「前車の轍を踏む」ということわざがある。
文字通りの意味は、「前に行った車のわだちを、あとの車が踏んで行く」ということなのだが、前の人と同じような失敗をあとの人が繰り返すことを指す。
したがって「前車の轍」を踏まないことが、戒めとして学習した成果なはずである。
翻って政治の世界ではその真逆の現象も発生する。
菅義偉前首相は「仕事師内閣」を自称し、重要なポストに実力のある議員を就けた。
特に、河野太郎ワクチン担当相はEUとの交渉でワクチン確保に成果を上げ、1日100万回接種を実現し、第5波収束の原動力となった。
一方の岸田文雄政権の堀内詔子ワクチン担当相は実力ゼロであることは誰が見ても明らかだった。
岸田文雄は、菅義偉が自分より目立つ河野を活躍させ、総裁候補に押し上げてしまったことを反面教師として、自分の地位を脅かすような実力者をワクチン担当にしなかった結果、ワクチン接種の加速化の見通しが立たない状況になっている。
つまり、岸田文雄が菅義偉を反面教師としてやってきたことが、ことごとく裏目に出ているということでろう。
「堀内詔子担当相がちぐはぐ答弁「ワクチンチーム」人員削減知らなかった? 与野党ヤジ応酬で騒然」
堀内詔子ワクチン担当相は9日午前の衆院予算委員会で、堀内氏直轄の「ワクチンチーム」の人員削減について立憲民主党の柚木道義氏からの質疑を受けたが、答弁はかみ合わず、紛糾した。 ワクチンチームは省庁を横断する業務調整や自治体へのワクチン配送、情報発信などを行っているが、各自治体から52人派遣されたリエゾンチームは昨年12月に解散されるなど縮小している。 柚木氏から「リエゾンチームの解散をいつ知ったのか」と問われた堀内氏は「解散したのではなく、13人が職務を果たしている」などとワクチンチームとリエゾンチームを混同したと思われる答弁で解散時期については明言を避けた。 後藤茂之厚労相が助け舟で代弁すると野党側から「今、知ったんじゃないか?」などとヤジが飛び、与党側もヤジで応酬するなど騒然となった。 堀内氏は昨年12月の臨時国会から不安定な答弁を連発し、同席した閣僚からフォローを受けて、しのぐ場面が続いている。 河野太郎前ワクチン担当相はワクチンチームについて5日、自身のツイッターに「私の時と比べてワクチンチームの人数が激減。厚労省が情報を出さない。最終的な決定権がない。都道府県とのリエゾンチームが解散させられた」などと苦言を呈している。 |
まともな答弁を得られなかった立憲民主党の柚木道義はツイッターで怒りを発散していた。
立憲野党も小池都知事も
— 柚木みちよし (@yunoki_m) February 9, 2022
昨年からワクチン3度目接種前倒し要求するも、河野大臣時代あった52名体制のリエゾンチーム(自治体との橋渡し役)が勝手に解散され岸田首相も激怒
第7波対策含め重要で
同じ失敗して
救える命救えなくならないようチーム解散経緯問うも延々と答弁拒否
#火葬でなく検査と医療を pic.twitter.com/EinZQH02Di
私の質問時間40分の半分も使って政府が答弁拒否•妨害して守ろうとして守れなかったのは国民の命だけではない。
— 柚木みちよし (@yunoki_m) February 9, 2022
岸田首相の虚偽答弁
そして河野大臣時代の最重要のワクチンリエゾンチーム解散の大失態
これを認めると
国民の命を守れなかった原因を認める事になるから与党席からずっと嵐のような野次 pic.twitter.com/y6cDO503ZL
改めて動画確認したら堀内ワクチン担当大臣が私の
— 柚木みちよし (@yunoki_m) February 9, 2022
「河野・前大臣時代のリエゾンチーム(自治体との橋渡し)52人が昨年末解散を堀内大臣が知ったのはいつか?(岸田総理は解散知り激怒)」
に答えるまでに何と30分もかけ
妨害。まん防、困窮者支援ナド9項目の予定質問妨害甚だしい!#国会中継 #柚木道義
3回目のワクチン接種率の低さの原因はこのあたりにあったらしいのだが、すでに感染爆発状態になった今頃、1日100万回のワクチン接種を喚いたところで、3回目のワクチン接種を忌避する人が多いということは当然であろう。
