年が改まり「今年の抱負」をお互いに披露する若者たちの新年会ならば、少々背伸びした抱負を語っても特に問題にはされない。
年少の子供の場合は突拍子もない目標などを掲げたほうがむしろ大人から歓迎される場合が少なくはない。
これらは一般庶民の場合のことであり、国のトップリーリーダーの場合はその発言には大きな責任が生じることは言うまでもない。
どうやら岸田文雄にはそのような覚悟が希薄であるということが今年も続きそうである。
「歴史の分岐点『戦後残してきた難題に答え出す』 首相が年頭所感」
白鳥浩法政大学大学院教授/現代政治分析 現在、日本の国家像が問われているといってよい。 そうした危機感を、岸田首相は年頭の所感で表現したと解釈しても良い。 これまでの戦後の国際政治の中で、日本は「専守防衛」を国是とする国家であったことはいうまでもない。そうした基本的な外交政策の転換は、そうした首相の危機感の表れであっただろう。しかし、そうした転換について国民の意見を聞く機会は存在しなかった。 さらに経済政策にしても「新しい資本主義」において中心的な「資産所得倍増計画」は、「投資できる人間」と「投資ができない人間」に国民を分断する可能性がある。さらに少子化対策は、防衛増税に対して、二の次でしかないように思われる。 難題に答えを出すのは首相だけではない。もっと国民の声を聞く機会を得てはどうだろう。 |
岸田首相のいう先送りできない問題とは単に、財務省から増税を言い渡されていて、自分が首相でいられるうちに道筋を立てて財務省に良い顔をすることではないのか。自分が都合の良いことだけを先送りできない問題に選ぶのはやめてもらいたい。 先送りできない問題は、政治と金の問題、統一教会の問題、就職氷河期世帯の非正規問題、自民党の年齢制限、比例代表の選挙制度など問題は山積している。 国会で問題のある閣僚が追及を浴びてこれらの議論をする時間が取られているのが問題だ。 岸田首相は重鎮に人事を相談せず、適材適所で閣僚を選ぶべきだろう。自分のやるべきことをやらず、増税には国民は賛成しろでは納得できるものではない。 |
国民にとって身近で喫緊の課題に対してはどうであったのか。
「首相年頭会見 『異次元の少子化対策』と経済好循環、重点政策に」
岸田文雄首相は4日、三重県伊勢市で年頭の記者会見を開き、「覚悟を持って先送りできない問題への挑戦を続ける」と述べた。重点政策として、日本経済の新しい好循環の基盤づくりと「異次元の少子化対策」を挙げた。 経済の好循環をめぐっては、「この30年間、企業収益が伸びても期待されたほどに賃金は伸びず、想定されたトリクルダウンは起きなかった」と述べた。 「新自由主義的発想から脱却し、官と民の新たな連携の下、賃上げと投資という二つの分配を強固に進める」と強調。「成長と分配の好循環の中核である賃上げを実現しなければならない」として、賃金が毎年伸びる構造をつくるとした。今年の春闘で、連合が5%程度の賃上げを求めているとして、インフレ率を超える賃上げを目指すとした。 少子化対策をめぐっては、将来的な子ども予算倍増に向けた大枠を6月の骨太の方針までに提示すると明らかにした。 |
岸田さん、少子化対策になぜ「異次元」なんて珍妙な修飾を付けたのだろう。「異次元」には成功しないイメージしかないのに。
— 毛ば部とる子 (@kaori_sakai) January 4, 2023
■「異次元の少子化対策」を表明するなら実践に向けた検討を分かりやすく進めてほしい。 岸田首相がまず重要視する子育て世代の各種経済支援や教育環境支援、育児環境整備は当面の少子化傾向の加速化を抑え、一定の人口減少傾向の軽減には効果が期待できそうですが、抜本的対策とは言えません。 「異次元」と宣言するなら、これからの若者や結婚適齢者、子育て世代一連の方々が結婚して子どもを産むことで、相当なメリットが得られるような少子化改善に向けた政策を示す必要があります。 例えば子供の育成人数に応じた年金優遇や健康保険負担割合などで優遇措置を図るなど、子育てに貢献した世代が安心して過ごせる思いきった制度改革を検討すべきでは。 どのみちこのままだと日本は人口減で先行きは厳しくなる一方なので、少子化の抜本的対策に向けた異次元的な政策の検討を進める時だと思われます。 ■少子化の問題を、そのことだけを捉えて、付け焼刃の「対策」とやらを行っても、効果はない。社会のあり方そのものから、変革しないと、日本人の数は増えないし、維持するのも難しい。 保守というが、自民党は懐古主義だから、変革など、夢想だにしないだろうが、社会は良くも悪くも変わりつつある。それをリードする政治が必要なのに、日本にはそういう絵を描く政治家がいない。そういう能力を持つ人たちは、政治家などにはならないからだ。 それはそうと、「新しい資本主義」とかいうのは、どこへ行ったのかな。 ■異次元が異次元じゃなく、良くある政策になってる。異次元と言うなら、出産費用全額負担、不妊治療全額負担とかそれぐらいしないと異次元じゃない。少子化問題は、子供が産みたくても身体的問題で産まない人がいます。保険適用もあるかもしれないけど、実質的には不妊治療3割でも高額になることを知って欲しい。産みたくない人にお金配って産ませるとか、そう言う問題じゃない。不妊治療も含めて、産みたい人が産める環境作りが大事なんです。出産費用だって高額になりますし、待機児童問題も未解決。何が異次元なのか知りたいですね。 |
「異次元」とか「あたらしい云々」といった表現を使う政治家は信用してはならぬとかつて誰かさんが賜っていたのだが、GX(グリーントランスフォーメーションなるわけのわからぬ言葉で日本の原発政策を「異次元」の世界に舵を切ってしまったのが国民の声を聴かず、大した検討もしない岸田文雄流なのか?
