勢の肝炎患者の為と思って、譲歩できる所は譲歩して下さい。

今の自民、民主の肝炎救済案は、「インターフェロン療法」に対する助成だけであって、既に肝硬変や肝ガンに進展している人たちには関係ないのですよ。インターフェロンが無効とか効果が殆ど期待できないタイプのHCVでも、同じく対象から漏れてしまいます。肝炎は一生の付き合いとなってしまうので、さまざまな場面が訪れるし、議員たちがバカの一つ覚えみたいに言う「インターフェロン」に関わる医療ばかりではないのですよ。そういう時にも保障される方が安心できるのではないですか、と言ってるんですよ。和解の救済案から漏れる心配より、将来時点での安心を取るかどうかです。


原告団の中の若い福田さんという方が何故感染したのかは、よく知らなかったのですが、クリスマシン投与が原因である可能性が濃厚のようですね。20代の方の感染機会は相当少ないでしょうから、感染原因まずクリスマシンと思っていいと思います。けれど、これまでの裁判においても、クリスマシンの投与を受けた方々は敗訴であった、ということらしいですね。今の闘争の方向でいけば、フィブリノゲン製剤関連の方々だけが救済されるけれども、クリスマシン投与の方々はほぼ無理でしょう。だからこそ、医療費が免除される政策案の方が有利であると思えます。

この方の状況は詳しく判りませんが、親が肝炎既往がないのに母子感染することはないでしょうし、ご本人が血友病というわけでもないようです。出生時に出血を止める為にクリスマシンを投与するという意味が判りませんけれども、新生児に直接投与であったのなら、それは投与した医師に責任が大きくあるものと思います。クリスマシンは第9因子製剤であり、これを補充したとしても出血が止まるようになるものとも思えないからですね。確かに認可責任は行政にありますし、製薬会社にも供給した責任はありますけれども、そもそもそんな使用を医師が選択しなければ、感染することはなかったと思えます。


血液凝固系のことは、カスケードの話の時に少し触れました。

実際のカスケードはこちら>凝固・線溶系 - Wikipedia

この図にあったように、まさしく段々の滝のように反応が下流に向かっていきます。凝固因子のどれかが欠けてしまうと、反応が完結せず止血し難くなってしまうのです。クリスマシンは不足している第9因子を補う、という意味があります。フィブリノゲンもこうした凝固因子の一つであり、第1因子です。
で、新生児に何故クリスマシンを投与したのか、ということですが、新生児出血症に対する処置ということらしいです。全くの無効とも言えないかもしれませんが、主に「ビタミンK欠乏」に起因する出血であるということであれば、ただ単にビタミンKを補充すれば事足りるはずですよね。血友病のような疾患でないのであれば、敢えて第9因子だけを入れる意味というのはないように思えるからです。

ところで、前の記事で書いたワーファリンですけれども、これは血を固まり難くする薬で、ビタミンK依存性の凝固因子の産生を抑制する働きがあります。ビタミンK依存性の凝固因子は第2、7、9、10因子です(確かに第9因子は含まれるのですが、これ単独補給では疑問でしょう)。つまりワーファリンは血液凝固カスケードのビタミンKに関与する4つの因子を減らすことで、血液凝固が起こり難くなるように作用している、ということです。
逆に、ワーファリンにとってはビタミンKが大敵なのです。折角ワーファリンで凝固因子を出来難くしているのに、ビタミンKが体内に多くなると凝固因子がジャンジャン作られてしまうので、ワーファリンの効果は落ちることになるのです。なので、「あるある報道」じゃありませんが(笑)、納豆をあまりたくさん食べないように、という注意が典型的ですね。食物の中ではビタミンKが多い食べ物は、納豆が王様みたいなので。

話が逸れましたが、新生児にビタミンKを入れずにクリスマシンを投与したのは、ちょっと疑問だということです。しかもクリスマシンは菅直人議員が厚生大臣の時に、HIV問題の時点でウイルス感染性については調べられていたはずなんですよ。それを放置していたのは、当時の菅大臣だ。これも既に書いたんですが。原告団の中で、今のままの方針で訴訟や和解協議をやっていても、救済されることはまず困難だと思いますよ。それは、国の責任とか、製薬会社の責任とか、そういうものを強く求めれば求めるほど、じゃあ救済対象も厳密に区分けしましょう、って話になってしまうもの。薬の責任、薬の承認の責任、これらを追及して、「(感染可能性のある)薬を投与されたこと」に対して損害を求めるというのが、ハードルが高いからだろうと思うのですよ。だから対象は狭くならざるを得ないのです。


先日書いた記事の喩えを用いれば、「動く歩道と通過したことがある人」全員を一律に救え、という条件を出しているのと同じですから、それは困難ですよ。動く歩道を通っただけで、みんな同じ補償を、という主張そのものがおかしいからです。「危険な薬を投与された、どうしてくれる」という訴えを全員に認めることになってしまいますからね。

だって、ある自動車Aがあって、自動車Aの車軸には一部欠陥が判明したら、「自動車Aに乗ってた人たち全員に同じ保障をしてくれ」ということですから。車軸に欠陥があり、それを原因として事故に遭われた方々に対して、お詫びと補償を、というのなら、まだ判りますよ。けれども、「自動車Aを認可し、売っていたことそのものが問題なのだ、だから、自動車Aを買わされた全員を一律救済せよ」ということなのですから。「自動車Aを買わされた、この私の気持ちをどうしてくれる」ということに対して補償するのは、とても難しいのではないかと思います。

私が提案しているのは、今後発生してくるであろう事故等については、個々の負担をしなくてもいいようにしておきましょう、ということです。欠陥があった自動車Aに乗っていた人でも、まだ事故にはあってなくて、損害が明らかになってない人もおられるのですよ。そういう方々は、知らずに過してきたことで、実質的には損害を蒙っているとも言えない場合もあるのです。今の原告団の主張は、「全ての事故の原因が、自動車Aの車軸の欠陥にあった」ということを、自動車Aの全部について要求しているものなんですよ。