ワクチン接種率の低さもさることながら、毎回のように「医療逼迫」が叫ばれ、感染者数の増大に伴い病床数の不足が話題になるのだが、岸田文雄は拙速と言われようが背に腹は代えられないとばかりにこんなことをやり時始めた。
「政府が計1000床の医療施設 東京と大阪で、課題は看護職の確保」
政府が計1000床の医療施設 東京と大阪で、課題は看護職の確保:朝日新聞デジタル https://t.co/EeqvwHf1uS
— ふじみのる (@fujiminoru) February 9, 2022
昨年12月上旬感染者激減の折、第6波に備えるべきと識者盛んに訴えていたが
岸田政権、あの時間を使い備えるべきがまるで出来ていなかった
緒戦の勝利に浮かれた帝国陸海軍の轍を踏む日本人
政府が計1000床の医療施設 東京と大阪で、課題は看護職の確保:朝日新聞デジタル https://t.co/iLOhufKoUd ←中国は1週間ぐらいで病院作ったけなぁ。何を今頃になって。自宅放棄なんでしょ。こういうことは感染が比較的落ち着いていた去年にやっておくべきこと。中抜きと黒塗りしか出来ないアホ。
— machn (@mkon0) February 9, 2022
これを受けて東京都は、「東京都がコロナ臨時医療施設、今月中旬にも660床を確保 妊婦、高齢者の感染増に対応」
となったが、施設やベッド数を物理的に増やしても、 既に都道府県の要請に基づきコロナ病床を確保&そこに看護師を貼り付けて人員体制がパツパツになっている病院からの捻出であるので容易ではない。
「1000床増やす」東京・大阪に臨時医療施設
— 毛ば部とる子 (@kaori_sakai) February 9, 2022
東京都・小池百合子知事:「医療人材の支援をお願いしたい」https://t.co/RoMqdJQElb
⇒遅すぎる。医療人材も全国に感染が広がっている以上、応援を出せるところはそうそうないだろう。 pic.twitter.com/Fw9DRYgpvG
ところで、昨年の衆議院議員選挙前の10月26日、ニッセイ基礎研究所 保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室の三原岳が、
(1)医療資源の集中が不徹底、(2)医療機関の役割分担が不明確――という2つの観点から
「なぜ世界一の病床大国で医療が逼迫するのか-地域医療構想とコロナ対応の比較を試みる」という記事を同研究所のサイトで発表していた。
その一部を紹介しておく。
新型コロナウイルスによる医療提供体制の逼迫を受け、31日投開票の総選挙では各党が医療提供体制の拡充を競って訴えている。今夏の「第5波」における自宅療養の患者の増加とか、今後の感染拡大リスクの可能性を踏まえると、何かしらのテコ入れ策が欠かせないのは間違いない。 しかし、医療資源は有限であり、無尽蔵にベッドを増やすことは難しい。このため、既存の資源を最大限に活用するため、「どう医療提供体制を拡充するか」という方法論だけではなく、「なぜ医療が逼迫するのか」という問いも欠かせない。しかも、人口比で見た日本のベッド数は世界一であり、「なぜ世界一の病床大国で医療が逼迫するのか」という問いが必要になる。 本稿では、その構造的な要因として、(1)医療資源の集中が不徹底、(2)医療機関の役割分担が不明確――という2つの点を挙げる。その上で、平時モードとして進められている「地域医療構想」という医療提供体制改革との対比を試み、相違点と共通点を明らかにし、今後の方向性を模索する。 |
