ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国の消えゆく職業 「~クン」と「~ジャンイ」②

2013-05-19 22:12:59 | 韓国の文化・芸能・スポーツ関係の情報
 1つ前の記事の続きです。

 「꾼(クン)」と「장이(ジャンイ)」の違いについて。前の記事で「時間をかけて調べてみます。(汗)」と書きましたが、単にこの2冊の本の内容から察すると、「○○クン」という職業は山で植物を採ったり、海で魚を獲ったりというような第1次産業に従事する人々、それに対し「○○ジャンイ」とよばれる職業は、伝統的な手工業や炭焼き、陶工等の職人、カッコよくいえば匠(たくみ)。つまり第2次産業の人々であると大雑把ながら理解すればよさそうです。

   ≪「꾼」の部(つづき)≫

⑧竹網漁師(죽방렴 어부)
 죽방렴の漢字は竹防廉です。
 朝鮮半島南部の多島海方面。麗水と統営の間、慶尚南道南海郡に只族(지족.シジョク)海峡という海峡があり、その一帯にV字型のかなり大きな定置網が見られます。長さ10mほどのクヌギの杭を約300本干潟に打ち込み、竹を編んだ網を張って水の流れの反対方向に広げて設置したものです。
 これで獲ったイワシ、ワカメ、ユムシ(!)等はこの地方の特産として知られています。
  ※ユムシ(개불)をご存知ない方は画像検索してみてください。動画検索すると、さらにオゾマシイ姿が・・・。

     
     【ずいぶん大がかりな仕掛けです。(左) 扇形の要部分(右)は魚に逃げられないように工夫されています。】

⑨海女(해녀)
 「あまちゃん」は今日本に約2000人。一方韓国では約5000人と倍以上もいます。世界ではこの2ヵ国だけです。2011年10月三重県鳥羽と志摩で海女サミットが開かれ、日韓が提携してユネスコの無形文化遺産への登録をめざすことが宣言されたそうです。
 韓国の海女は大多数が済州島。日本の海女は32年前の約4分の1に減少し、近年は三重県南部でも多くが韓国海女になっているとのことです。
 この本によると、江原道高城郡では、船で沖合に出て潜るのだとか。また男の海士(あま)もいるそうです。(済州島にも5人海士がいる。)

⑩塩作り(소금꾼)
 塩田で塩作りをしている人です。
 私ヌルボは、小学生の頃鳴門市方面で塩田を見た記憶があります。しかしウィキペディアによると、日本の塩田は1972年に事実上全廃されるに至ったとか。その後観光目的等で復元されたりもしていますが・・・。
 本書に記されている全羅北道扶安郡のコムソ塩田(곰소 염전)(→コチラ参照)は、ホ・ヨンマンの漫画「食客 4」で詳しく描かれていました。韓国でも数少ない天日塩田で、ここで作られる塩は約10倍のミネラルが含まれているそうです。
 塩田といえば、映画「青い塩」のラスト近くの塩田のシーンを思い出す人もいると思います。あの撮影地は忠清南道安眠島の斗山塩田ですが、「全羅の塩田で撮ったシーンも使われている」とのこと。コムソ塩田のことかな?

⑪鷹匠(봉받이)
 봉받이は電子辞書にもNAVER辞典にも載っていない単語でした。しかし、記事を読めば、いや、写真だけでもわかります。매사냥꾼、つまり鷹(매)で狩り(사냥)をする人、というわかりやすい言葉もあります。
 ウィキペディアの「鷹匠」の項目や<総合アートから鷹匠な日々>というブログの記事によると、鷹狩りは2010年ユネスコ世界無形文化遺産に登録されましたが、日本はこの時登録された世界11ヵ国の中に入っていないのですね。韓国は入っています。上記ブログ記事には「韓国での鷹匠の認知度は、間違いなく日本より上だと感じました」と記されています。
 ※参考→日本放鷹協会ARRCN(アジア猛禽ネットワーク)のサイト。
 ※上記ウィキペディアの文中にある松原英俊さんは、立花隆「青春漂流」(1985)で紹介されていました。(彼ももう還暦を過ぎたのかー・・・。)→<鷹匠 松原英俊 公式Webサイト>

⑫クヌギの樹皮の家造り(굴피집지기)
 日本では、神社仏閣等では、ヒノキの樹皮で屋根を葺いた檜皮葺(ひわだぶき)というのがありますが、韓国にはクヌギの皮(굴피.クルピ)で葺いたクルピチプがあるんですね。
 <visitkorea>の記事によると、「昔の家屋が体験できます」という江原道の旌善(チョンソン)アラリ村では、このクルピチプの他、伝統瓦屋根の家、ノワチプ(板葺きの家)、チョルプチプ(麻葺きの家)、トルチプ(石板葺きの家)等を1棟単位で利用できるとあります。いろいろあるものです。

         
 【こういうふうにして皮を剥ぐのか。(左) 三陟(サムチョク)市にあるクルピチプ。(右) 日本人には雑に見えるような葺き方が韓国的。】

⑬男寺堂(ナムサダン)の音頭取り(남사당 앞쇠)
 男寺党(남사당)は農楽、曲芸、仮面劇、人形劇等を演じて各地をまわる芸人集団。詳しくはウィキペディア参照。(→コチラ。)
 そういえば、映画「王の男」(2005)でカム・ウソンやイ・ジュンギが演じていましたね。
앞쇠もふつうの辞書にはない言葉のようですが、本文に「상쇠」と同義とあり、こちらは「朝鮮語辞典」に「農楽隊などで先頭に立ってケンガリ(鉦.かね)を打ちながら全体を指揮する人」とありました。
 この男寺党の本拠地が京畿道安城市では、2001年から「バウドギ祭り」という祭りを開催しているほか、4~10月の毎週土曜にも常設公演が行われているそうです。

 以上が「クン」の本に載っている職業の全部。「ジャンイ」については続きで、ということにします。

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