自動車Aを買わされた人=フィブリノゲンを投与された人
車軸の欠陥があった人=C型肝炎に感染した人

車軸に欠陥が存在したとしても、事故原因の全てがこれだというわけではないのです。追突されたり、窓ガラスをバットで割られた人は車軸の欠陥とは無関係ですよね?と言っているのです。そういう事故例も全て「自動車Aの欠陥のせいだ!」ということにしてくれ、という主張と同じなのですよ、原告団の主張というのは。これを受け入れることができる人たちはいると思うのでしょうか?マスメディアとかの中にも、政治決着でやってくれ、ってバカなことを言ってる連中がいるが、総理とかの鶴の一声で「事故は全て車軸の欠陥のせいだった」と認め謝罪せよ、と?
万が一、仕方なしにでもこれを認めてしまうと、これ以後でも「我々は勝利した!国が過ちを認め謝罪したんだ!全部欠陥のせいだったんだ!」とか、プロパガンダにされるのがオチなのではないでしょうか。薬害利権の方々が、次のターゲットを探し回って、「今度はこれが薬害だ!」とかセンセーショナルに運動を展開したり、自分たちの懐を肥えさせる為に活動をするのではないかという危惧がありますね。そんな陰謀組織は存在してないのかもしれませんが(笑)。
「欠陥自動車を買わされたんだ、どうしてくれる!」と感情的に凄めば凄むほど、「じゃあ本当に事故原因が車軸の欠陥かどうか検証しましょう」って話になるだけだ。判らないものまで一律に補償せよ、というのがいかに無謀な意見なのか、考えてみるとよいでしょう。

何度も言うようですが、重要なのは、全体に対して多いとは言えない「車軸の欠陥」に起因する事故の補償を完璧なまでに要求することよりも、事故原因が何かは正確に特定できないけれども「事故に遭われた方」への補償体制を作りましょう、という方が、はるかに多くの患者さんを救えることになるんですよ。クリスマシン投与例の患者さんでも、みんなが対象になるんですから。



追加というか、書くか迷ったんですけれども一応ということで。

ちょっとイヤな話をします。
フィブリノゲンを投与された方々は、本当に可哀想ですよ。それはそうです。けれども、薬を投与されたわけでもないのに、感染させられてしまう人々もいるんですよ。誰だと思いますか?

それは医療従事者ですよ。
最も危険性の高いのが、医療従事者なのですよ。

よくある話で、結核で死亡する看護婦さんとかおられるのはご存知でしょうか?始めから結核の患者さんだ、と判明していることもあるし、全く気付かないで過ぎてしまっていることもありますよね。で、運悪く感染させられ、死亡するわけです。これは誰のせいなのでしょうか?

あと、患者さん自身が何かの感染症であっても、それを隠していることもあるんですよ。本人が全く知らないこともありますけど。肝炎の患者さんが、過去に黄疸や肝炎治療をしたことを告げずにいたとして、医療従事者が肝炎となってしまうことも普通にあるんですよ。
検査で判明するようになってからは色々と判るようになりましたけれども、昔は誰がC型肝炎患者なのかなんて全然判らないままに、血を浴びて目の中に入ったり、知らないうちに血液に触れたり、手などに針や器具を刺して怪我をしたり、いつの間にか感染させられていたのですよ。これは現代でも同じく感染する可能性だけは、あるものなのです。

だからといって、医療従事者は感染源であった患者さんのことを恨んで文句を言いに行ったりはしませんよ。相手に損害賠償を求めることもしませんよ。劇症肝炎の症状が出て初めて感染を知り、どうにか助かった、みたいなこともありますけれども、誰からの補償もないですよ。キャリアになってしまっても、文句を言おうなどとは考えないですよ。

ですから、職業属性別では恐らく最も高いのではないかと推測していますけれども、だからといって、誰かを恨んだりはしません。不幸にして感染してしまったら、止むを得なかった、自分に落ち度があったんだろう、というふうに考えると思いますよ。たとえ死んだとしても、何も言うことなく死んでいったんですよ。

肝炎のある患者さんが担当であっても、危険手当とかもらえないし、割増料金にもなってないですよ。そういう中で日々仕事をしており、不幸にして感染してしまった医師や看護婦さんたちは大勢いる、ということです。


誰もそうしたことを省みてくれはしないと思いますけどね。

文句も言わずじっと耐えている人々はいる、ということです。




 『で』

2007年12月10日 20時00分02秒 | 社会全般
朝日新聞風の見出し、ということで(笑)。
大変便利な用語。

こんなのも当然OKなんだよね?

◎マスコミ殺到『で』経営者夫婦を死に追い込む

鳥インフルエンザの感染騒動を発端として、養鶏場経営者夫妻の元に取材陣が押し寄せ、度重なる追及を行い続けた。
本人が拒否しても、追及の手を緩めることはなく、知る権利を盾に取り国民への説明や謝罪などを過剰に求め、その為の会見やインタビューなどで執拗に糾弾した。その直後に夫婦は首を吊って死亡した。

◇◇◇◇


これは実際に死に追いやったにも関わらず、どこのマスコミだって謝罪なんかしてないんじゃないか?
要するにやりたい放題。人の命を奪っておいても、何の責任も取らないし、痛痒も感じないし、改めることもない。人殺しと同じだ。ネットの炎上が怖いって?そんなのマスコミの比じゃないよ。

ならば聞こう。
マスコミがやってることは一体何なのか?ネットで粘着攻撃してたり、情報晒したりしている連中と全く同じだろ。やってることは本質的同じということ。
フルボッコやってるだけなんだよ。


