ロマンとエッチ
かち人の
渡れど濡れぬ
えにしあれば
【現代語訳】
渡っても濡れもしない
浅い江のようなご縁でしたわね。
この句のどこにレンゲさんは、それ程の感銘を受けるのですか?
“渡れど濡れぬ”ですわぁ~。。。
ほおゥ。。。ここのどこに。。。?
デンマンさん。。。そのような事、あたしが説明しなくても、お分かりになるでしょう?
いや。。。なんと言うかぁ。。。はっきりと分からないからレンゲさんに尋ねているのですよ。
だから。。。、だから、斎宮は、もっと濡れたかったのですわぁ。。。でも。。。、でも、濡れたい、濡れたいと思っているのに、思うように濡れない。。。ああぁ~。。。切ない女の胸の内が手に取るように分かりますわあぁ~~
なんだか。。。実感がこもっていますねぇ~?
デンマンさんにも、このような切ない女の気持ちがお分かりになりますかぁ~?
うん、うん、。。。なんとなく分かりますよ。。。でも。。。でも。。。
でも、なんですのォ~。。。?はっきりとおっしゃってくださいなぁ。
レンゲさんは、あのォ~。。。ちょっとばかりねぇ、あなたは濡れる事にこだわっているのではないですか?
だって。。。、だって、斎宮は“渡れど濡れぬ”と、はっきりと書いていますわ。
そうですよ。確かにそのように書いてありますよ。でもねぇ~、斎宮は“浅い江のようなご縁”を強調するために“渡れど濡れぬ”と書いたと思いますよ。つまり、瀬を渡った。でも、思ったより浅くて服が濡れなかったと。。。つまり、浅瀬だった。それで浅い縁と結びつけた。
でも。。。、でも、それでは片手落ちだと思いますわぁ。
そうですかねぇ~?
だって、そうでしょう?デンマンさんは“浅い縁”を強調するためだとおっしゃいますが、あたしはそうではないと思います。
どういうことですか?
斎宮は身も心も、もっと濡れたかったのですわ。もっともっと濡れて業平さんと深い絆を感じたかった。その強い思いがあるからこそ、愛し合った夜のことを“渡れど濡れぬ”と書いたのですわ。つまり、“あなたとお逢いしたけれども、身も心も充分に濡れたわけではありませんでしたわ”。。。このように言いたかったのですわ。
つまり。。。つまり。。。レンゲさんは、この“濡れる”を肉体的な意味で文字通りに“濡れる”と。。。?
そうですわぁ~。そのように解釈して初めて斎宮の切ない女の胸の内が伝わってくるのですわぁ~。。。つまり、斎宮は業平さんに抱かれてもっと濡れたかったのですわ。業平さんに抱かれて女の悦びを感じることができたというのに、まだ斎宮の心は満ち足りてはいなかった。長居はできないので斎宮は帰らねばならなかった。でも、本当はもっと濡れて深い官能の歓びに浸りたいと思っていた。その満ち足りない思いを業平さんに伝え、もう一度逢って思いを遂げたい、と上の句(かみのく)に願いを託したのですわぁ~。
ほおォ~。。。なるほど。。。そのようにも解釈する事が出来ますよね。
あたしは、そのようにしか解釈できないと思いますわ。業平さんは女の気持ちが分かっていたのですわ。
分かっていたのですか?
そうですわ。斎宮の歌の中に込められた切ない女心を理解していたのですわ。だから、下の句(しものく)で “いつかあなたの思いをかなえてあげますよ” と書いているのですわ。
しかし。。。
しかし、何ですの?
当時、斎宮は16才か17才ですよ。いろいろな書物に当たってみても、まだ20才にはなっていなかった。つまり、まだ初々しい乙女だった。恋愛経験が豊富だというわけではない。そういう女性が、レンゲさんの言うように深い官能の歓びを知っているとは思えない。
でも、業平さんは女性経験豊かな男性ですわ。斎宮のお兄さんと19才年が離れていると言う事は、斎宮とは20歳以上の年の開きがある。充分に女性の扱いを心得ている。しかも、お兄さんから業平さんの事は何度も聞かされている。上のエピソードを読んでも、斎宮が業平さんに対して好意を持っている事が実に良く分かりますわ。だから、心のこもったおもてなしをしたのですわ。ただ単に親元から言われただけではなしに、斎宮(いつきのみや)自身が業平さんに心を惹かれていたことが歌のやり取りを通しても実に良く分かりますわ。
つまり、女の扱いに慣れている在原業平に抱かれて、斎宮は女性として花開いたと言うのですか?
そうですわぁ~。
ゥ~ん。。。レンゲさんらしい解釈の仕方ですよねぇ~。。。
どうして、そのような事をおっしゃるのですか?
だから、清水君とレンゲさんは、毎日、毎晩、ベッドで愛し合っている。清水君は特に不満だと言っている訳ではない。でも、レンゲさんは不満なんですよねぇ~。ふと一人になって自分を見つめるとき、レンゲさんは心の奥に虚しいモノを感じてしまう。。。つまり、レンゲさんが斎宮の歌を上のように解釈したのは、まさにレンゲさんの気持ち、そのものなんですよねぇ~?。。。レンゲさんは清水君に抱かれて、もっと濡れたいのですよ。清水君に抱かれて女の悦びを感じたいというのに、レンゲさんの心は満ち足りてはいない。その気持ちがなかなか清水君に伝わらない。でも、本当はもっと濡れて深い官能の歓びに浸りたいと思っている。。。そうでしょう?
