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最近の韓国、なぜか80~90年代の名作映画の再上映ブーム その背景は?

2013-11-17 06:31:57 | 韓国の文化・芸能・スポーツ関係の情報
 1つ前の記事で<책받침녀(下敷き女)>のことを書きました。
 横浜市立図書館で見ていた11月9日付の「朝鮮日報」の<오싱•라붐•레옹•터미네이터… 너희들 갑자기 무슨 바람이야>という見出しの記事の中にあった言葉です。
          

 訳すと<「おしん」「ラ・ブーム」「レオン」「ターミネーター」…アンタら急にどうした風の吹き回しなんだ?>
 つまり、最近韓国で相次いでいる主に80~90年代の懐かしの映画の再上映の状況と、その背景を考察した特集記事です。
 <책받침녀(下敷き女)>も、「ラ・ブーム」で人気となったソフィー・マルソーを指す言葉として出てきたというわけです。

 私ヌルボも、毎週火曜日に連載している韓国内の映画興行成績の記事を作成する中で、昨年来、とくに今年に入って往年の人気作品が次々と上映され、また好評であることに気はついていました。

 この「朝鮮日報」の記事であげられている作品は以下の通りです。
  ※この記事は→コチラで読めますが、会員登録(無料)が必要。

 「おしん(오싱)」 ※(1)・「Love Letter(러브레터)」(1995)・「ラ・ブーム(라붐)」(1980) ※(2)・「スチューデント(유 콜 잇 러브)」(1988)「ニュー・シネマ・パラダイス(시네마 천국(シネマ天国)」(1988)「恋する惑星(중경삼림.重慶森林)」(1994)・「愛人/ラマン(연인)」(1992)・「八月のクリスマス(8월의 크리스마스)」(1998)・「ターミネーター2(터미네이터 2)」(1991)・「レオン(레옹)」(1994)
 ※(1) 「おしん」は1984年韓国語版書籍が6巻で刊行。韓国版映画は1985年監督イ・サンオン、おしん役イ・ミニ(김민희)等で公開。この映画では、おしんは朝鮮人の少女となっていて、貧しい家の口減らしのため日本人の家に送られる、という設定になっている。詳細はいずれ別記事に(?)
 ※(2) →コチラによると「ラ・ブーム」は韓国では公式には公開されていなくて、1986年「ラ・ブーム2」が公開されて「ラ・ブーム」の存在が国内に知られるようになり、その後ビデオテープとTVを通じて韓国の観客はこの映画に出会うことができた、とのこと。

 これら以外でも「アメリ(아멜리에)」・「ジュラシック・パーク(쥬라기 공원)」・「タイタニック」・「慕情(모정)・「ウェストサイド物語(웨스트 사이드 스토리)」・「グラン・ブルー(그랑블루)」・「サウンド・オブ・ミュージック(사운드 오브 뮤직)」・「ドラゴン怒りの鉄拳(정무문.精武門)」等が再上映されています。

 上記作品の中には今年5月7日の記事でも書いた名画座のシルバー映画館での上映作も混じっていますが、それだけでなくロッテシネマ系列等相当数の映画館で上映されているのです。

 私ヌルボは、韓国は日本同様の高齢社会の上、最近は1960年前後生まれの韓国でのベビーブーム世代も引退を迎える時期となって、昔を回顧する彼らが主な観客層かな、となんとなく思っていました。
 ところが「朝鮮日報」の記事によると20代の観覧客の割合が非常に高いとのことなのです。
 今年再公開の映画6編の前売り状況の調査結果では20代が32%、30代が37%で、計約7割。「レオン」と「八月のクリスマス」では20代の前売り率が50%を超えたとのことです。

