東電福島第一原発の全電源停止による爆発大事故からもう12年になる。
その後破損した原子炉の冷却に膨大な汚染水が発生し、地上のタンクでの格納が物理的に不可能となり、その汚染水を海洋に放出するというとんでもない方針が立てられ、ついにあたかもIEAのお墨付きにより実施されようとしている。
「処理水海洋放出は『国際的な安全基準に合致』 IAEAが包括報告書を公表」
「国際的な安全基準に合致する」とする包括報告書なのだが、IAEAの報告書は、放出計画について「推奨するものでも、支持するものでもない」と一定の距離を置いており、その真意をくみ取れば、放出のお墨付きと解釈するのは難しいはずである。
こんな適格な指摘の声があった。
みなさん、IAEA〈アイエーイーエー〉というのは、日本政府が「アーイエーコーイエー」と言えば素直に受け入れる組織であることをお忘れなく。NHKに騙されないよう。#汚染水海洋放出に反対します
— 蓮池透 (@1955Toru) July 4, 2023
福島第一原発処理水放出計画 国際的安全基準と合致 IAEA報告書 | NHK https://t.co/2mCMfqPNKX
放射性核種を除去する技術なんて地球上にないよ。そんなことは政治家もマスコミも分かっている。みんな原発企業からおカネをもらっているから言えないだけだよ。これから生物濃縮がドンドン進んで大変なことになるのは分かりきっている。終わりの始まりだよ。https://t.co/87XcuBTWP4
— まりなちゃん (@t2PrW6hArJWQR5S) July 4, 2023
IAEAは原発推進機関ですから、公正なお墨付きにはなりませんよ。IAEAが1F敷地内に事務所を設けモニタリングするのもお墨付きアピールの一環でしょう。
— Misao Redwolf (@MisaoRedwolf) July 4, 2023
トリチウムだけではなく未処理の核種が混ざった原発事故由来の汚染水の海洋廃棄に、断固反対します。#海を汚すな #原発事故汚染水 pic.twitter.com/2Xq69TvS5d
沖縄で辺野古新基地津建設で戦っている現地のメディアの社説はかなり厳しい論調である。
「<社説>原発『処理水』放出迫る 強行は重大な人権侵害だ」
東京電力福島第1原発の汚染水海洋放出で、政府が開始の目標とする「夏ごろ」が迫る。国際原子力機関(IAEA)の「お墨付き」を得て岸田文雄首相が判断するとされるが、漁業団体は強く反対したままだ。 2015年に政府と東電がした「関係者の理解なしに(処理水の)いかなる処分もしない」という約束をほごにするなら、復興に努力してきた関係者への人権侵害だ。強行は許されない。 IAEAのグロッシ事務局長が4日、岸田首相に面会する。包括報告書で海洋放出は妥当とする方向性が出るのは既定路線という。6月26日には沖合に放出する海底トンネルが完成した。原子力規制委員会の検査が終われば、放出設備の準備が整う。 全国漁業協同組合連合会は「放出反対であることはいささかも変わらない」と決議し、沖縄を含む各地の漁連も反対を表明した。本社加盟の日本世論調査会が3月にまとめた郵送全国世論調査では、海洋放出に賛成26%、反対21%、分からない53%と賛成は少なく、93%が風評被害が起きると答えた。国民の理解も得られていない。 政府・東電は「処理水」と呼ぶが、水と性質が同じであるため除去できないトリチウムのみを含むというのは正確ではない。生物が体内に取り込みやすいストロンチウム90や炭素14など、多くの放射性物質が低濃度で含まれている。 今回の放出では、まずトリチウム以外の濃度の総和が1ミリシーベルト未満になるよう希釈し、さらにトリチウムが国の基準値の40分の1未満になるまで希釈する。「希釈した汚染水」というのが妥当ではないか。 廃炉作業はこれから何十年かかるか分からない。濃度が低くても自然界に放出される総量は増え続け、海流によって地球全域に広がる。中国政府の「日本は汚染水が安全で無害であることを証明していない」という批判を否定できるだろうか。 