こんなのも書けるな。

◎取材殺到『で』告訴取り下げ

財務省職員が集団強姦した事件で、被害女性は取材殺到で精神的苦痛を訴え、告訴を取り下げた。

◇◇◇◇


因みに、この記事で取り上げた11月14日の産経新聞の記事では次のように書かれていた(yahooのリンクはまだ生きていたので、読むことができます)。

『財務省職員による集団強姦(ごうかん)事件で、東京地検は14日、逮捕された同省主計局主計官付係長(34)と財務事務官(29)を処分保留で釈放した。被害者の女性(33)が示談に応じ、告訴を取り消したことなどを考慮したとしている。
地検によると、2人は容疑を認めているが、事件の発覚を受け、女性の自宅などに取材が殺到。女性が精神的苦痛を訴え、事件とかかわりたくないとの強い意向を示したことなどから処分保留にした。地検は「行政処分の結果などをみて最終的な処分を決めたい」としている。』

内容的には合ってるでしょ?
自宅などに取材が殺到し精神的苦痛となったわけだから。
結果的に取材殺到『で』告訴取り下げさせたんだぞ、マスコミが。
これでいいのか?何故どこからも糾弾の声が出ないのよ?
明らかにオカシイでしょ?

しかも、地検からは起訴の報道は一切出てない。
財務省を懲戒免職になったのに、何で起訴せんのよ?

似たような事件では、バッチリ懲役食らわせているみたいですけど。
河北新報ニュース 東北大、学生らの逮捕続出 法人化以降で最悪

記事の一部を引用すると、

『同大法科大学院3年の男(33)=仙台市青葉区=は10月下旬、酒に酔った女性を乱暴しようとしたとして、準強姦未遂容疑で逮捕、起訴された。
(中略)
歯学部生の男(22)=青葉区=は6月、仙台東署が宮城野区の女性に対する強姦未遂で現行犯逮捕。その後、強制わいせつ致傷罪と強姦致傷罪でも起訴され、懲役5年の判決が確定している。』

より凶悪な集団強姦罪ではない単独犯だろうけど、刑法上の悪さの順位とかは判らん。でも、準強姦未遂罪とか、強制わいせつ致傷+強姦致傷罪とかで、起訴されてるし、懲役刑も確定しとるらしいよ。5年食らってるんだよ?
なのに、何故集団強姦罪の財務省職員は起訴されんの?
おかしいだろ。

参考までに、官報に人事が出るのかと思って、11月26日の事務次官会見で懲戒免職の発表してから、毎日官報を読んでいましたが、今日までの間では全く出ていませんでした。何の為に官報に人事を載せることにしてるわけ?辞めるのは出てるのに、懲戒免職が出ないなんてのはおかしくありませんかね?
毎日見てると感じが掴めるんですけど(笑)、人事は概ね5日後くらいには大体掲載されているんだよね。
懲戒免職は掲載しない、とかの決まりでもあるんか?
官報の意味がないじゃん。これだから民営化対象なんじゃね?


この集団強姦事件の犯人詳報は一切なく、起訴報道も勿論なく、被害女性宅に殺到したマスコミへの非難もなければ、集団強姦の犯人を野放しにすることへの糾弾も全くないのだよ。

オイオイ、マスコミは一体どうしちゃったわけ?
ここで急に報道自粛みたいになってるのって、あまりに不自然だろ?

週刊誌も全然書かないんだよね。
「鬼畜エリート官僚の素顔」
みたいなのを、いつもは書いてるじゃないですか。どうしてこの事件だけは書かないんだよ、犯人のことを。ヘンでしょ?大反響のネタだよ?

警察はわざわざFNN系列に身柄確保(逮捕じゃないのだ)映像を意図的に撮影させて、大々的に報じさせたのに、今度は事件をうやむやにして終わりってか?
東京地検の釈放発表を行った担当検事は誰なんだよ?
名前を出せるよね?広島では検事のフルネームが出てたんだから。

きちんと裁判をやってくれ。
被害女性は出廷しなくてもいい方法だってあるし、検察は起訴できるだろ?
法廷さえ開かれれば、傍聴人の方々が色々と情報を出してくれることでしょう。犯人像についても、どんな生い立ちであったか、どこの出身校か、詳しく判ることでしょう。

何故、裁判ができないのか?
何かがウソとか捏造だというのがバレるからか?(笑)



肝炎訴訟に関する雑考~その9

2007年12月09日 18時29分53秒 | 社会全般
前の記事が長くなったので、分割しました。

今度は「フィブリン糊」ですか。
ターゲットにできそうなものであれば、何でもということですかね。これらの戦略というのは、原告団の人数をできるだけ大勢にして、被害を訴える「強さ」を増すものと思います。弁護団の先生方にも、たくさんの弁護料が入ることになるので、参加者を多くすればするほど効果的ですね。経済原理に適っていますね。

フィブリン糊の調査は行われたであろう、ということをシリーズ中で書いた(その4、5、7)。この感染リスクは、輸血や静注用に比べれば低いであろう、ということも述べた。これは調べたわけではないので、正確な文献的考察もできないが、用量依存性にウイルス感染リスクが高まるというのは一般的な傾向であると思われるので、そこから考えると、感染リスクは低いであろうな、ということである。それと、B型は微量でも感染することはあるが、C型になるとあまりに少ないウイルス量では感染し難いからである。従って、最も感染リスクの低いのがこの「フィブリン糊」であろうと推測される。

しかし、原告団に加わったらしい、との報道があった。まるで駆け込みみたいな感じですわな。被害を訴える側がリスト全員に通知しろ、通知しろ、と再三要求するのは、こうして訴訟に加わる人数を増やすことが目的なのではないかと勘繰らざるを得ない。人数が増えるとマスメディアが騒いでくれるし、同情が集まりやすいので勝利する可能性は高くなる。合目的的な戦術と言えよう。たとえ、そういう意図でないにせよ、結果的にはそういうことになっているだろう。


