ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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★2012年 ヌルボの個人的映画ベスト10

2012-12-30 23:50:19 | 韓国映画(&その他の映画)
 1年前の本ブログ記事<★2011年 ヌルボの個人的映画ベスト10>と比べると、今回の2012年版はすごく考えました。というのは、例年ならベスト10に十分入るほどの高レベルの作品が30くらいもあったから。一応参考としてもうたくさんupされている他の皆さんのベスト10を見てみたら、やっぱり実にさまざま。たぶんキネマ旬報のベスト10も票が分散するのではないでしょうか?
 私ヌルボでも、どんなモノサシを用いるかでベスト10の順位も顔ぶれも大きく変わります。どんなモノサシでも不動というのは、後掲の順位①位と②位の2本だけです。

 さて、2012年に映画館で観た映画は、計87本。6月末まで48本だったので年間100本までいくかとおもったのですが、秋にペースダウンしてしまいました。
 純粋な韓国映画は、そのうち33本。例年よりはるかに多く、レベルも高かったです。「純粋な」以外では「塩花の木々、希望のバスに乗る。Ⅱ」「TESE」「外事警察」「陶磁の人」「あれが港の灯だ」「かぞくのくに」が韓国・北朝鮮に関係する映画。

 何はともあれ、ベスト10を発表します。

[2012年]
①ニーチェの馬
②ヒューゴの不思議な発明
プンサンケ(豊山犬)
ワンドゥギ
拝啓、愛しています
⑥ロボット 完全版
⑦桐島、部活やめるってよ
⑧三池 終わらない炭鉱(やま)の物語
かぞくのくに
⑩ピアノマニア
 別格:春夏秋冬そして春
 

赤色は韓国映画または韓国・北朝鮮に関係する映画です。

※87本とはいっても、未見の話題作や、観ようと思いつつ見逃した映画もたくさんあります。とくに日本映画。「ヒミズ」「希望の国」等、園子温監督作品は前年に続き見ずじまい。「ふがいない僕は空を見た」「任侠ヘルパー」「ヘルタースケルター」「夢売るふたり」「おおかみこどもの雨と雪」「苦役列車」「悪の経典」等々。外国映画では、集客力のあるアメリカ映画で未見のものが多数。「007:スカイフォール」「アルゴ」「アベンジャーズ」「ファミリーツリー」「ヘルプ 心がつなぐストーリー」「フランケンウィニー」等々。韓国映画でも「建築学概論」「ピエタ」等々未見の作品はいろいろ。

 さて、今回のベスト10で、他の映画ファンの皆さんのベスト10と重なる作品は少ないと思います。⑦が重なる確率がいちばん高く、次いで⑨②①⑥の順でしょうが、3つ重なっている人さえいないのでは?
 また、韓国映画ファンも、なぜあれを入れないのか、という疑問はあって当然です。
つまり、このベスト10の選定基準は、私ヌルボの独自のモノサシにこだわった結果ということです。
 以下、個別にみていきます。

 1位の「ニーチェの馬」は、おそろしく忍耐を強いられる映画! 服を着替えるだけ、あるいはジャガイモの皮をむいて食べ終わるまでをなんで繰り返しみせられなければならんのか!? おまけにその間父娘はずっと無言。その一方で全編のほとんどは吹きすさぶ烈風の音が続く。次の日は風がおさまるのか、と思いつつ観ていましたが、向かっているのは世界の終末なの? こんな映画表現があるんだなー・・・。(10代の頃観た「第七の封印」という難解でわからずじまいだった映画をなんとなく思い出しました。)
 2位の「ヒューゴの不思議な発明」は、映画サイトでの評価はイマイチ。「「不思議」でも「発明」でもない、だまされた」という感想つまりタイトルに対するクレームが目につきました。しかし映画愛に満ちた作品。私ヌルボにとっては初の3D映画がこれだったのはラッキー。センスオブワンダーが一段と増幅。フランスが舞台なのに英語というのが少しだけ気になりましたが。(「レ・ミゼラブル」も同様。)
 3位「プンサンケ(豊山犬)」、たとえば「トンマッコルへようこそ」等では「北韓も同じ民族じゃないの」という「南北ともに肯定映画」、もしくは「北朝鮮への片思い映画」だったのが、この作品では北であれ南であれ、国家そのものに対する批判が出てきています。「高地戦」もそんな要素が見られますが、こちらの方がより鮮明なので、そこを評価してこの順位。囚われた男女同士の愛のシーンは今年印象に残った名場面の1つ。
 4位「ワンドゥギ」。本ブログの過去記事(→コチラ)に書いたように、私ヌルボ自身読んだ青春小説が原作。主人公は混血の少年で、父子家庭、外国人移住労働者、障碍者等の問題を、とても健康的に描いていて、映画も原作の魅力をそのまま盛り込んでいます。観客の反応もすごくよかったのに、いかんせん上映館数少なすぎだったのが残念。「鑑賞の手引き」も本ブログで書いたんですけどねー。(→コチラ。)
 5位「拝啓、愛しています」を入れたのも「ワンドゥギ」と似ています。人気ネット漫画家カンプルの原作を読んでカンドーしたのが昨年(2011年)。主な登場人物はおじいさん2人おばあさん2人計4人のお年寄りで、テーマは(なんと)恋愛ですからねー。ヌルボも先入観にとらわれて長いこと積読のままでした。映画は原作に忠実です。ラスト等少しだけ違ってますが。今上映中。だまされたと思って観てみてください!
 6位「ロボット 完全版」。驚異のエンタメ。マサラムービーの魅力健在! クライマックスのロボット軍団のメタモルフォーズは奇想天外なアイディアてんこもり。しかしなんでそこでマチュピチュでのダンスシーン(!)が入るの?(笑)
 7位「桐島、部活やめるってよ」。数少ない日本映画から。未熟ながらもひたむきな高校生群像。こういう映画にはヌルボ弱いです。主人公は前田(映画部)じゃなくて菊池(野球部幽霊部員)なんだな。
 8位「三池 終わらない炭鉱(やま)の物語」。印象に残ったドキュメントが多かった中で、その代表がこれ。熊谷博子監督から直接話を聞きましたが、「むかし原発 いま炭鉱」という著書のタイトルにあるように、原発も炭鉱(の事故)も、あるいは水俣病についても大企業・行政・司法の緊密なスクラムは相変わらず。メディアも問題が多いしなー・・・。
 9位「かぞくのくに」、梁英姫監督、徐々に進化しています。安藤サクラが良かった。ただ、兄の監視役の男(ヤン・イクチュン)の存在は虚構で、そこが少し気になってこの順位。
 10位「ピアノマニア」。これぞ自分でも疑問のベスト10入り。スタインウェイの調律師(&ピアニストのエマール)の究極のこだわりを描いたドキュメンタリー。

