新・定年オジサンのつぶやき

残された日々をこの世の矛盾に対して勝手につぶやきます。
孫たちの将来に禍根を残さないよう、よき日本を「取り戻したい」。

イージス・アショア配備撤回はけっして「殿」のご乱心ではなかった

2020年06月17日 12時06分05秒 | 米国事情

『韓非子』の一篇「難」に基づく故事から生まれたこんな話がある。
 
「どんな盾も突き通す矛」と「どんな矛も防ぐ盾」を売っていた楚の男が、客から「その矛でその盾を突いたらどうなるのか」と問われ、返答できなかったという。
 
オリジナルはこんな感じである。
 

楚人に盾と矛とを鬻(ひさ)ぐ者有り。之を誉めて曰く「吾が盾の堅きこと、能く陥すものなきなり。」と。また、その矛を誉めて曰く「わが矛の利きこと、物において陥さざるなきなり。」と。あるひと曰く「子の矛を以て、子の盾を陥さばいかん。」と。その人応ふること能(あた)はざるなり。

 
ここから、「矛盾」という言葉ができたらしいことは、多くの人が知っていることであろう。
 
我々の身近な例としては、日常的に使用しているパソコンの「ウィルス対策」ソフトがある。
 
しかし、これは「すべてのウィルスを退治」できるものではなく、ある新種のウィルスが見つかったら、その中身を解析して新しい駆除ソフトを作ることになる。
 
これは「新型コロナウィルス」に対する「ワクチン」開発と手順は同じである。
 
したがって、「あらゆるウィルスに対抗できるワクチン」は存在しない。
 
国防に関しても、いかなる兵器に対抗できる最強の兵器などはあるはずもなく、相手に合わせながら新兵器を開発するという、まさに軍拡という「いたちごっこ」を行ってきたという歴史がある。 
 
日本の防衛省は、「どこの誰から国を守るのか」という使命がある。
 
明確な敵と戦争状態ならともかく、少なくとも日本は外敵から攻撃を受けたことも海外にでかけ某国を攻撃したこともない。
 
したがって「仮想敵国」を作り戦争ゴッコのシミュレーションを行っているのが今までの防衛庁であった。
 
近年は北朝鮮の三代目のヤンチャが日本に向けてたびたび飛翔体と称するミサイル発射実験に余念がない。
 
今年の4月には、防衛省は、「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」という詳細なレポートを発表していた。
 
その中に、「弾道ミサイルとは」という章では、「有効に対処するには極めて精度の高い迎撃システムが必要。」と強調している。
 
そして様々な飛翔体の経路を図示している。
 
  
  

ところで、昨日は、「我が国には、国と都のトップに2人の嘘つきがいる」との中で、「『陸上イージス、急転直下の転換 政権幹部『殿のご乱心』」という記事と「『けちがつき過ぎた』地上イージス 安全面、高コストで断念」という記事を引用した。
 
その中では、「地上配備型ミサイル迎撃システム『イージス・アショア』」から発射される迎撃ミサイルの一部であるブースターが敷地外に落ちる恐れがあることを明らかにし、米国側と協議を重ねたが、改良に30年間で約4500億円もかかるため、事実上計画は撤回される」ということであった。
さらに、「地上イージスは低い高度のミサイルは探知が難しい。これに対し、北朝鮮はロシア製の高性能弾道ミサイル『イスカンデル』に似たミサイルの開発を進めている。

レーダーに探知されにくい低高度を飛び、着弾の直前で上昇する軌道を描く。 自衛隊関係者は「ロケット砲のように横に飛ぶ軌道だと、レーダーの斜角に入らず探知できない」という、まさに致命的な役立たずな代物ということが明らかになったわけである。
 
国防に関しては他紙をしのぐ情報収集力がありそうな、「政権擁護紙」はこんな記事を飛ばしていた。
 
北の新ミサイル迎撃困難 地上イージス中止、2つの代替案想定
 
   
       

地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画停止を受け、装備の導入自体も白紙化することになれば弾道ミサイル防衛(BMD)構想も見直すことが急務となる。北朝鮮と中国の脅威をにらみ、発射直後の対処や「(発射前の)敵基地攻撃能力も代替案の選択肢」(政府高官)とされ、能力保有の検討が加速する可能性がある。
■技術向上を誇示した北朝鮮
 イージス・アショアは装備の有効性に疑問符がつき始めている。北朝鮮が昨年、通常より低い高度を高速飛行するディプレスト軌道をとり、下降中の終末段階で変則的に上昇した後に落下する可能性のある新型短距離弾道ミサイルを4回にわたり8発撃ち、技術向上を誇示したからだ。
 現行のBMDはイージス艦搭載の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の2段構えで、SM3は大気圏外を飛行している中間段階、PAC3は着弾直前の終末段階で迎撃する。地上配備型のイージス・アショアは海上配備型SM3を補うが、どちらもディプレスト軌道のミサイルを迎撃することは難しい。

 
要するに国内に正式に配備する前に、技術向上した北朝鮮からのディプレスト軌道をとる新型短距離弾道ミサイルの迎撃には全く役立たずということである。
 
元外交官の天木直人は、「イージス撤回の本当の理由はミサイル防衛の限界にある」という見立てをしていた。
 
これを要するに、これまでの迎撃ミサイルでは防ぎきれなくなるおそれが出て来たのだ。
 そこでハタと気が付いたのは、数日前のサウジとイランに関する報道だ。
 その報道は、今年のはじめに、米国とイランの一触即発の危機の中で起きた、何者かによるサウジアラビアへのミサイル攻撃が、実はイランからの攻撃だったことがわかった、という報道だ。
 やはりイランからの攻撃だったことのだ。
 あの時の報道では、ミサイルの軌道が低高度だったため、米国から高い金を払って導入したサウジアラビアの迎撃ミサイルでは防げなかった、と衝撃が走った。
 ミサイル迎撃システムの盲点だと騒がれた。
 いうまでもなく北朝鮮とイランは軍事的に結ばれている関係だ。
 つまり、米国自身が自らの迎撃システムの不備を認め、改良しようとしているのだ。
 これで合点がいく。
 今度の地上イージスの白紙撤回は、河野防衛相の独断ではない。
 安倍首相も了承した上での白紙撤回だ。
 そして、それが、北朝鮮やイランのミサイル攻撃によりよく対応するための米国迎撃システムの改良の必要性からくるものであるから、米国が文句を言ってくるおそれもない。
 すべては米国の安保政策の都合に振りまわされているのだ。

 
「米国側と協議を重ねたが、改良に30年間で約4500億円もかかるため、事実上計画は撤回される」ということではなく、米国が自らイージスアショアの迎撃能力の不備を認めたわけで、日本側からの米国に「白紙撤回」を言ったわけではなかった。
 
昨日は地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」配備計画の停止をめぐり、自民党の国防部会などの合同会議が開かれ、「地上イージス計画停止『承服できない』 自民から怒り噴出」となったが、安倍晋三ですら突然の米国からの通告にはなすすべもなかったということであった。
 
「国民の命と財産を守る」と胸張って散々言い放っていた安倍晋三だったが、実は日本の国防は独自にはできず、米国の言いなりに欠陥装備を買わされていただけであったということが、広く国民に知られることになったのは大きな成果である、とオジサンは思う。

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 我が国には、国と都のトップ... | トップ | 日本沈没を避けるには安倍晋... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

米国事情」カテゴリの最新記事