3――医療資源の集中が不徹底 1|「何ちゃって急性期」病床の存在 医療資源集中の不徹底に関する第1の点として、十分に患者を受け入れていない急性期病床の実態がある。具体的には、診療報酬の単価が高く設定されている急性期病院の適用を受けているのに、十分に患者を受け入れていない医療機関が存在する点である。こうした病床は業界で「何ちゃって急性期」「名ばかり急性期」と呼ばれており、後述する「地域医療構想」を進める際、図1の通り、奈良県が可視化した。 この図では、各医療機関が各都道府県に対して現状を報告する「病床機能報告」に基づき、奈良県が2016年時点で集計した数字を示しており、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」は後述する「地域医療構想」で使われている病床の区分である。ここでは急性期に着目して頂きたい。 図1の通り、この時点で急性期の病床数は6,977床だったが、これは医療機関の報告ベースであり、実態を伴っているとは限らない。そこで、奈良県は独自の判断に基づき、「50床当たり手術と救急入院が1日2件以上かどうか」という目安で急性期の実態を可視化し、クリアしている病床を「重症急性期」、目安に達していない病床を「軽症急性期」という形で整理した。その結果、重症急性期は4,300床にとどまり、2,697床は目安をクリアしていなかった。 つまり、急性期を標榜して高い診療報酬を得ているにもかかわらず、目安よりも少ない急性期が約40%に及んでいたことになる。こうした医療機関が新型コロナウイルスに対してどう臨んだのか、もう少し検証を要するが、医療資源が広く薄く分散していることを示す一つの証左と言える。 2|規模が小さい医療機関が林立 医療資源の集中が徹底されていない2番目の構造として、規模が小さい医療機関が林立している点である。今年1月時点における厚生労働省の集計によると、「急性期病棟を有している」と報告している医療機関のうち、公立や公的等は7~8割で「受け入れ可能」と答えていたのに対し、民間は2割程度にとどまっていたため、「民間医療機関が患者を受け入れるべきだ」という批判が強まった。 |
4――医療機関の役割分担が不明確 もう一つの点として、医療機関の役割が不明確な点を指摘できる。一般的に医療の機能は「プライマリ・ケア」と呼ばれる1次医療、高度な医療を提供する2次医療、3次医療に区分され、それぞれの状態に応じて医療を提供すれば、コストを最適化できる。 一例を挙げると、風邪などの日常的な病気であれば、難しい手術に対応する設備・人員を備えた大病院よりも、中小病院や診療所で対応する方が医療資源を節約できる。新型コロナウイルスへの対応でも、図2の通り、症状が改善した患者を重症病床から転院させ、その代わりに中等症や自宅・宿泊療養で悪化した患者を受け入れれば、病床の逼迫は緩和される。 実際、幾つかの好事例が報告6されており、千葉県房総地域や長野県松本市では民間病院が中心となり、公立・公的医療機関と連携している。さらに、大阪府は「入院フォローアップセンター」を2021年1月に創設し、患者の状態に応じて入院先を振り分けていたが、目詰まりに対処するため、後方病院との連携に特化する転院支援組織を新設した。 ただ、日本の医療提供体制では難しい手術に対応する大学病院でさえ外来を担うなど、医療機関の役割が不明確である。しかも、患者が医療機関を自由に選べる「フリーアクセス」の下、患者獲得を巡って普段から競争している。このため、普段から医療機関同士の連携よりも、患者を囲い込むような経営行動が散見され、新型コロナウイルスへの対応では病床の逼迫を引き起こしている側面が強い。 |
5地域医療構想との対比 地域医療構想とは2017年3月までに各都道府県が医療計画の一部として策定し、人口的にボリュームが大きい団塊世代が75歳以上となる2025年に向けて、関係者が協議しつつ、病床削減や在宅医療の普及などを進めることが想定されている政策である7。既述した奈良県の図は地域医療構想を進める一環として公開された。 実は、この改革における論点と、新型コロナウイルス対応のボトルネックは共通している。地域医療構想の制度化に繋がった2013年8月の社会保障制度改革国民会議報告書では、下記のような表現が盛り込まれていた。 急性期医療を中心に人的・物的資源を集中投入し、入院期間を減らして早期の家庭復帰・社会復帰を実現するとともに、受け皿となる地域の病床や在宅医療・在宅介護を充実させていく必要がある。この時、機能分化した病床機能にふさわしい設備人員体制を確保することが大切であり、病院のみならず地域の診療所をもネットワークに組み込み、医療資源として有効に活用していくことが必要となる。 