それ自体でおもしろく読めるという韓国語テキストはまずないでしょう。あ、過去のNHKのテキストであったかもしれませんが・・・。
英語だと、その昔受験生時代に使った朱牟田夏雄「英米現代文演習 代表的文学作品の解釈と研究」という参考書は今も印象に残っています。得点力アップのためのチミツなテキストではなく、モーム等々の作品の一節の読解なんですが、作家・作品への興味をかきたてられつつ読み進むと、なんとなく語学力がついていくように思えたものです。
要するに私ヌルボ、地道に語学テキストで勉強するのが向いていないんですね。端的に言えば正攻法の勉強がキライ。
この記事も、下書きでは「韓国本の小説・エッセイ等を読むと、とくに韓国語の勉強のつもりではなくてもいろんな言葉や表現が語学テキストよりもスムーズに頭に入ります」と書き始めたのですが、考えてみれば言い訳めいた感じもないではないような・・・。
さて、これまで何度か記事にしてきたハン・ビヤ「風の娘、わが地に立つ(바람의 딸, 우리 땅에 서다)」に、こんな表現が載っていました。
덥다덥다하면 더 덥다.
(暑い暑いと言うとなおさら暑い。)
日本語とまったく同じような表現が韓国にもたくさんあるのですね。
この本は、1999年3~4月ハン・ビヤさんが韓半島の南端タンクッから江原道統一展望台まで2ヵ月弱で徒歩旅行をした時の記録です。
4月上旬に読み始めて6月中に完読するつもりだったのですが、ペースが上がらず予定をはるかにオーバーしてやっと先日読了しました。
ペースが落ちた大きな理由は、旅行記のはずなのに著者の考察部分が多く、読んでいてちょっとじれったくなってしまったためです。
その例の紹介を兼ねて、その中で気になった言葉について書く、というのが今回の記事の眼目です。
全羅南道から歩き始めて約40日、江原道に入ったビヤさんは2日間弟一家と一緒に歩きます。初等学校3年の姪と1年の甥も、2日間「現場学習」ということで学校から欠席許可をもらって参加。
ここでビヤさん、以前世界旅行中にインドで会ったニュージーランド人一家のことを思い出していろいろと書いています。10歳の男の子アンディと8歳の女の子ジェシカにも1年間学校を休ませて、ベトナム・タイ・中国・チベット・ネパール・インド等を経て、ゴールのトルコまでアジア諸国を「背嚢(バックパック)旅行」をしているという家族。旅行を終えてニュージーランドに帰ると、そのまま上の学年に入れてくれるとのことです。
この兄妹が衣類の洗濯等々をきちんと自分でやること、満員の乗り物にも音を上げないこと、現地の人たちと積極的に交流し、多くを学んでいること等を具体的に書き込んでいます。
そして「万巻の書を読むよりも、万里を旅する方が優る」という中国の言葉もあげて、そのような「現場教育」重視のための制度改善を積極的に推進すべきだと説いています。
以下はそのくだりで出てきた文章です。
우리는 이제 시작이지만 이미 많는 나라에서 6개월에서 1년까지의 여행을 ‘현장 학습’으로 인정해 시험만 통과하면 학년 진급에 지장이 없도록 재도적으로 보장하고 있다. 절차가 까다로워서 별난 부모나 극성부모만 할 수 있는 것이 아닐 뿐더러 호주나 뉴질랜드처럼 국가 차원에서 적극적으로 권하기도 한다.
(韓国はまだ取っかかりだが、すでに多くの国で6ヵ月から1年間までの旅行を「現場学習」として認め、試験さえ通過すれば学年進級に支障がないように制度的に保証している。手続きがむずかしくて、変わった父母やククソン父母だけができるというのではなく、オーストラリアやニュージーランドのように国家次元で積極的に勧めたりもしている。)
「家族旅行のために学校を休ませることは是か非か?」という論議はネット上でも賛否が分かれるようですが、近年は「是」がやや優勢になってきているように思われます。
・・・と、その件はおいといて、この原文中で극성부모(ククソン父母)の극성というのが見てすぐにわからなかった単語です。漢字語はその大半が日本と共通なのですが、たまに日本では使われないものがあるのが厄介なところ。
文脈から判断して「極端な」といった意味合いのようなので「極性」かなとも思ったのですが、辞書を引いたら「極盛」でした。意味は「猛烈(過激)なこと」「勢いが盛んなこと」「しつこく根強いこと」等。
したがって「극성부모」は「猛烈父母」。上の引用文では「教育ママ」とでも訳すのが自然かな?