「フィブリン糊」薬害提訴 手術で感染の2人 ニュース 医療と介護 YOMIURI ONLINE(読売新聞)

(以下に一部引用)

血液製剤フィブリノゲンによる感染で提訴した原告は170人以上いるが、この製剤に別の薬品を加えて作るフィブリン糊の使用による提訴は初めて。「糊」は心臓外科などで、フィブリノゲン使用者の3分の1以上にあたる7万9000人に使われたと推定されているが、被害調査も遅れている。患者は「潜在的な感染者が多数いるはず。早急な調査と救済を」と訴えている。

 訴訟に加わったのは、静岡県内の40歳代と、東京都内の70歳代の男性。11月30日に提訴した。いずれも心臓手術を受けた際に、旧ミドリ十字が発売したフィブリノゲン製剤で作られたフィブリン糊を使っており、現在、慢性肝炎の治療を受けている。

 「糊」による感染者は、厚生労働省が2001年に発売元の旧ミドリ十字を引き継いだウェルファイド社(当時)に、医療機関を通じて調査を求めたが、全国で48・5人(「1人から2人」という回答を1・5人と算定)としか判明しておらず、実際の感染者は1000人以上との推計もある。今回提訴した2人についても、病院が心臓外科のカルテ等を調べておらず、報告された症例数には含まれていない。

 提訴した2人のうち、40歳代の男性は自ら静岡県内の総合病院に問い合わせ、1987年に心臓の手術で血管を縫合する際、止血のため「糊」を使っていたことが手術記録から判明した。

 かつてこの病院に勤務していた医師は「当時、輸血や『糊』を使って心臓手術をした患者の中に、黄だんの症状が出るケースが急に増えた。3分の1はいたように記憶している」という。

 87年は、青森県内の医院で集団感染が確認されるなど、フィブリノゲンによる肝炎が集中発生した時期。この医師は、「輸血用血液の衛生管理が急に悪くなったのが原因かと疑ったが今思うと不自然。『糊』のせいかもしれない。当時、『糊』を使用していた患者は、心臓手術だけでも年間60人から120人はいたと思う」と証言する。だが、同病院によると、カルテの調査などを行っておらず、01年の調査でも感染者数の報告はしていなかった。また、そのカルテ等も今は一部しか残っていないという。

 提訴した70歳代の男性も1年ほど前、長崎県内の総合病院に確認し、84年に心臓の手術で「糊」を使っていたことを知った。病院幹部は、「問い合わせがあるまでフィブリン糊による感染の可能性も知らなかった」と振り返る。この病院でも、01年の調査で「糊」についてのカルテを調べたことを記憶している人はいなかった。

=====


感染者1000人という推計は、恐らく殆どが輸血を含むものであって、非輸血例で「フィブリン糊」単独使用によって感染例があるなら、是非教えて欲しいですね。前の記事に書いたように、「動く歩道」を通ったことは確かであるが、「エスカレーター」も利用していた人たち(ルート②の場合)である、ということ。動く歩道単独(ルート①の場合)だけで感染した例は確認されているか、ということですよ。90年代以降の他社製品での感染例が確認されていないのなら、ほぼ皆無に等しいのではないかと思われる。

しかし、原告団は「加われ」と引っ張り込んだわけだ。「C型肝炎になったのはフィブリン糊のせいなんだよ」とか説得した人でもいたんでしょうか?普通、自分に「フィブリン糊が使われていました」と聞かされたとして、「訴えてやる」と考える人というのは多くはないでしょうからね。

もう少し記事を詳しく見てみましょう。
まず40代男性は87年にフィブリン糊を使用。心臓の血管縫合で用いた、と。20歳代での手術ですので、珍しいですよね。先天性疾患でもあったとかでしょうか?それはいいとして、かなりの確率で術中に輸血しているでしょうね。この当時にはHCVは検査できなかったので、輸血後肝炎の症状が高頻度で見られた時期です。80年代中頃でも1割程度の肝炎症状出現が見られたのではないかと思います。輸血が何単位くらい入れたのか判りませんけれども、感染可能性でいえば「1単位輸血 >>> フィブリン糊」ということになるでしょう。
よく知りませんけれども、縫合部一箇所に用いるフィブリン糊の量なんて、1ml も行かないでしょう。何箇所も血管縫合を行っていたとしても、全部で10ml も使うかどうかです。仮に「フィブリン糊10ml 」の危険性と、「MAP3単位」の危険性との比較となれば、感染可能性が高いのは圧倒的にMAPだろうと思いますよ。


記事中には、かつて勤務していた医師というのが登場しますけれども、この証言をもう一度見てみましょう。

「当時、輸血や『糊』を使って心臓手術をした患者の中に、黄だんの症状が出るケースが急に増えた。3分の1はいたように記憶している。」

輸血や『糊』、と併せて言ってますけれども、いかにも「フィブリン糊を使うことで、黄疸の症状が出たケースが急増した」という印象付けを行おうとしている、ということですね。何故そのような証言をするのか判りかねますが、思い込みの一つではないか、或いはこの医師という方が何かの党派に関わる方なのかもしれない、などと裏読みをしてしまいますね。
この頃にはB型肝炎のスクリーニングは行われており、術前検査でもチェックはできていたでしょう。なのでB型肝炎についての輸血後肝炎の可能性は数%程度まで低下していたであろうから、約3分の1という数は多すぎですね。では本当にフィブリン糊を使用したから、ということなのでしょうか?