環境保護団体のグリーンピースは、処理技術が最善でなかったと指摘している。その上で「容認できる選択肢は長期保管と放射性物質除去技術の適用しかない」と主張している。トリチウム以外を検出限界まで除去した上で、12・3年という比較的短い半減期のトリチウムが基準値に下がるまで保管し、それから放出すればいいのである。 海洋放出計画は、経済産業省の専門家会合の「薄めて海洋放出する方法が、より短期間に低コストで処分できる」とする16年の報告書から始まった。最も早く安上がりの方法を他に選択肢はないと決めつけ、既成事実を積み重ね、民意を無視して関係者の反対を押し切って強行しようとしている。沖縄の辺野古新基地問題とも見事に重なる。 原発事故でなりわいと生活を奪われ、復興のために努力する人々を裏切り、切り捨てるなら、重大な人権侵害だ。 |
「人権侵害」といえば、 「LGBTQ」など性的少数者への差別発言して「総理秘書官」をクビになった男が、なんと古巣に戻り幹部に復帰していたらしい。
「経産省荒井氏が幹部復帰 差別発言で首相秘書官更迭」
経済産業省は4日、LGBTなど性的少数者への差別発言で2月に首相秘書官を更迭された荒井勝喜氏(55)を同日付で通商政策局担当の官房審議官に起用する人事を発表した。国際関係担当の官房政策統括調整官も兼ねる。更迭後は経産省の官房付となっていたが、幹部に復帰する。 経産省は「荒井氏が現在携わっている業務の継続性と適材適所の観点から経産相が判断した」と人事の理由を説明。荒井氏は「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国との調整なども担う。 荒井氏は1991年に通商産業省(現経産省)に入省し、総括審議官や商務情報政策局長を歴任。 |
ネットではこんな厳しい見方もあった。
●白鳥浩 法政大学大学院教授/現代政治分析 これではどういった理由で更迭したのか、国民には分からないのではないだろうか? そもそも人権にまつわる問題に対して、差別であったともとれる発言を行ったということを「断じて許されるものではない」と岸田首相自らが断じたのにもかかわらず、ほとぼりが冷めないうちに、なかったことの様に復帰させるということは、国民の理解を得られるのであろうか。 もちろん、大変に能力の高い方であるということはわかるのだが、こうしたやり方では国民の納得は得られないだろう。 あるいは、これは同様に不適切な問題で、最近交代したお身内の首相秘書官を、復帰させるための前例としているという、うがった見方をする向きの意見を危惧する。 また、こうしたニュースになっては、復帰する当の本人もやりにくいだろう。一国の首相たるもの、岸田首相には、もう少し相手に寄り添い、国民にも寄り添った、さまざまな気配りが必要かもしれない。 ●岸田首相は差別を容認するという印象を与えてるな。LGBTなど性的少数者への差別発言で更迭された荒井氏を、再び重要な役職に起用するって、どういうことだ?こんな行動では、岸田首相は差別に対して真剣に取り組んでいるとは言えないよ。社会の多様性や人権を尊重することが求められる今、差別的な発言をした人物を再び高いポジションに置くなんて、許されない行為だと思う。岸田首相は真剣に考え直し、差別に対する明確なスタンスを示すべきだ。 |
この岸田文雄が「マイナカード『デジタル社会のパスポート』 首相、制度に理解求める」と吹聴していたその「パスポート」がどうもいかがわしものになりつつある。
「マイナカードまたも大迷走…暗証番号「不要OK」で政府自慢のセキュリティー対策はどこへ?」