というわけで、「극성」は単にヌルボが知らなかっただけのフツーの単語。
しかし、日本でも「モンスター・ペアレント」がかねてから問題になっている昨今、韓国でも同じような状況があってこの「극성부모」という言葉も1つのキーワードになっているのかな?と思ってググってみると 50万件以上のヒット。用例をいくつか見ると、一応推測通りでした。
ハン・ビヤさんのこの本の刊行が1999年。その時点の韓国で、すでに過保護・過干渉の親が問題化されていたのですね。
2003年は「극성부모, 시달리는 아이들(猛烈父母、苦しむ子供たち)」というタイトルの本も出ています。
この記事のタイトルに[韓国語の新語(?)]と(?)をつけたのは、上述のように10年以上前からある言葉なのと、「극성」も「부모」も普通の韓国語だからです。
ついでに、この「극성부모」とほぼ同義の言葉を拾ってみました。
・타이거 맘(tiger mom)・・・・元は中国の教育ママを示す言葉だったのですが、韓国等でもかなり使われているようです。要は管理統制型と母親。
・헬리콥터 부모(Helicopter Parents)・・・・ヘリコプターのように子どもをいつも監視しているようか過保護の親。日本でもわりと使われている、かな?
・몬스터 페어런트(モンスター・ペアレント)・・・・学校等に理不尽な要求をしたりする親。
・괴물 부모(怪物父母)・・・・モンスター・ペアレントの漢字語。
・치맛바람 부모(チマパラム父母)・・・・「チマパラム」と言えば、最近韓国に入国拒否されてしまった呉善花さんの著書「スカートの風(チマパラム)」(1990年)を想い出します。「教育ママ」という意味です。
★付記。たまたま7月30日付の「ハンギョレ」にアン・ドヒョン(詩人)の「극성」という表題のコラムが載っていました。(→コチラ。)
「夏になると唯一<극성을 부리는 놈(勢い盛んなヤツ)>がいる」という書き出し。それが何かというと、牛や子犬の眼前をしつこく飛び回る小バエ。(人間の目の前にもちょくちょく現れますね。) ある虎が目の前をうるさく飛び回るヤツに腹を立てて前足を振り回し、最後に強烈な一撃を加えたら、虎の爪にかかったのはヤツではなく、なんと虎の2つの目玉! 以来ヤツは「虎の目玉を抜いたハエ」とよばれたとさ、という話でした。
英語だと、その昔受験生時代に使った朱牟田夏雄「英米現代文演習 代表的文学作品の解釈と研究」という参考書は今も印象に残っています。得点力アップのためのチミツなテキストではなく、モーム等々の作品の一節の読解なんですが、作家・作品への興味をかきたてられつつ読み進むと、なんとなく語学力がついていくように思えたものです。
要するに私ヌルボ、地道に語学テキストで勉強するのが向いていないんですね。端的に言えば正攻法の勉強がキライ。
この記事も、下書きでは「韓国本の小説・エッセイ等を読むと、とくに韓国語の勉強のつもりではなくてもいろんな言葉や表現が語学テキストよりもスムーズに頭に入ります」と書き始めたのですが、考えてみれば言い訳めいた感じもないではないような・・・。
さて、これまで何度か記事にしてきたハン・ビヤ「風の娘、わが地に立つ(바람의 딸, 우리 땅에 서다)」に、こんな表現が載っていました。
덥다덥다하면 더 덥다.
(暑い暑いと言うとなおさら暑い。)
日本語とまったく同じような表現が韓国にもたくさんあるのですね。
この本は、1999年3~4月ハン・ビヤさんが韓半島の南端タンクッから江原道統一展望台まで2ヵ月弱で徒歩旅行をした時の記録です。
4月上旬に読み始めて6月中に完読するつもりだったのですが、ペースが上がらず予定をはるかにオーバーしてやっと先日読了しました。
ペースが落ちた大きな理由は、旅行記のはずなのに著者の考察部分が多く、読んでいてちょっとじれったくなってしまったためです。
その例の紹介を兼ねて、その中で気になった言葉について書く、というのが今回の記事の眼目です。
全羅南道から歩き始めて約40日、江原道に入ったビヤさんは2日間弟一家と一緒に歩きます。初等学校3年の姪と1年の甥も、2日間「現場学習」ということで学校から欠席許可をもらって参加。
ここでビヤさん、以前世界旅行中にインドで会ったニュージーランド人一家のことを思い出していろいろと書いています。10歳の男の子アンディと8歳の女の子ジェシカにも1年間学校を休ませて、ベトナム・タイ・中国・チベット・ネパール・インド等を経て、ゴールのトルコまでアジア諸国を「背嚢(バックパック)旅行」をしているという家族。旅行を終えてニュージーランドに帰ると、そのまま上の学年に入れてくれるとのことです。
この兄妹が衣類の洗濯等々をきちんと自分でやること、満員の乗り物にも音を上げないこと、現地の人たちと積極的に交流し、多くを学んでいること等を具体的に書き込んでいます。
そして「万巻の書を読むよりも、万里を旅する方が優る」という中国の言葉もあげて、そのような「現場教育」重視のための制度改善を積極的に推進すべきだと説いています。
以下はそのくだりで出てきた文章です。
우리는 이제 시작이지만 이미 많는 나라에서 6개월에서 1년까지의 여행을 ‘현장 학습’으로 인정해 시험만 통과하면 학년 진급에 지장이 없도록 재도적으로 보장하고 있다. 절차가 까다로워서 별난 부모나 극성부모만 할 수 있는 것이 아닐 뿐더러 호주나 뉴질랜드처럼 국가 차원에서 적극적으로 권하기도 한다.
