昨日の「目くらましか?下衆の勘繰り」というつぶやきで、カルロス・ゴーンの突然の逮捕ニュースは「スピン」ではとの声を集めてたが、小説家の中沢けいは、自身のFaceBookで、こんな見立てをしていた。
日産は特捜と司法取引でゴーンを追い落とし。朝日新聞は逮捕の様子を空港で待ち構えてスクープ。号外発行。日産社長はテレビ朝日のニュースステーションの始る時間に記者会見。これでテレビは当分、ゴーン一色になる。労使関係の不満もゴーン批難に向く。スクープが読売じゃないところまで手際良い。 なんだかなあ。三位一体って言葉が浮かぶんですけど。 今の国会に提出された「原子力損害賠償法改正案」はすっかりかげが薄くなったっじゃ。原発事故の莫大な損害を誰が(国か企業か)負担を負うのか、日被害者救済のための資金確保を決める法律。ゴーン・ショックのかげですんなりと成立しちゃいそう。 「原子力損害賠償法改正案」をすんなり通したい人がいて、ゴーンを追い落としたい人がいて、公的なものの私物化を取り締まりたい人がいて、報道の存在感を示したい人がいて、みんなの利害が一致しましたみたいなお話かしら。 |
単なる「スピン」だけではなく、陰でうごめく役者が複数存在し、時間かけて用意周到の結果の「三位一体」だったのか、と少々うなってしまった。
話は日本国内だけの問題ではなく、ゴーンがCEOを務めているルノーの筆頭株主はフランス政府なので、今後は日仏間の問題に発展しそうである。
それにも拘わらず大衆の心をわしづかみするスポーツ紙は目の付け所が違うようだ。フランス政府が日産をルノーに合併させようと動き始めたのは前政権の時。当時の経済相が主導した。その経済相は今のマクロン大統領。で、今年春に「日産がルノーに吸収される」「日産(と三菱)をフランスに売り渡すのか」といった記事が急増。日産がゴーン容疑者の不正調査を始めた時期とぴったり。 https://t.co/y2ieWOFyPe
— 木村岳史(東葛人) (@toukatsujin) 2018年11月19日
スポーツ紙は面白ければそれで良しのメディアなので大目に見るが、なんで日産の川口均専務執行役員が、20日午前、首相官邸を訪れ、ゴーン会長逮捕をめぐる一連の経緯について、菅官房長官に報告したのだろう。各社ゴーン問題にふれる中、スポニチがゴーンの通った焼き鳥屋に取材してるの流石やと思いました pic.twitter.com/CWOPAEX0Jd
— yasu (@Yasuya_su) 2018年11月20日
いやいやいや。おかしいでしょ。めちゃくちゃおかしいよこれ。
— ロジ (@logicalplz) 2018年11月20日
なんで日産が首相官邸に謝りに行くんだ?
ちょっと待て。なんだこれ。
謝るとしたら株主、債権者、顧客、従業員、広く世間一般だろ。
というかまだ裁かれてすらない。
なぜに首相官邸に?どうなってんだ?
自動車メーカーの国際的な業務提携は決して珍しいことではないが、メディアの世界でも国際的な提携が盛んなようである。
10月22日には、「ダイヤモンド社と米経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」が提携」という記事が出ていた。

そしてさっそく、WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」よりこんな興味深い記事が配信されていた。
「ゴーン失脚、3社連合崩壊シナリオに政治的思惑も」
・・・前略・・・ 一つ際立つ疑問がある。なぜ日産ではなくゴーン氏が報酬の報告に責任を負うのであろうか。通常であれば、不正確な有価証券報告書に責任があるのは企業とその監査会社であって、従業員ではない。ゴーン氏が日産の会計部門全体を欺いたのだろうか。日産によると、この奇妙な話は内部告発者によって明るみに出た。 それは本当かもしれないが、国家の政治が絡んでいなかったとは考えにくい。日産とルノーは、互いに相手から買収されることを恐れている。ルノーが日産の株式37%を取得した1999年、日産は破綻寸前だった。ルノーはその後、持ち株比率を43%に高めている。日産は今では規模が拡大し、収益も改善している。かつて救世主とみられた人物を排除するのは、日産が犠牲を差し出して解放されようとする贖罪(しょくざい)の最終段階なのかもしれない。 2016年に三菱自動車をアライアンスに加え、ゴーン氏はここ2~3年、自ら主導した複雑な株式の持ち合いやコスト削減計画による結束を、独自の社員、事業目標、プロジェクトを持つ企業体へと昇華させることに注力してきた。このため、3社が完全統合に向けて進んでいるといううわさがしばしば浮上した。 かねて大きな障害と見られていたのはフランス政府がルノー株15%を保有していることで、日産は神経を尖(とが)らせていた。フランスでは昨年、改革派のエマニュエル・マクロン大統領が選出され、政府が持ち株を売却して合併が進むとの期待が再び膨らんだ。そうした期待はもともと非現実的に思えるものではあったが、意外なのは今回それを頓挫させたのが日本側だったということだ。 ゴーン氏が問題に見舞われた今、同氏が常々語っていたように、アライアンスの構造が本当に「不可逆的」なのかが試される。連合各社は技術共有に伴うコスト削減努力を続けることに財務面で関心を寄せているかもしれないが、自動車業界では長らく、政治的な関心が財務上の関心に勝ってきたという現実がある。 ゴーン氏は3社連合こそ世界トップの自動車メーカーだと強調していた。連合の乗用車販売台数は昨年、フォルクスワーゲンやトヨタ自動車を上回った。ゴーン氏失脚で投資家が直面するリスクとは、前例のない技術革新によってかつてないほど規模が必要とされるこの時代に、日産と三菱が小規模な大衆車メーカーに逆戻りすることだ。 |
最後に、東京新聞「筆洗」から、印象に残った言葉がこれ。
「日産をV字回復させた人の地位と評判はA字で落ちていく」
「幕末の三舟」と言えば勝海舟とその義弟である山岡鉄舟、そして高橋泥舟がいた。
カルロス・ゴーンには高橋泥舟の語ったといわれている言葉を贈ることにする。
「欲深き人の心と降る雪は積もるにつれて道を忘るる」