「不信に拍車をかけた」、「具体的な施策に乏しく、説得力に欠ける、」「物足りない」等々、昨日の岸田文雄の施政方針演説に対する在京各紙の社説の中に多く登場していた。
今までも、総理大臣の施政方針演説に対しては、手放しで評価すると言うメディアの社説は皆無であった。
とりわけ「アベ・スガ」の9年間は国民の目からみれば、言葉遊びの羅列で国民生活に寄与することはほとんどなかった。
そんな過去の反省からなのか、岸田文雄の施政方針は特色を出そうとしたのだろうが、結果は無残であったようである。
在京大手各紙の社説と東京ローカル紙の社説を並べてみた。
■朝日新聞「(社説)通常国会開幕 政治の責任果たせるか」
「首相肝いりの『新しい資本主義』が何なのかは、きのうの演説を聞いても、いまだ腑(ふ)に落ちない。経済再生、地方の活性化から、経済安全保障、多様性の尊重まで、これまでも指摘されてきたテーマが、新しい資本主義に関連づけられたことで、かえって具体像を結ばない。」
■毎日新聞「首相の施政方針演説 検討課題並べるだけでは」
「7月に参院選があるにもかかわらず、初日を見た限り、与野党通じて緊張感が乏しい国会だ。
政府・与党は今国会では野党との対決法案の提出を見送る方針を早々と打ち出している。激しい論戦を避け、無難に国会をやり過ごせば参院選は乗り切れると考えているのだろう。」
■讀賣新聞「政方針演説 感染症に先手打ち経済再生を」
「夏の参院選を控え、与野党対立を避ける意図であれば残念だ。民間病院に対する行政の権限の弱さはかねて指摘されてきた。政府は早急に改善策を提示し、野党に協力を求めるべきではないか。
経済成長を後押しし、民間企業の賃上げなどで分配を強化することは大切だ。しかし、具体的な施策に乏しく、説得力に欠ける。
クリーンエネルギーの開発に注力し、気候変動対策に取り組む考えも示した。これも論点を列挙しただけで、内容の検討は今後に委ねており、物足りない。」
■産経新聞「施政方針演説 安保の説明に熱量足りぬ」
「岸田首相はもっと具体的に語ったらどうか。北朝鮮の新型ミサイルが飛ぶ高度が低すぎて、海上自衛隊イージス艦の迎撃ミサイルでは撃墜が極めて困難になった現状や、南西諸島・台湾方面の中国の軍事的圧力の高まりを説き、抑止・対処には敵基地攻撃能力も欠かせないと説明するときである。」
■東京新聞「社説>首相施政方針 政策実現の具体策欠く」
「波風立てずに国会を乗り切り、参院選に臨もうとするのなら、党利党略と言うほかない。国会審議では、こうした岸田政権の本質にも迫る論戦を期待したい。」
在京大手紙と東京新聞というローカル紙も内容的には大同小異であり、むしろ産経新聞の国防力の増強が目立っていた。
恒例の施政方針演説はもちろん総理大臣がすべて考え作成するものではなく、各分野ごとに各省庁の官僚たちが原文を作り首相側近の連中が構成を整え、演説に仕立て上げるのだが、恥も外聞もなく演説に「箔をつける」ためなのか、過去の偉人の言葉とか有名な常套句などを使う演説も少なくはない。
今回の岸田文雄の施政方針演説では冒頭に勝海舟の言葉が飛び出してきた。
「首相、責任負う『覚悟』強調 施政方針に勝海舟引用」
「行蔵は我に存す」。岸田文雄首相は17日の施政方針演説で、幕末に江戸無血開城で庶民を救った勝海舟の言葉を引用した。自分の行動は自分が責任を負うという思いがある。首相は就任以来、新型コロナウイルス対応などで迅速な決断や方針転換に踏み切ってきたが、改めて「責任は全て負う覚悟」を強調した。 「行蔵は我に存す、毀誉(きよ)は他人の主張」は、勝が福沢諭吉から、旧幕臣でありながら明治政府の高官に就いたことを批判され、それに答えた手紙に書いた。 「行蔵(出処進退)」は自分の判断であり、評論は他人の仕事という意味だ。首相は演説の結びでも、「己を改革す」という勝の言葉を引用した。 |
しかしこの勝海舟の言葉の真意はこうであろう。
我が行いは自らの信念によるものである。 けなしたりほめたりするのは人の勝手である。 私は関与しない。 どなたにお示しいただいてもまったく異存はない。 福沢諭吉が書いた『痩(や)せ我慢の説』に対する勝の有名な返事である。 命を賭けて、信念を持ってやったこと、学者・福沢ごときにとやかく言われる筋合いはないというのである。 |
おやおや? 「聞く力」の岸田文雄が、「とやかく言われる筋合いはない」とはいかがなものかと違和感を持った人が少なくはなかった。
いつもながらこの御仁には早速突っ込まれていた。
220118 岸田首相 施政方針演説にツッコむ
これを聞いたコメントにはこんなものがあった。
★素晴らしい分析と比較です。そのおかげで岸田総理が勝海舟のこの文言の真意を知らずに使っている事が明らかに…。学力の薄さが分かります。
★何の関係があって勝海舟なんでしょうか。広島なら「神輿が勝手に歩けるんいうなら、歩いてみいや!のう!」と仁義なき戦いからの引用を贈りたいと思います。