(韓国はまだ取っかかりだが、すでに多くの国で6ヵ月から1年間までの旅行を「現場学習」として認め、試験さえ通過すれば学年進級に支障がないように制度的に保証している。手続きがむずかしくて、変わった父母やククソン父母だけができるというのではなく、オーストラリアやニュージーランドのように国家次元で積極的に勧めたりもしている。)
「家族旅行のために学校を休ませることは是か非か?」という論議はネット上でも賛否が分かれるようですが、近年は「是」がやや優勢になってきているように思われます。
・・・と、その件はおいといて、この原文中で극성부모(ククソン父母)の극성というのが見てすぐにわからなかった単語です。漢字語はその大半が日本と共通なのですが、たまに日本では使われないものがあるのが厄介なところ。
文脈から判断して「極端な」といった意味合いのようなので「極性」かなとも思ったのですが、辞書を引いたら「極盛」でした。意味は「猛烈(過激)なこと」「勢いが盛んなこと」「しつこく根強いこと」等。
したがって「극성부모」は「猛烈父母」。上の引用文では「教育ママ」とでも訳すのが自然かな?
というわけで、「극성」は単にヌルボが知らなかっただけのフツーの単語。
しかし、日本でも「モンスター・ペアレント」がかねてから問題になっている昨今、韓国でも同じような状況があってこの「극성부모」という言葉も1つのキーワードになっているのかな?と思ってググってみると 50万件以上のヒット。用例をいくつか見ると、一応推測通りでした。
ハン・ビヤさんのこの本の刊行が1999年。その時点の韓国で、すでに過保護・過干渉の親が問題化されていたのですね。
2003年は「극성부모, 시달리는 아이들(猛烈父母、苦しむ子供たち)」というタイトルの本も出ています。
この記事のタイトルに[韓国語の新語(?)]と(?)をつけたのは、上述のように10年以上前からある言葉なのと、「극성」も「부모」も普通の韓国語だからです。
ついでに、この「극성부모」とほぼ同義の言葉を拾ってみました。
・타이거 맘(tiger mom)・・・・元は中国の教育ママを示す言葉だったのですが、韓国等でもかなり使われているようです。要は管理統制型と母親。
・헬리콥터 부모(Helicopter Parents)・・・・ヘリコプターのように子どもをいつも監視しているようか過保護の親。日本でもわりと使われている、かな?
・몬스터 페어런트(モンスター・ペアレント)・・・・学校等に理不尽な要求をしたりする親。
・괴물 부모(怪物父母)・・・・モンスター・ペアレントの漢字語。
・치맛바람 부모(チマパラム父母)・・・・「チマパラム」と言えば、最近韓国に入国拒否されてしまった呉善花さんの著書「スカートの風(チマパラム)」(1990年)を想い出します。「教育ママ」という意味です。
★付記。たまたま7月30日付の「ハンギョレ」にアン・ドヒョン(詩人)の「극성」という表題のコラムが載っていました。(→コチラ。)
「夏になると唯一<극성을 부리는 놈(勢い盛んなヤツ)>がいる」という書き出し。それが何かというと、牛や子犬の眼前をしつこく飛び回る小バエ。(人間の目の前にもちょくちょく現れますね。) ある虎が目の前をうるさく飛び回るヤツに腹を立てて前足を振り回し、最後に強烈な一撃を加えたら、虎の爪にかかったのはヤツではなく、なんと虎の2つの目玉! 以来ヤツは「虎の目玉を抜いたハエ」とよばれたとさ、という話でした。