それとも目に見えぬ誰かの力が影響しているのだろうか。
「岸田首相に『既得権の巣窟』の存続を働きかけた黒幕は一体誰か?」
■既得権の巣窟「原子力ムラ」を存続させるだけの原発政策大転換 岸田首相はなんという愚かな選択をしたのだろう。あわや国を滅ぼしそうになった福島第一原発事故の体験を後世に生かすどころか、老朽原発の運転期間を延長し、次世代革新炉と称する原発を新設しようというのである。 またぞろ新たな“神話”を作り出し、未来に向けてのエネルギー開発を阻害している最大の既得権サークル「原子力ムラ」を存続させるつもりのようだ。 電力会社、原子炉メーカー、ゼネコン、それらをめぐるあまたの取引企業が旧来の儲かる仕組みにしがみつく。国民からの電気料金を源泉とする豊富な資金は、広告料、研究開発費、政治資金としてマスコミ、学者、政治家に流れ、世論を誘導する。その結果、多くの国民が原発なしには電気が不足すると信じ込まされる。崩れかかっていたその岩盤を、カーボンニュートラルの大義名分のもと、再び強化しようとしているのだ。 岸田首相を議長とする「GX(グリーントランスフォーメーション)実行委員会」は、化石燃料中心の経済、社会構造をクリーンエネルギーに移行させるのが目的だが、このほどまとめた基本方針案のうち、「原子力の活用」は、欺瞞に満ちた内容となった。 将来にわたって持続的に原子力を活用するため、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む。 「次世代原発」とは何か。既存原発の次の世代というと、国際的な理解では、使用済核燃料を排出しない「第四世代原発」になる。しかし、「第四世代原発」はまだ研究段階であり、21世紀中の実用化は困難とされている。そうではなくて使用済核燃料を出す既存原発の発展型を指すのであれば、どんなに改良が進もうと、処分場が見つからない問題に立ち至る。現在、使用済み核燃料は各原子力発電所のプールに貯まり続けているが、どう解決するつもりなのか。 現行制度と同様に、運転期間は40年、延長を認める期間は20年との制限を設けた上で、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認めることとする。 原発の運転期間は現行で原則40年、最長60年までとされているが、停止期間分をさらに延長できるとしたのだ。たとえば、再稼働に必要な審査などで10年の停止期間があれば、70年間も稼働できることになる。既存の原子力発電所を老朽化もかえりみず延々と稼働させるための詭弁を編み出したわけである。 GX実行委員会の基本方針案は、12月16日の「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」に資源エネルギー庁が提出した「とりまとめ案」と同じ内容である。 事務局である経産省があらかじめつくった案を、まずこの分科会で審議、分科会長一任の形で“とりまとめ”をし、それをたたき台としてGX実行委員会が非公開の議論で方針案を決定した。 別々の会議とはいえ、どちらも原発推進派の御用学者たちが多数を占める構成である。事実上、意見の言いっぱなしで事務局案を追認する仕組みなのだから、結論は最初から決まっているのも同然だ。 経産省がYouTubeに公開している分科会の動画を見ると、20人の委員のうち、原発の活用にやや慎重な意見を述べたのは2人ほどで、とりまとめを分科会長に一任することに異を唱えた人は誰もいなかった。 一昨年10月に閣議決定した「エネルギー基本計画」では原発を「重要なベースロード電源」としながらも、「可能な限り依存度を低減する」としていた。 これを反故にする理由として、岸田首相は、ロシアのウクライナ侵攻にともなうエネルギー価格の高騰や電力需給の逼迫をあげていたが、実のところは、経産省と財界の描いてきた“原発死守シナリオ”に従っているだけである。 とはいえ、この動きを岸田首相が終始、主導してきたとは言い難い。端的に言うなら、岸田首相の政務秘書官をつとめる嶋田隆氏(元経産事務次官)が、岸田首相をその気にさせた首謀者のようなのだ。 嶋田氏は、原発事故後に東京電力取締役に出向した経歴を持つ折り紙つきの原発推進派だ。原発回帰は安倍元首相ですら実現できなかったことから、「岸田政権のレガシーになる」とたきつけ、古巣の経産省と連携して、段取りを整えたとみられる。 