ここで注目すべき点があります。「黄疸の症状が出た」ということなんですよ。
まあ普通に考えると、肝炎に感染したのであれば黄疸が出ても不思議じゃない。そうですね、確かに。しかし、肝炎というのは色んな特徴があって、急性肝炎の場合には黄疸が出ますけれども、C型肝炎では黄疸の症状が出るというのはあまり多くないはずなんですよね。それ故に、輸血や血液製剤等の使用や、その他刺青とかピアスとかモロモロの理由で感染してしまったとしても、本人は勿論周囲から見ても気付かないのですね。そして知らないうちに病状は進むことがある、というのが特徴なのですから。つまり、不顕性で経過する例が大変多い、ということなのです。だからこそ、血液製剤を投与された方々で「黄疸などの肝炎症状が出現」した報告例は、リストになっている僅か400例超しかなく、実際に薬剤が使用された例数に比べると圧倒的に少ないのですからね。

よって、黄疸がよく出た、ということになれば、術後にC型肝炎となっていたことは中にはあったかもしれないが、黄疸症状がこれほど多く出るというのは別な理由かもしれない、と考えることはできますね。例えば麻酔薬剤などが変更になったりして、肝毒性の程度が変わってしまうことで、薬剤性黄疸が出現した、ということは考えられます。この頃であれば、ハロセンが結構用いられたりしていたかもしれず、そういう影響というのはあるかもしれない。或いは、術創の感染コントロールとして抗生物質の種類が変わったとか、そういう薬剤の採用状況によって黄疸の出現頻度は変わり得るでしょう。

あとは、対象患者の年代的な話、ということもあるかもしれません。心臓手術で多かったのは当時で40代後半~60代前半程度だったのではないのかな、と。最も多いと思われるのは、冠動脈疾患でのバイパス術だったのではないでしょうか。となると、病気の特徴から見て、その年代くらいの方々が多く手術を受けていたのではないのかな、と。87年頃に50歳の方で1937年生まれ、60歳だと1927年生まれということになります。この年代の方々は1950年代には20歳前後の若年世代方々であり、当時には薬物濫用が問題となった時期なのですよ。この年代におけるC型肝炎のキャリア率は、他の年代よりも多いのです。それらの方々のうち、術前から既に「C型肝炎だった」けれども、検査方法がなかったので判らなかった、ということは十分考えられるでありましょう。B型肝炎ではない、というだけの人の中にも、実はC型肝炎だった、という方は大勢おられますからね。術前に既に感染している場合には、大きな手術によって身体への侵襲が肝機能障害を惹起して、術後に黄疸が出現することは十分考えられるでありましょう。C型肝炎キャリアの最も多い年代の方々が手術対象だったので、黄疸に遭遇する確率は高くなった、と考えることは可能でありましょう。

それにしても、ざっと100人手術すると30人に黄疸が出る、ということですから、この病院では余りに多いですよね。
フィブリン糊を全例に用いていて、なおかつ原因が全てフィブリン糊であるとすれば、全国各地の使用例のうち大体3割近くが黄疸出現となり、不顕性感染例を含めると、最低でも半分程度以上は全員がC型肝炎に感染することになります。恐るべき高頻度で「C型肝炎になる」ということですね。フィブリン糊やフィブリノゲン製剤を使用していない、輸血例だけで見てもそんなに黄疸は出現しませんので、血液よりも5倍以上の確率で感染することになりますかね。
そんなことが起こるのは、フィブリン糊の製造に用いられた血液は相当部分がC型肝炎キャリアからの供血であり、製品の殆ど半分以上が汚染されており、血液そのもの以上に感染力がある、ということですかね。だとすると、使用した医療機関のほぼ全部において黄疸出現が確認され、87年の青森で起こった連続感染例どころの騒ぎではないでしょうね。


まあ、いずれにせよ、この医師の証言というものをよく見ると、黄疸出現例があまりに多すぎであり、C型肝炎の特徴とは若干ズレがあるように思われます。それらの原因として、「フィブリン糊」を第一番に疑う、という医師の感覚というのも解せませんね。どうみても感染リスクの高いのは輸血ではないかと思いますけど。当時HCV抗体検査ができなかったのですから、唯一肝炎感染を知るのは「黄疸」などの肝炎症状出現例だけです。術後肝炎の症状が出て初めて「ああ、肝炎だな」と判るだけなのですよね。となると、フィブリン糊だけではなくフィブリノゲン製剤も含めて、黄疸出現例がそこまで多くないのですから、証言した医師の病院での多さは別な要因である可能性が高いと思いますね。原告団に加わった方々には、「何にも症状が出なかった」人たちが大勢おられるのではないですか?02年以降に血液検査をして初めて知った、という方々もおられますでしょう?つまり、そのこと自体が、C型肝炎の方々の黄疸出現の少なさを物語っているのではないでしょうか?ということなんですよ。


もう一例の70代の方ですけれども、どうやら手術の予後は良かったようで、男性の平均寿命くらいまでは生存できたと思われます。フィブリン糊を用いられたからといって、寿命が平均よりも短くなることはなかった、ということなのではないでしょうか。グラフト部の血栓が飛んで致死的となることもなく、再狭窄で再手術にもならなかったのであれば、割と良かったのではないでしょうか。全然状況は判りませんけれども。抗凝固療法も長年続けてきて、長期生存例となっておられる様子ですので、日本の医療水準がそれなりの結果を出しているのだな、と思いました。ワーファリンとか使ってたりするかも、と思ったもので。ああ、この薬も黄疸の副作用はありますね。参考までに。


日本のマスメディアは、何とでも好きなことが書けるようで、羨ましい限りです。先日のガン患者にモルヒネ投与の話も、20年くらい前から判っていた話でしょうに。何で昔の時点から言わないんですかね?後出しジャンケンはいつも有利だからですか?合成アルカロイドだって色々とあるし、天然もの(笑)なら紀元前数千年前からあるでしょう。麻薬なんて昔からのものであって、今に始まったことなんかじゃないんですよ。