ここで注目されるのは「急性期医療を中心に人的・物的資源を集中投入」という表現であり、急性期病床の削減または統廃合が意識されていた様子を見て取れる。言い換えると、医療資源が集中投入されていない点が問題視されていたことを示しており、新型コロナウイルスにおける病床逼迫を生み出している第1の理由、つまり「医療資源集中の不徹底」が意識されていたことになる。 長期療養を目的とした病床の存在についても、軽度患者の約3割が在宅医療に移行する前提で2025年時点の病床数が推計されており、療養病床の適正化とともに、受け皿となる在宅医療の整備が意識されていた(ただし、地域医療構想では精神病床を視野に入れていない)。 第2の「医療機関の役割分担が不明確」という点も、関連する記述が上記に盛り込まれている。具体的には、「機能分化」「ネットワーク」という部分であり、医療機関の役割分担が不十分な点が問題視されている様子を見て取れる。実際、報告書では「『病院完結型』の医療から『地域完結型』の医療への転換」という表現で、医療機関の役割分担とネットワーク化の必要性を指摘していた。 以上の対比をまとめると、表1のように整理できる。これを見ると、病床確保の方向性という点では地域医療構想は病床削減の要素を持つのに対し、コロナ対応では病床確保が必要になるため、見掛け上の相違点が目立つかもしれない。 |
6―地域医療構想との対比から得られる示唆 1|相違点への対応としてのリダンダンシー確保 相違点については、災害対策のリダンダンシー(冗長性)の考え方を参考にしつつ、感染症に備えたバッファー(緩衝財)となる病床、人員の確保が必要になる。確かに地域医療構想の病床推計に感染症対策は考慮されていないし、地域医療構想を策定した時点で感染症対策に言及したのは9道府県に過ぎない。このため、地域医療構想の前提が覆ったことは事実であり、部分的な修正は欠かせない。 図3:感染症を織り込んだ地域医療構想見直しのイメージその一例として、図3の通り、仮に現在の病床数は1,000床だが、将来的な人口減少を踏まえ、地域医療構想に基づく2025年の必要病床数は750床という地域を想定する10。こうした地域では「将来的に余る250床を削るかどうか」という点が専ら議論されていたが、仮にコロナウイルスへの対応として1,400床が一時的に必要と試算された場合、病床削減の要素を持つ地域医療構想の議論は止めざる得ない。これが各地域で起きている現状であろう。 しかし、コロナの医療需要に対応する1,400床、あるいは現状の1,000床は地域の人口減少を踏まえれば過剰になるため、見直しが求められる。そこで、感染症に対応するバッファー的な病床を確保する方向で関係者による協議が必要となる。 図3では感染症に備える病床として50床を確保することで合意したケースを想定しており、この場合は必要病床の750床を含めて、計800床をメドに調整を進めることになる。その際、50床は休床状態にし、感染症の発生時にベッドや医療機器、人材を配置すれば、感染症に伴う一時的な医療需要の増加に対応できる。 政府としても今年の通常国会で医療法を改正し、医療計画に新興感染症対応を追加する方針11を決めており、国・都道府県の双方で、こうした対応が必要になる。 |
終わりには、「平時モードの論点が有事に浮き彫りになったと言える。コロナの感染状況は依然として予断を許さないが、『ポストコロナ』『ウイズ・コロナ』を意識する中では、見掛け上の違いだけに囚われず、むしろ各医療機関における新型コロナウイルスへの対応状況などを可視化しつつ、医療提供体制改革を推進することが求められる。」と結んでいる。
例えてみれば、決して実戦では使うことがない装甲車や戦車、さらには高性能の戦闘機などは、国民からみれば「全くの不要な代物」にもかかわらず、国家安全保障の観点から「備えあれば憂いなし」とばかりに莫大な防衛予算と称した軍事費を毎年浪費している。
100年とか200年に1回襲ってくる「パンデミック」に対して日ごろから「国民安全保障」の観点から我が国の、「医療資源と医療体制」を抜本的に見直し有事に備えることが、後世に残す政府の本来の仕事なのかもしれない、とオジサンは思う。