迷走していると指摘せざるを得ない。 松本剛明総務相(64)は4日の閣議後会見で、政府が進めている「マイナンバーカード」の管理に不安を感じる高齢者らが暗証番号を設定しなくても交付できるようにする方針を表明した。 暗証番号の設定を不要とするのは、カードの申請や交付の際に、本人や代理人の申し出があった場合が対象。暗証番号がないと、カードの個人向けサイト「マイナポータル」や、各種証明書のコンビニ交付サービスなどは利用できなくなり、健康保険証と一体化した「マイナ保険証」や本人確認書類としての利用に制限される。 「マイナンバーカード」の暗証番号をめぐっては、高齢者などが入所している福祉施設などから「個別に管理できない」として見直しを求める声が出ており、政府としては対応を迫られた形だが、そもそも暗証番号は政府が「高いセキュリティー対策」としてアピールしていたはずだ。 ■暗証番号不要のマイナカードなら「今の保険証」と同じ 河野太郎デジタル相(60)も4月の衆院本会議で、「マイナンバーカードを利用する場合には暗証番号が必要であり、一定回数間違えるとロックがかかるほか、ICチップから情報を無理に取り出そうとするとチップが壊れる仕組みを採用するなど、高いセキュリティー対策を講じており(略)」などと自信たっぷりに答えていた。 それが今回、暗証番号なしでも一部交付可能となったわけだが、「暗証番号を求めないマイナンバーカード」ならば現行の健康保険証と何が違うのだろうか。 ネット上でも、《また政府方針が二転三転している。もうやめたら》《暗証番号なしならセキュリティーは?成りすましなどの問題は?》《これじゃあ不安になるだけ。そもそもの制度設計に問題があったのではないのか》といった声が相次いでいる。 やはり、政府は「マイナンバーカード」の普及ありきの姿勢をあらため、まずは安全性をより高める制度設計を構築した方がいいのではないか。 |
岸田文雄本人はあまり事態の重要性を感じてはいないようだが、 そこが問題であろう。
「『名称変更案』も出た“マイナンバーカード地獄"で崖っぷちの岸田政権」
■名称変更では済まない。マイナンバーカードの何が一番の問題なのか? 河野太郎大臣は、遂にマイナカードの名称変更を示唆しました。何か明るい見通しが出ているのなら別ですが、現在のタイミングで「リブランドで出直し」ということは、姑息というよりも、かなり「詰んでいるな」という感じです。官房長官が名称変更を否定しますが、内閣の中でも困惑があるのでしょう。 また、河野大臣からは、人海戦術でデータのチェックを行うような発言もあり、まるで本土決戦で一億玉砕のような敗北主義もチラ見えしています。かなり深刻な事態だと思います。とりあえず、成り行きで進めるのではなく、少なくとも大きな方向性を示して頂きたいのです。 方向性の1つは、統合の方向です。総務省は住基データベースを充実する方向で、例えば外国人登録を吸収したり、戸籍のデジタル化も進めてきたわけですが、今後は「戸籍制度を廃止してもいいぐらい」住基をメインのデータとして、そこに振られた番号がマイナという「システムの骨格」を作っていくのか、という方針です。年金も、保険も、今後はより統合して事務の効率も、サービスの正確性も向上させるという方向です。今は、諸事情から不徹底だが、とにかく統合してゆくのなら、そのように宣言し、今後のステップを示すべきです。 もう1つの方向性は、いやいや、そこまで総務省が頑張ると地方自治が機能しないなどの問題で、住基は地方による運用とします。それとは別に戸籍があって、保険と年金はやはり厚労省だとか、国家レベルは番号だけのマイナで、とにかくそれぞれが「ゆるい連携」、つまり例外ぞろぞろの分散型で行くという方向性です。そうなれば、今のような紐づけのエラーがエラーで弾かれないとか、データ照合は上手く行かないので放置とか、いい加減な運用は根絶できそうもありません。それは分かっているけれども、制度上、組織上はこれが現実的ということです。 ■マイナンバー問題解決のため政権が受け入れるべき現実 一番の問題は、マイナンバーをめぐるステムについて、何か既に完成しているような理解がされており、そのように宣伝もされていますが、実態はシステムも、運用も全くの発展途上だと言わざるを得ません。解決の一歩は、その現実を受け入れて、どうするか、その方向性を示すことだと思います。 |