 このようなブームの背景について、大学の教授や評論家は次のように分析してます。

・10〜20代の若い世代がこれらの映画にひかれるのは、疲労感を感じる現実の競争社会からの避難所を探すためである。特に義理人情などに裏打ちされた人間関係に安定感を感じる。
・今は感動がない時代。アイドルやマクチャンドラマ(事故や不治の病、意外な血縁関係等「お約束」の展開のドラマ)は溢れているが、癒しは得られない。「おしん」や「Love Letter」は涙を流し、感動したい、人生の希望を得たい、という願いに応えてくれる。
・"英雄の不在"という現実が1980〜90年代を呼び起こしたという見方もある。今は大衆文化の洪水の時代とはいえ、 "本当の英雄"、"本当のレジェンド"は見つけがたい。チョー•ヨンピル、ユン・ボッキ、パティ•キム等は本物のスターだった。彼らは経済成長と相まって将来のビジョンを提示し、文化を導いていった。この頃は未来にバラ色の夢を描きにくい時代なので、過去にそうした夢を投影している。。

 スマホとは無縁だった頃のアナログ時代の恋愛に純粋さを感じる、という感想もあります。「八月のクリスマス」での手紙をめぐるいろいろや、「Love Letter」にもありましたね・・・。
 ある評論家は「今、私たちは切なさ(애틋함)への渇望、人間らしかった時代の欠乏などの情緒欠陥障害を抱えている」とコメントしています。
 そういえば、昨年ヒットした「建築学概論」も時代設定は現在ですが、90年代の学生時代の恋愛に基づいた物語で、同じテイストがありますね。

 「朝鮮日報」の記事では、このような「映画界の中の'過去探し(과거 찾기)'ブームは、2011年に観客750万人を動員した映画「サニー 永遠の仲間たち」がその始まりと見ています。1970年代を描いた作品で、家族対象の映画として若い層も見たため"新復古族(신복고족)"が現れ、その後彼らの好みに合う映画の上映が続いた、というもの。
 また、このような胸がジーンとなるアナログ的純愛ブームは10年あまり前、日本でも同様の現象があったとか。「世界の中心で、愛をさけぶ」のことかな? 「ALWAYS 三丁目の夕日」も?

 韓国社会を見ていると、以前の日本と同じ道を歩んでいるな、と思うことが多々あります。私ヌルボの持論で<日韓を分ける24年差の歴史>というのがありますが(→コチラコチラ)、この過去の名画ブームもそうかもしれません。ただ、年差は10年くらいに縮まっているのかな?
 それから、韓国のDVDのレンタルショップ事情はどうなっているのかな、ということも考えましたが、その点については私ヌルボ、よくわかりません。

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2 コメント

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いろんなことが関連しているようで・・・ (ヌルボ)
2013-11-18 23:20:12
再上映・再上演が多くなると、新作に関わる人たちや業者にとっては痛手でしょうが、アメリカ映画でも近年他国の作品のリメイクや人気作のシリーズ化が増えていますね。アイディアの払底だけが原因ではないのかも。

そうしたものを求める観客層がいる、そして多分増えているというのが土台になっているのでしょうか。
いくつもの国で同様の現象がみられるとして、その根っ子の部分の共通項はつまるところどういうことなのか・・・。
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営業 (前川健一)
2013-11-18 01:23:02
 確実な興行収入を得るためのリバイバルというのは、もう何年も前からやっています。ブロードウエイ・ミュージカルは、1980年代から、再演ばかりです。ヒットした作品なら、出資者がいるからです。それに、新しいアイデアを考えなくてすむ。日本のテレビドラマも、続編、続々編が多くあります。音楽界では、旧作を集めて歌うというCDが多数あります。これらすべて、より確実な成功を目指した「石橋たたいて渡る」商法です。ヒット確実作品なのですから、へまをしなければ、若者にも受けると考えればいいでしょう。そういう流れと、「懐メロ、レトロ」というのは、ちょっと違うように思います。台湾の出版物は今、数多くの「レトロ物」(町田忍作品を連想するといい)が出ています。これらは、高齢者向けでしょうが、レトロ風(本物じゃないレトロ)は、若者にも受けています。レトロ風食堂とかね。
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