来年の通常国会に関連法の改正案が提出されることになっており、成立すれば、民主党政権が描いた「原発ゼロ」への道筋は完全に断たれる、 これにほくそ笑んでいるのは電力会社や原発関連の企業、独立行政法人、そこに天下りルートを持つ経産省など「原子力ムラ」の住人ばかりであろう。 もともと、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会は、原発依存のエネルギー計画を見直すため民主党政権下で編成された有識者会議だ。福島第一原発の事故後、民主党政権は11都市で討論型の意見聴取会を開き、民意をくみ取ったうえで、「2030年代に原発ゼロ」という目標を掲げた。 原発を無くするという政策をどうしても受け入れられない電力会社、経団連は、自民党政権の復活を渇望し、事実その通りになると、自民党への献金を大幅に増やした。 第二次安倍政権下で2013年3月、分科会の性格を大きく変える出来事があった。 当時の茂木敏充経産大臣がこの分科会のメンバーを25人から15人に減らしたのだ。減らした10人のうち7人が、脱原発か、それに近い考えの持ち主だったため、原発推進派が圧倒的多数を占めることになった。安倍政権は、2013年12月のエネルギー基本計画によって、民主党政権が決めた「原発ゼロ」方針を撤回した。 そこから少しずつ原発復活への歩みを進めてきたのだが、岸田政権が一気に大転換へ舵を切ったといえる。 よく知られている通り、電力会社が原発稼働に躍起になるのは「総括原価方式」というシステムがあるからだ。必要経費に利潤を足して電気料金をはじき出す。 利潤の額は、会社の資産額を「レートベース」とし、それに一定の報酬率をかけて決める。原発の建設費が膨大なのは周知のとおりで、それだけ資産額を押し上げる。加えて使用済みを含む備蓄核燃料なども資産として利潤算定のベースとなる。資産が大きいほど利潤が増えるわけだ。 ところが、原発を廃炉にすることが決まると、たちまちそれは巨額の不良資産となり、廃炉にも膨大な費用がかかるため債務超過の恐れさえ出てくる。 そんな事態にならないようにするため、数多くの政治家が水面下で動いてきた。岸田政権を支えている麻生太郎、甘利明氏はその筆頭格だ。 麻生氏と九州電力の仲は特別だ。麻生太郎氏の父、太賀吉氏は1951年に二つの電力会社が合併して九州電力になったさいの初代会長だ。その縁で、九州財界の大物、第9代九電会長、松尾新吾氏(現相談役)が麻生氏の政治活動を支援してきた。 甘利氏と電力会社の蜜月ぶりもよく知られている。2014年1月27日の朝日新聞は、甘利氏が電力会社を所管する経済産業相に就いた06年以降、各電力会社が世間に分からないよう分担して甘利氏のパーティー券を買い続けていた実態をあばいている。 麻生氏は岸田首相の後ろ盾であり、甘利氏は岸田氏が総裁選で勝利したさいの立役者である。この二人が岸田首相の意思決定にどれほど影響力があるかは、推して知るべしであろう。 考えてみれば、岸田、麻生、甘利氏ともに、世襲議員という既得権者であり、政治家の新陳代謝を阻害してきた張本人たちである。彼らが、経産省という天下り既得権者とつるんで原発復活への号砲を放ったのが今回の決定ということもできるだろう。原発だけではなく、あらゆる分野で既得権の岩盤が新規参入を阻み、国の未来に立ちはだかっている。 |
「覚悟を持って先送りできない問題への挑戦を続ける」対象は決して少子化対策だけではなく、原発から出る使用済核燃料処理問題がある。
ひとたび「2030年代に原発ゼロ」という目標を掲げた場合は、そのための「廃炉処理」を見据えなければならない。
日本における電気事業の運営の円滑化を図るため設立された、電力会社社の事業者団体である「電事連」の実態は原発を所有する電力会社の集まりであるだけではなく原発電を推進するため、ロビイストとして長年に亘って自民党と深い関わりを持ってきたという歴史がある。
「原子力ロビー「電気事業連合会」の力と実態 電力会社幹部は3年間で5600万円を自民党政治団体に献金、「味方作り」を推し進めてきた」
このしがらみから抜け出すには「戦後残してきた」「世襲議員という既得権者」たちを「異次元の発想」で駆逐しなければならない、とオジサンは思う。