マスメディアやジャーナリストとかが、何かを判ったような気になって言うんですけれども、その中の誰1人として責任なんて取らんでしょう。バブル期頃には、コンチンとかあったし、モルヒネだけじゃなくケタミンも昔からあるじゃないの。
多分、ペイン・コントロールそのものが難しいものなんですよ。特に、ガン患者になればもっと困難だろうし、終末期になれば更に難しいのだろうと思う。それをただの素人連中が、麻薬を使えばいいじゃん、みたいに簡単に言うのもどうかと思うのですよ。だったら、もっと昔から麻薬緩和とか、運動をやってりゃ良かったじゃないか。ケタミンごときで死亡するとかヤク中になるくらいで薬事法改正すんな、とか反対すりゃ良かったんじゃないか。
そもそもガンは昔からあるし、昔のガンだって今と同じく痛いし、麻薬なんて昔からあるのも判ってたでしょう?今と何が違うっていうのでしょうか?何にも変わってなんかいないんですって。

こうした軽々しい論調の一方で、落ち着いて順に考えれば判りそうなことについてでさえ、「命を軽視するな、薬害のせいだ、薬が原因なのは明らかだ」とか、散々騒いでいるだけじゃないの。
タミフルのせいだ、リレンザのせいだ、フィブリノゲンのせいだ、フィブリン糊のせいだ、リタリンのせいだ、結局どれでも同じなんだよ。薬剤が原因かどうかも判らんのに、何が問題があれば、使うな、と。その一方では、もっと簡単に使えるようにしろ、と。どっちなんだよ。

裁判官と一緒。
ニトロをもっと使えば狭心症発作は起きなかった、だからもっと使っとけ、とか言うのだよ。
でも別な薬の場合では、常用量内ではあったが必要最小限にはなっていなかったから過失、とも言うのだよ。
じゃあ一体どうしろと?
最適量を算出できんのか?ならば、やってみ。
必要最小限の量って、「どんだけ~」。教えてくれや。
薬を使わなかったら、「患者が飲みやすい環境になってなかったので義務違反」って、どういうこと?

急患のたらい回し問題も同じさ。
とりあえず引き受けて診ようと思ったら、
・危険なのに1人でやったので逮捕・刑事裁判(福島産科死亡事件)
・できないのに引き受けた(バイト当直医が挿管できないので過失)
・次の転送先を探した時間かかり告訴(奈良県産科事件)
・転送までの時間が長かったので過失認定(加古川事件)
とか、刑事・民事責任を取らされることになるのですよ。
下手に診ない方がまだマシだ。
もし逮捕されたりすれば、病院は閉院となったりするかもしれんからね。悪い噂は(病人じゃなくても)「命取り」なんですよ。こういう状況は報道とか司法からのバッシングや患者権利団体とかの活動とか弁護士営業活動の結果、こうなったということなのではないでしょうか。

今はできない、とか、自分にはできそうにないから、と断ったら、「医者なのにできんのかー!それでも医者か!」とか。
専門が違いますから、という話もあるけど、専門外で診断がついてなかったり不正確だったりしようものなら、「頭蓋内出血が判らんかったのかー!それでも医者か!」とか。とことん「無限責任」ループからは逃れられんのですよ(笑)。
どこまでも注意義務は発生しており、医師の能力が神の領域まで高められた幻のスーパードクターでなければできんのですよ。
そんな責め苦を負うくらいなら、やらない方がマシだってことかな、と。

完璧を求めるのであれば、そういうシステムにしといて頂戴、って話。
確実に捌けるような体制を組んで、遠くまで行かなければならないとしても、行き先固定とかで受け入れ側には常に空きのある体制としておかないと無理だね、とか。施設もマンパワーも無限じゃないからね。できる人たちを常に配備しておける体制を作ればいいだけ。


最後は殆ど文句みたいな話で大きく逸れてしまいましたが、要するに「フィブリン糊」で原告団に参加というのは、疑問点が多いな、ということ。当時の病院医師の話としても、合点のいかない部分は多くあるね、と。
ひょっとして、訴えれば保障対象になるかもしれないから、ということなのではないか、というのが下衆の勘繰りです。



肝炎訴訟に関する雑考~その8

2007年12月09日 14時16分24秒 | 社会全般
まず、これまでの記事をまとめておきます。

肝炎訴訟に関する雑考~1

肝炎訴訟に関する雑考~2

肝炎訴訟に関する雑考~3(追記あり)

肝炎訴訟に関する雑考~4

肝炎訴訟に関する雑考~5

肝炎訴訟に関する雑考~6

肝炎訴訟に関する雑考~7(追記あり)

B型肝炎訴訟最高裁判決について~精度に疑問あり(一部修正)

B型肝炎訴訟最高裁判決について~集団予防接種は感染を拡大したか?


その後、最高裁判決について、法学関係者の方々とか医療訴訟専門の法曹とか、何かの検討なんかを行ったのですか?評釈は上記参考記事中にもありましたけれども、最高裁判決についての疑義について取り上げたものはなかったと思います。そうであれば、もう一度最高裁判決が言うように「高度の蓋然性」でもって、水平感染の最大要因が集団予防接種による感染なのであって、その他要因については一般論に過ぎず無視できる程度に影響が小さく、B型肝炎感染は母子感染以外では「集団予防接種によるものと推定できる」ということが本当なのかどうかを確かめるべきなのではありませんか?それもできない上に、判決だけ参考にされたり、他の判決文に引用されたりして定着してしまえば、取り返しがつかないでしょう。

母子感染の対策が取られる86年以前からキャリア率(世代人口に占める割合)が減少していったのは、最高裁の考えたストーリーでは不可能だ。簡単な数字(人数みたいなものと思って下さい)で示せば、次のようになる。
(全くの架空の数字ですので。あくまで考えやすくするためだけのものです)

◇昔           ◇後年
母子感染 50      母子感染 50
水平感染 30      水平感染 10
               (減少分 20)