★岸田氏の方針演説を聞いていてダラダラと自分の評価の自慢とか今の問題点を挙げているだけでどうやって解決するのか具体策が見えてこないですねーやはり聞くだけ聞く総理なんですねー悲しいです!!聞くなられいわ新選組の街宣も聞いてほしいですー
さて、国会の論戦は衆参両院で各党からの質問と岸田文雄の答弁が終われば本格的な論争が予算委員会で繰り広げられることであろう。
もっとも夏の参院選を意識して与野党が激突するような法案は今国会には上程されていないようである。
危ない法案を野党につっこまれ廃案にでもなればその後の選挙に大いに影響があるからなのだろう。
その参院選を巡り、連立与党内で異変が起き始めている。
毎日新聞が、「『独り立ちできるならしてみろ』自公に不協和音 参院選相互推薦」とかなり過激なタイトルの記事を発信していたが、肝心の箇所は有料となっていた。
夏の参院選に向けた自民、公明両党の選挙協力に不協和音が生じている。公明が求める両党の選挙区候補に対する相互推薦の協定締結を、自民が先延ばしにしているためだ。公明は地方組織に対し、相互推薦が見送られる可能性を示唆するなど強硬姿勢に出ている。23日投開票の沖縄県名護市長選への影響も懸念されている。 「譲りすぎ」地方自民に不満 参院選の相互推薦は、公明が改選数1の「1人区」(計32選挙区)に出馬する自民候補を推薦し、代わりに自民が複数改選の埼玉、神奈川、愛知、兵庫、福岡の5選挙区で公明候補を推薦するものだ。2016年から始まり、今回も同様の措置がとられるとみられていた。 ところが、公明が21年末までに相互推薦を決定するよう要求したところ、現時点でも自民からの回答がないという。19年参院選では、前年の12月20日に推薦決定しており、公明関係者は「二階俊博氏が幹事長の時代にはなかった。明らかにグズグズしている」と憤る。 自民側の調整が遅れるのは、地方組織への配慮のためだ。… |
それではと探してみたら、やはりこのメディアはその具体的な内容を明らかにしていた。
「公明党ブチ切れた! 夏の参院選で『自民党とは選挙協力しない』のナゼ」
公明党はよほど頭にきているらしい。自民党と公明党の間で“内紛”が勃発している。 これまで自民と公明は、国政選挙が行われるたびに互いに候補を“推薦”し、選挙協力をしてきた。 ところが、この夏に行われる参院選について、公明党が、自民との相互推薦による選挙協力を見送る方針を固めたことが分かった。公明の山口代表が15日、都道府県本部の代表者に説明したという。自民党にはすでに伝達済みだという。 前回2019年の参院選では、自民党は複数区の埼玉、神奈川、愛知、兵庫、福岡の5選挙区で公明を推薦。公明党は32ある1人区で自民を推薦していた。連立パートナーの自民と公明が国政選挙で協力しないのは異例のことだ。なにが起きているのか。 「発端は兵庫選挙区(改選数3)の推薦問題です。公明党は昨年末から自民党に対して“早く推薦を出して欲しい”と要請していた。公明党にとって兵庫選挙区は、かなり厳しい選挙区です。自民の支援がないと当選は厳しい。前回も、公明候補の支援のために官房長官だった菅さんに現地入りしてもらっています。なのに、いつまで待っても自民は推薦を出そうとしない。それでしびれを切らし、なかば逆切れして“自民とは選挙協力しない”と決定したのでしょう。ただ、兵庫選挙区は自民党にとっても厳しいのは変わらない。前回も1位は維新、2位公明、3位自民……と自民は最下位当選でした。しかも、この夏の参院選は、維新が2人擁立する可能性がある。最悪、当選は維新2人と公明となり、自民が落選する恐れがある。自民の候補は現職文科大臣です。絶対に落とすわけにはいかない。公明に推薦を出せる余裕がないのでしょう」(政界関係者) 自民党のなかからは、「これは茂木幹事長の責任だ」という声が噴出している。選挙を仕切る幹事長への批判があがっている。 「どうも茂木幹事長は、“いまの野党相手なら参院選は負けない”“どうせ最後は公明党も選挙協力するはずさ”と、慢心し、高をくくっている節があります。たしかに、体たらくの野党相手なら負ける要素がない。でも、どんな波乱が起きるのか分からないのが参院選です。兵庫選挙区のために、公明の協力を失い、32ある1人区で次々に敗北したらどうするつもりなのでしょうか」(自民党関係者) 自公に亀裂が入れば、参院選は俄然、おもしろくなる。 |
こんな見方もある。
岸田さんは公明嫌いなんやろなーとは思ってた。
— ペンギン属ペンギン科 (@potemayo99) January 17, 2022
安倍さんの時に給付金で岸田さんが30万やろうとしたのに公明がゴネて10万にしたし公明には嫌な思いあったろう。で、今回のゴタゴタも公明の勝手な公約やし
まぁ、そんな気はしてた。 https://t.co/9MYx1U1DSq
いずれにしても、野党からすれば「自公に亀裂」は敵の「オウンゴール」にも見えるのだが、その野党にも「ゆ党」や「対決しない野党」が存在し、さらにじは「物わかりの良い、連合言いなり」の野党第一党では、足並みが乱れ、「参院選は俄然、おもしろくなる」ことはかなわぬ夢になるのではないだろうか、とオジサンは思う。