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[韓国語の新語] 大きな社会問題 「いじめ」関係の新語

2012-03-07 15:32:46 | 韓国語あれこれ
 2月25日に観た韓国映画「ポエトリー アグネスの詩」ではいじめ被害者の女生徒の自殺が大きなモチーフになっています。
 ちょうどその日発行の「朝鮮日報」にいじめについての記事がありました。→コチラ(→日本語版)
 さらに「新東亜」2月号にも「衝撃!学校暴力の実態(충격!학교 폭력 실태)」と題した現場取材記事が載っていました。→コチラで全文読むことができます。

 それほど現在の韓国では、いじめが大きな社会問題になっているようです。
※1月14日「産経新聞」で黒田勝弘氏が「ソウルからヨボセヨ 韓国イジメ でっかい?」という外信コラムでやはり韓国のいじめ問題の深刻化について記していました。

 これらの記事を読んでいて、いくつか辞書に載っていない新語に気づきました。いずれもいじめの実態に直接関わるキーワードです。

 韓国のサイト等で探ってみたことも含めて、いくつか紹介します。

왕따(ワンタ) いじめ
 この言葉は、すでに多くの韓国語学習者に知られているでしょう。따돌리다(のけ者にする)に、「大きい」を表す「왕(王)」をつけたもの。いじめ行為、またはいじめ被害者をさす。

은따(ウンタ) 隠れたいじめ
 은근히 따돌린다(ひそかにいじめる)の略語。

찐따(チンタ) まぬけ、ばか
 上記「東亜日報」の記事には、「찌질한 왕따(ぱっとしない、貧乏くさいいじめ)」を指す言葉、とあります。しかしNAVERのオープン辞典には、本来の意味は脚の不自由な者の意味で、朝鮮戦争以後には地雷を踏んで脚を切断された人が多かったので、「ぼけっとして地雷を踏んでしまった」という意味で最近は用いられている、と説明されています。
 「東亜日報」の記事では、たとえば休み時間などに、「あいつに触るとチンタ・ビールス(찐따 바이러스)がうつるから汚いぞ」等の言葉の暴力として用いられるそうです。

일진(イルチン) 不良、番長 上記「朝鮮日報」の記事の見出しは「폭력 피해 학생들, 교사 아닌 일진에 기댄다」。「暴力被害生徒たち、教師ではなく<イルチン>に頼る」です。
 「일진(イルチン)」という言葉については、NAVERオープン辞典には「짱(チャン)」の次にケンカが強い少年のことで、名称は朝鮮時代に由来するが、今では学校の不良生徒をさす、というように書かれています。しかし、韓国ウィキの「일진회(一陣会)」の項目には次のような説明があります。

 イルチン会(一陣会)は日本に由来した語で、大部分の学校によくある暴力組織をさす言葉として用いられる。語源は日本の森田まさのりの漫画「VIVA!ブルース(비바! 블루스)」に出てくる団体である。1990年代以後韓国にも登場、韓国の中・高校でも多く使う名で、一部ではこの漫画が学校暴力の直接的な原因になったともみるが、論議の余地がある。
※「VIVA!ブルース」の原題は「ろくでなしBLUES」です。

 関連記事としてリンクが張られている「Oh!MyNews」の2005年3月の記事「イルチン会、暴力漫画の模倣ではないか」と題した記事によると、この漫画は最初「캠퍼스블루스(キャンパス・ブルース)」の名で刊行されましたが、1997年イルチン会問題で絶版となり、それが2004年「「VIVA!ブルース」の題で19禁等級を受けながらも再登場したということです。

 話を戻すと、先の新聞記事の続きですが、いじめにあっている生徒がイルチンに助けを求め、そのイルチンがいじめている連中に「○○をいじめたらタダじゃおかないからな」などと脅しをかけると、いじめがぴたりと止む、ということです。しかしさらに問題は続くのです・・・。
※この言葉、<スペースアルク>の「辞書にない韓国語」の中にありました。

빵셔틀(パン・ショトゥル) パシリ(使い走り)
 いじめ被害者がイルチンの力に頼っていじめを免れたとしても問題解決にはならない、と「朝鮮日報」の記事は続きます。
 つまり、その後イルチンの歓心を買うために、あるいは強制で、貢いだりパシリになったりせざるをえないケースが多いからです。この記事では、いじめから救ってやった先輩(イルチンの女生徒)がその後2年にわたりいじめ被害者生徒をこき使っている事例が紹介されています。「ほぼ毎日パンと牛乳を買って届けるお使いをしている。ときには小遣いを上納することもある」とのことです。
 ここで出てくるのが빵셔틀という新語。この記事では「シャトルバスのように売店でパンを買ってくる役割」と但し書きが付いていますが、NAVERオープン辞典には次のように説明されています。
 パン・シャトルは中・高校で力の強い生徒たちの強要によりパンやタバコ等を代わりに買ってくる行為や、その行為をする人を意味する新語で、学校暴力を背景に誕生した用語である。パン・シャトルの「シャトル(shuttle)」は戦略シミュレーションゲームの「スタークラフト」で兵力輸送を担当する仮想種族のプロトスのユニットを意味する。他のイルチンにパンを奪われると「シャトル墜落(셔틀추락)」、使い走りの速度が速いと「速業シャトル(속업셔틀)」という。使い走りの種類によって「金シャトル(돈셔틀)」、「バス・シャトル(버스셔틀)」、「カバン・シャトル(가방셔틀)」ともよぶが、大体は「パン・シャトル」という。
※「スタークラフト」については、本ブログ2011年8月23日の記事「韓国で人気絶大のゲーム スタークラフトのすべて」を参照のこと。

 以前、韓国では社会のさまざまな事象が日本の20数年遅れで起こっている、というようなことを記しました。(→コチラ)
 日本で、東京都中野区のいじめを受けていた中学生が「このままじゃ生きジゴクになっちゃうよ」という遺書を残して自殺したのが1986年。教師も葬式ごっこに加担していたりして、いじめが社会問題化しました。(もう四半世紀も経ったのですね・・・。)
 近年、20数年という年差が縮まっているように思えますが、こんなところまで日韓2つの社会が共通の要素を持っているということなんでしょうね。
 日本も決していじめ問題は克服されていないし、課題は依然多いですが、韓国ではそんな「いじめ先進国(??)」日本のいじめ対策をいろいろ参考にして取り組んでいるようです。

★古狸案先生こと今井久美雄先生のブログ「上級韓国語」では、すでに一昨年(2010年3月)「パンシャトル…いじめにもいろいろ」という記事でいじめ関係の新語が取り上げられていました。そこでは「代わりに宿題をやらせる숙제셔틀,タバコを買いに行かせる담배셔틀,替え玉試験をさせる시험셔틀,自分の体操着を持ってこないで貸せと迫る체육복셔틀」等も紹介されています。
 (いつもながら、勉強になる記事満載のブログです。)

※「韓国のパシリたちよ、集まれ!」ネットに『使い走り連合会』結成で話題に」という2009年のニュースを見つけました。(日本語)→コチラ
 「パン・シャトル」の生徒たちのためのサイトのようです。→コレかな?

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