母子感染は効果的対策は取られていなかったので、ほぼ100%で感染が成立しキャリアとなるのであるなら減少には寄与しない。従って、母子感染以外の水平感染の数が減少したということだ。水平感染のうちどれが、というのは判らないけれども減少したんですよ。集団予防接種によって、水平感染の機会は増加し感染確率が上昇するかもしれないと言えるが、その増加分が1とか2程度の影響であるなら、その他要因による減少分の効果の方が大きい(=集団予防接種によるキャリア増加分を大きく上回って減少させる)ので時代経過と伴にキャリアが減少していくのは整合的となる。つまり、過去のある時点では、集団予防接種の感染確率よりもはるかに大きい影響力を持つ何らかの要因(複数かもしれない)が存在していた、ということになる。その要因とは、栄養状態改善や衛生環境整備や覚醒剤取締強化や輸血や消毒方法の発達などかもしれないが、誰にも正確には判らない。いずれであったか、ということは立証できないけれども、母子感染の減少が殆どないのに日本全体でのキャリア率が減少するということは、水平感染の可能性が減ったということしかないのである。母子感染の可能性が減少することは想定し難いからである。

しかし、最高裁判決では集団予防接種以外の要因については、「一般論に過ぎない」と退けているのである。無視できるほど影響が小さい、感染可能性も無視できる、ということで片付けているのである。これが高度の蓋然性と呼べるのであろうか。

母子感染の予防措置が取られるようになってからは、最も大きな感染要因となっていたであろう母子感染が大幅に減少することになったので、キャリア率は減少したであろう。その効果が大きかったのは、水平感染がその前までの時点でかなり減少していたからだ。故に、近年までの期間ではキャリア率は減少の一途を辿ることになった、と考えるのが普通だろうと思うが。

HIV感染者のように元々存在が極めて少ないのであれば、母子感染がほぼないにも関わらず、水平感染だけで感染は拡大していくし、集団予防接種で感染が拡散するという可能性は殆どゼロに等しいのに(最高裁判決で言うところの一般論であって、その影響は無視できるほどに小さい、ということ)、感染者は増加しているではありませんか。非血友病患者において、そうなのですよ。血液製剤を用いたわけでもなく、輸血を受けたわけでもなく、同性愛者ではない人であっても現実に「感染している」のですよ。そういう感染可能性を否定できる裁判所というのが、信じられない、と言ってるんですよ。それを肯定している人たちも同じだ、ということです。


結局のところ、法学専門家たちや法曹実務家たちが科学的応用力を発揮して考えることなんて、誰もやってないのではありませんか?最高裁判決に対して法曹の中で異議を唱えた方がおられましたか?評釈ではなくても、新聞記事とか雑誌とかの何か論評みたいな形で疑問の意見を出した方がおられたのですか?法曹とか法学関係者が何万人おられるかは知りませんが、そのうちの誰1人として意見を言わなかったのであれば、司法への信頼性が揺らぐと言っているのですよ。判決もダメ、評価する人たちもダメ、ということである時、国民はどうしたらいいんですかね。評釈や批判があるから、判決の評価はできている、信頼性もある、なんてのは、全くの幻想に過ぎないのですよ。たとえ間違いを含むものであっても、権威を持つものが勝つ。そういうことですか。なるほど。

最高裁判決はひっくり返せないことは理解できますよ。一度出してしまった結論を取り下げるわけにもいかず、間違いでした、と最高裁判事たちが認めることもできないでしょう。それはしょうがないですよ。しかし、判決文に対して吟味し、もっと正しく考えられたのではないか、という研究を行うことにこそ意味があるのですよ。信頼醸成の方法は、最高裁判決に誤りが含まれないか、含まれるならどのような答えであったなら良かったか、どうすればそこに辿り着けるようになるか、そういうことを「社会に対して明らかにすること」だけですよ。次の裁判で考える人たちの役に立つようになるじゃありませんか。それを唯一実行できるのは、法学の専門家、法曹という「同業者」の人たちだけなんですって。匿名の卑怯者であるオメガ級ブロガーなんかではありません。それとも最高裁判決には全員ひれ伏すことしかできないのですか?

だから何度も言ってるのですよ。たった一度の手術で良くない結果を招いてしまうことは、完全には防げないのだ、って。判決だって、一度出してしまえば元には戻せないのですよ。不可逆的なものなのですよ。だからこそ、次からどうしたらよいかを考えることが重要なのであって、失敗したこととか失敗した人に個人的責任を問うことではないのです。そういう考え方を身に付けることが、法曹の中にまだできていないのです。無批判で受け入れるという、裁判所の過誤を正すシステムが全く機能しない状態なんですよ。



今度はもうちょっと違う例で書いてみます。

駅から店に行く道があるとする。道の途中には、動く歩道やエスカレーターがあるとする。店には、動く歩道を通り、その後エスカレーターで上がって店に行ってもよいし、動く歩道だけ通過して、エスカレーターは利用せず店に行くこともできる。更に、動く歩道を利用せずエスカレーターだけ使って店に行くこともできる。

駅を出発すると、
 ①動く歩道 → 店
 ②動く歩道 → エスカレーター → 店
 ③エスカレーター → 店
という行き方がある、ということです。

ここで、動く歩道とエスカレーターの手すりには偶然できた傷があって、表面がギザギザしている部分がほんの一部にあるとしよう。これらの利用者の中には、このギザギザで腕に怪我をして傷跡が残るものとする。全部が同じ傷跡で、怪我したかどうかは本人には気付くことができないものとする。でも、手すりはグルグル回っているので、必ずしもそのギザギザ部分に触れるかどうかは判らない。なので、誰がいつ怪我をするのかは予期不能であるとする。

こうした条件があった場合、駅から店に行った人たちが大勢いて、腕に「傷跡」がある人たちが存在すると、その傷跡は「動く歩道のギザギザが原因であった」と言えるか、ということです。薬害肝炎訴訟の問題というのは、これと同じなんですよ。

動く歩道を利用したことがある人=フィブリノゲン製剤を投与された人
傷跡=HCV(+)