何度も書いてきたが基本設計がしっかりしていないシステムをいくら下請けのITエンジニア連中が小手先の対応をしても、修正箇所の影響範囲も把握できていなければ、トラブルは「永遠なり」となる。
それだから、こんなことになってしまう。
「総辞職に向け始動する岸田内閣」
岸田首相が解散・総選挙のラストチャンスを棄て去り、内閣消滅に向かって進み始めた。 本年前半に内閣支持率が小幅回復した主因はサミット日本開催。 韓国トップとの交流再開も歓迎すべきことだが憲案解決には至っていない。 広島サミットは岸田首相が大きな成果を挙げるチャンスだったが岸田首相はチャンスを掴もうとしなかった。 岸田首相は本年3月に福島県相馬市で開かれた「こども政策対話」で中学生から首相を目指した理由を問われ、 「総理大臣は日本の社会の中で一番権限の大きい人なので、総理大臣を目指した」 と答えた。 同時に、 「やりたいと思うことを実現する、やめてほしいと思うことをやめてもらうには、やはり力を付けないといけない。」 とも述べた。 好意的に解釈すれば、単に権限のある地位に就きたいということではなく、やりたいと思うことを実現するために権限の大きなポジションに就きたいと考えたということになる。 重要なのは「何をやりたい」と考えるのか。 日本は世界で唯一の原爆被害国。 広島は原爆投下の犠牲になった。 広島でサミットを開催する意義は「核兵器の廃絶」、「戦争の廃絶」でしかなかった。 国連は核兵器禁止条約を制定した。 しかし、G7は核兵器禁止条約に背を向けている。 広島サミットでG7による核兵器禁止への第一歩を印すべきだった。 広島サミットにウクライナのゼレンスキー大統領を招聘した。 ゼレンスキーを呼んで協議すべきことは「停戦への具体的行程」を確定すること。 ウクライナ戦争終結に向けての第一歩を印す。 広島でサミットを開催する意義が発揮されたはずだ。 「やりたいと思うことを実現する最大のチャンス」だった。 しかし、岸田首相は何もしなかった。 何もしないどころか、わざわざ「広島ビジョン」を発表し、 「核兵器は役に立つ兵器である」 ことを宣言した。 核独占保有による優位を維持したい戦勝国の命令に岸田首相が服従しただけに終わった。 ウクライナ戦争ではウクライナに無制限、無尽蔵の武器支援を継続する方向性を明示した。 「戦争終結」でなく「戦争拡大」推進を決定した。 米国は戦争を拡大、長期化させたいと考えている。 戦争は米国軍事産業にとっての最大ビジネスチャンス。 戦争拡大、戦争長期化は軍事産業の熱望する事態である。 岸田首相は米国戦争屋の命令に隷従しただけである。 岸田内閣が発足したのは2021年10月。 まもなく2年の月日が流れる。 この間、岸田内閣に高く評価できる実績はない。 政権発足から9ヵ月は何もしなかった。 「何もし内閣」だった。 前任者、前々任者が傲岸不遜な振る舞いを示していたから、普通に対応するだけで好感度は上昇した。 しかし、何を要請されても「検討します」としか答えず「検討使」と揶揄された。 突然、独断専横に転じたのが昨年7月。 安倍晋三氏銃殺を受けて国葬実施を独断専横で決めた。 法的根拠がなく、財政支出根拠もなく、正当な根拠もない国葬の実施を強行した。 「何もし内閣」が「とんでも内閣」、「どうしようも内閣」に変じた。 年末には、軍事費倍増、原発全面推進、国民負担増大方針を明示。 岸田悪政が大暴走を始動した。 サミット開催期待で支持率が小幅回復したがサミットは主権者の期待を完全に裏切った。 再び岸田内閣支持率の凋落が始動している。 日本の主権者は次にどのような政権を樹立するのかを考えねばならない。 |
「何もし内閣」、「とんでも内閣」、「どうしようも内閣」と「出世魚」どころか真逆の、なにかやるごとに批判を浴びる内閣になった。
おそらくは夏休みが終わったころ、「起死回生」の内閣改造を行うのだろうが、少なくともマイナンバーにかかわっていた「河野デジタル大臣、加藤厚生労働大臣、松本総務大臣」の名前が消えていなければ、文字通りの「何にもしない」・「なにもできない」内閣になるだろう、とオジサンは思う。