 「春夏秋冬そして春」は、ヌルボは初めて観ましたが旧作なので別格にしました。画像の美しさと様式美、そして日本とも共通する仏教的無常観。「ピエタ」は未見ですが、キム・ギドク監督はこんな映画を作っちゃったからその後自分自身を超えるのに苦労することになったんだろうな。

 上記以外の映画について。韓国映画では、「サニー 永遠の仲間たち」「哀しき獣」「高地戦」「トガニ 幼い瞳の告発」「神弓 KAMIYUMI」等の佳作・力作多数。どれもベスト10レベル。「ハロー、ゴースト」はラストで一気に思わぬ大感動! 「短い記憶」は新鋭女優ユ・ダインに注目。「僕のヤクザな恋人」のチョン・ユミは期待通り。ドキュメンタリー「塩花の木々、希望のバスに乗る。Ⅱ」は久しぶりに観た「運動圏」映画。整理解雇と闘う労働者のパワーは健在。「ポエトリー アグネスの詩」は、ヌルボとしては、「おばあさん、まず第一にお孫さんと向き合ってください」という思いに捉われてしまいました。
 韓国以外の外国映画では「おとなのけんか」「戦火の馬」「声をかくす人」等がよかった。その他「ザ・レイド」は壮絶なガチバトルがすごいインドネシア映画。「ドライヴ」「わたしを離さないで」、小林信彦さんも大好きなキャリー・マリガンの魅力。「ドラゴン・タトゥーの女」もいいけど、原作の「ミレニアム」は超えられない。「レ・ミゼラブル」は、昨年観た「オペラ座の怪人」の方が曲の美しさや歌唱力で優っていたと思います。「ダークナイト ライジング」はとても楽しめましたが、「ダークナイト」には及ばないし、バットマンは基本的に体制側の用心棒だからな。敵役も前作のヒース・レジャーはとても超えられない。世評の高い「アルゴ」は、相手側の人間たちが見えてなさそうな映画なので意識的にパス。
 ドキュメンタリーでは、「情熱のピアニズム」の天才ジャズピアニストペトルチアーニには驚嘆。「誰も知らない基地のこと」はぜひ多くの人に観てほしい。日本のドキュメンタリーでは「ニッポンの嘘 福島菊次郎の夏」は反骨の写真家。「死刑弁護人」安田好弘弁護士は意外と(?)笑顔がカワイイ(?)。

 今回は特別に別バージョンのベスト10をあげておきます。重複なし。これでも全然おかしくないでしょ。
①サニー 永遠の仲間たち ②高地戦 ③哀しき獣 ④ザ・レイド ⑤ハロー、ゴースト ⑥ドライヴ ⑦戦火の馬 ⑧ニッポンの嘘 福島菊次郎の夏 ⑨僕のヤクザな恋人 ⑩死刑弁護人

[参考]過去5年のベスト10

[2011年]①サラの鍵②テザ 慟哭の大地③愛する人④彼とわたしの漂流日記⑤アリス・クリードの失踪⑥阪急電車 片道15分の奇跡⑦牛と一緒に7泊8日⑧未来を生きる君たちへ⑨ゴーストライター⑩エンディングノート

[2010年]息もできない過速スキャンダル冬の小鳥④ゲキシネ蛮幽鬼(日)⑤実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(日)⑥告白(日)⑦瞳の奥の秘密⑧飛べ!ペンギン⑨川の底からこんにちは(日)⑩ONE SHOT ONE KILL

[2009年]①グラン・トリノ②ディア・ピョンヤン(日)③妻が結婚した母なる証明チェイサー⑥チェンジリング⑦劔岳 点の記(日)⑧チョコレート・ファイター⑨戦場のワルツ⑩牛の鈴音

[2008年]①ダークナイト②パコと魔法の絵本(日)③ウリハッキョ(日)④休暇(日)⑤シークレット・サンシャイン⑥ラスト・コーション⑦接吻(日)⑧おくりびと(日)⑨闇の子供たち(日)⑩火垂るの墓・実写版(日)

[2007年]①世界最速のインディアン②パンズ・ラビリンス③キサラギ(日)④ドリームガールズ⑤それでも僕はやっていない(日)⑥夕凪の街 桜の国(日)⑦幸福(しあわせ)のスイッチ(日)⑧檸檬の頃(日)⑨幸福(こうふく)の食卓(日)⑩私たちの幸せな時間
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