と考えて頂ければ、いいのではないかな、と。


マスメディアとかも含めて、「動く歩道にギザギザがあったせいだ」と主張するんですね。腕に傷を受けたのは、動く歩道を通ったからだ、と被害者の方々も言うわけです。
でも、傷跡のある人たちを大勢集めてくると、全員がルート①というわけではないんですよ。③の人たちもたくさんいるわけです。エスカレーターを利用したのであれば、動く歩道で怪我をしたのかエスカレーターで怪我をしたのかを判定するのは、とても難しいですよね。主張として、動く歩道のせいだ、というのは、本当に言えるんですか?ということです。多くの人たちは、みんな揃いも揃って「動く歩道が悪いんだ、ギザギザがあったせいだ」と強硬に主張しているんですよ。

エスカレーター=輸血としましょう。
フィブリノゲン製剤の感染リスクと輸血を比較するなら恐らく輸血の方がはるかに危険ということで、感染の危険性で言えば

 輸血>フィブリノゲン製剤

となるでしょう。
エスカレーターと動く歩道で比較すると、同じく

 エスカレーター>動く歩道

ということです。動く歩道を利用した人たちよりも、ずっと多くのエスカレーター利用者で傷跡があるのであれば、「動く歩道が原因だ」とか言いますかね?どうして「動く歩道だけじゃなく、エスカレーターにも乗りましたよね?ならば、エスカレーターで怪我をしたかもしれないですよね」と誰も聞かないんでしょうか?本当に動く歩道で怪我をしたんでしょうか?

もっと厳密に言えば、傷跡の原因には動く歩道やエスカレーター以外にもたくさんあって、親子喧嘩、兄弟喧嘩、夫婦喧嘩、自転車転倒、交通事故、鉄棒、みたいに、要因がいくつも存在しているんですよ。個々に調べると動く歩道よりも少ないものもあるかもしれないけれど、動く歩道を利用した人の中にはそこで傷がつかなくて自転車転倒で傷跡になっている人もいるかもしれないんですよ。普通に考えれば、動く歩道を通りました、という事実だけで、全員が「動く歩道のギザギザのせいで怪我をしたんだ」という主張は難しいと考えるはずなのです。

ところが、エスカレーターのせいでもなく、自転車転倒でもなく、喧嘩でもなく、鉄棒でもなく、「動く歩道が原因だ」と強硬に主張する方々が大勢おられ、マスメディアも全部がそれに賛成しているんですよ。おかしいでしょ。動く歩道を通過した人で傷跡のある人には全員に無条件で保障しろ、ということを求めているわけですね。

本当は、動く歩道を通過する以前から傷跡があったのでは?
本当は、エスカレーターで怪我をしたのでは?
本当は、喧嘩したことがあるんじゃないですか?

こういうことが、一体どうやって判るんでしょうか。


動く歩道を通過した人たち全部を調べて、全員に通知しろ、とか、かなり難しい話ですよね。
腕に傷跡のある人のリストがあって、全部通知をしろ、と言うのも、誰が何の責任でやるんですか?エスカレーターで怪我をしたかもしれないのに、動く歩道の人に責任があるということですか?本当は親子喧嘩が原因かもしれないのに、全て面倒を見ろと?要するに、動く歩道を通ったことがあって腕に傷跡のある人たちは、全部「動く歩道が原因だ」という結論に押し込めて、取れるものは取る、ということなんですね?

肝炎が判明した患者さんにフィブリノゲン投与を通知しなかったことは、国の責任なんですか?製薬会社が悪いからでしょうか?動く歩道を通過したことを本人が知らないことが多いのは判りますよ。けれど、傷跡の原因を正確に知る術がないのに、「あなたは過去に動く歩道を通過しました」ということを聞かされたとして、どうだと言うのでしょうか?過去に動く歩道を通ったことを知ると、途端に「動く歩道のせいだ!」と主張できるようになるからなのでしょうか?

根本的には、投与責任も説明責任も医療機関にあるでしょう。特に、87年に集団感染が明らかとなって以降は、フィブリノゲンを使う医師に多くの責任があるのですよ。何も、02年時点の役人が書類を放置していたからといって、90年前後の肝炎発症に繋がったわけではないのですよ。役人の無能は過去に遡れないですからね。07年現在の役人に罵倒してみても、80年代の感染を防ぐことなどできないし、病状が良くなるわけでもない。慢性経過例で既に20年近く経つのであれば、今通知をしてもしなくても予後は殆ど変わらないのかもしれないし。

現実には動く歩道で怪我をした人たちは、割合としてはあまり多くはないだろう。元々傷跡があったか、エスカレーターで怪我をした人の方が断然多かっただろう。朝日新聞風に言えば、通過したことがあるだけで、「動く歩道『で』怪我」と書くということ。原因が判らないにも関わらず、全てを「動く歩道が原因だ」と断言するのだ。これは薬害被害を訴える方々とも共通であり、新聞記者をはじめとするマスメディアの人も、裁判官でも、大体同じなのだ。C型肝炎患者が潜在的に300万人くらいはいるだろう、ということだとして、フィブリノゲン投与を受けた患者はそのうちの1割以下でしかない。投与した全例で100%の確率で感染したとしても、30万人にも達しない。では、他の方々は一体どのようにして感染したのか?その人たちは、フィブリノゲンを投与されずとも感染しているのですからね。

腕に傷跡があっても、動く歩道を通ってない人たちの方が圧倒的に多いのですよ。これで本当に「動く歩道のせいだ」と言い切れると思いますか?まあ、自信のある方々がマスメディアなどにも大勢いるでしょう。是非お聞かせ頂きたいものです。

科学リテラシーだの、科学的応用力だの、大事なんでしょ?
ゆとり教育によって教育水準低下を嘆くマスメディアなのですから、自分たちのリテラシーだか応用力だかを発揮してごらんなさい。大人たちの能力を実証してみて下さいよ。