つまり。。。つまり。。。あたしにこの事を言わせたいためにデンマンさんは上のお話を持ち出してきたのですかア?
違いますよう。
いいえ。。。絶対にそうですねん。。。デンマンさんは、あたしをエロい女に。。。エロい女にしたいんやわあああぁ~ んもお~~
やだなあああぁ~。。。それはレンゲさんの誤解ですよ。
誤解ではありしませんわア。。。第一、またヤ~らしいタイトルをつけましたやんかあああぁ~ “ロマンとエッチ”だなんてぇ~ んもお~~
ちょっと、レンゲさん。。。気持ちを静めてくださいよゥ。
デンマンさんは。。。、デンマンさんは、このような手の込んだ事までして、あたしをエロい女にしたいのですかア?
それは誤解ですよゥ。
いいえ、そうですねん。デンマンさんは。。。、デンマンさんは、あたしがエロい女だと思い込んでいますねん。
あのねぇ~。。。そう言うレンゲさんこそ、思い込みが激しいのですよゥ。僕は全く違う意図で上の平安時代の話を持ち出したのですよう。
どういう。。。どういう意図ですのォ~?
レンゲさんは僕の質問に次のように答えたのですよ。
セックスとは、愛する人との
大切なコミュニケーション
しかもレンゲさんは次のようにも書いていた。
詩は人生における唯一の命題
2007-MAR-05 23:18
詩をほめていただけることが、
何よりもうれしいのです
デンマンさん、ありがとうございます。
詩はわたしにとって、
人生における唯一の命題かも?
なんて、近年思いはじめているのですが、
これは誇大妄想なのでしょうか?
わたしの作品を見て、
何らかのリアクションをいただくことや、
まして、インスピレーションを
受けていただけることは、
三文詩人のレンゲとしては
ハイポネックスの
恵みのようなものですよ!
批評、感想など、たとえそれが
胸にグサッとくるものであっても、
それによって、成長の糧を頂けるのです。
これからも、わたしの詩を分かってくださる方のために
一生懸命書きたいと思っています。
レンゲ
『夢のバンクーバー (2007年7月24日)』より
“詩は人生における唯一の命題”と言えるレンゲさんの知性に、僕は「ほォ~~!」と思ったものですよ。オツムの足りないエロい女は、そのような事を言いたくても言えませんよゥ。
そうでしょうか?
あのねぇ~。。。僕は足掛け5年にわたって、この「レンゲ物語」を書いているのですよ。もし、レンゲさんがオツムの足りないエロいだけの女だとしたら、僕は今日まで「レンゲ物語」を書き続けることができなかったでしょうね。
デンマンさんはマジでそう思うのですか?
もちろんですよう。レンゲさんをエロい女と決め付ける事は、レンゲさんを5年間も相手にしている僕自身を下らないシモい男にしてしまう事ですよ。僕だってシモい事が嫌いなわけじゃない。うへへへへ。。。でもねぇ。。。僕は、単なるシモいだけの男だとは思っていませんよ。
。。。で、デンマンさんは、ご自分のことをどのような男だと思って居るのですか?
だから、レンゲさんが“詩は人生における唯一の命題”と言うのならば、僕は“詩を人生における唯一の命題として生きる女を理解できる男”だと自負しているのですよ。レンゲさんだって分かっているはずですよ。
分かりましたわ。デンマンさんがあたしの詩を批評してくださって、あたしは本当にうれしかったのですわ。でも、在原業平と斎宮のお話を持ち出してきて、デンマンさんは何がおっしゃりたいのですか?
だから、平安時代の“文化人”にとって和歌とエッチはワンセットになっていたのですよ。つまり、レンゲさんの言葉を借りるならば、次のように言えるのですよ。
和歌とセックスは、
愛する人との大切なコミュニケーション
どうですか、レンゲさん。。。?このように言うことができると思いませんか?上の在原業平と斎宮のエピソードをじっくりと読んでみてくださいよ。この二人のエピソードから和歌と、その裏で繰り広げられている秘め事(エッチ)を取り除いてしまったら、上のエピソードは全く“抜け殻(ぬけがら)”だけになってしまって、面白くも何ともなくなってしまうのですよ。
ええ。。。分かりますわ。。。でも。。。でも。。。その事とあたしと洋ちゃんの愛情問題がどのように関係しているのですか?
レンゲさんにとって詩は大切なものなんですよね。詩はレンゲさんにとって夢とロマンに近いものですよ。言わば“生きがい”と言えるかもしれません。そのレンゲさんが坂田さんと愛し合った後で次のような詩を書いたのですよ。
身も心も一つになって
2007-04-10 20:34
わたしは目をつむったけれど
あなたも欲情していることを
感じ取ることができたわ
あなたが以前にも増して
わたしを求めている事がうれしかった
そして、それはわたしを安心させたの
二人の唇が重なり
舌が絡み合う
愛しい思いに駆られながら
わたしは接吻に思いを込める
背筋を走る快感にやがて耐え切れず
わたしは小さなうめきをもらして
あなたの背中にしがみついたわ
無意識に腰が揺れる
あなたの指先がするりと中に入ってくる
その繰り返しにわたしは翻弄される
愛撫の嵐に
わたしは狂おしいまでに身悶える
「もう… 駄目…」
息も絶え絶えにわたしが叫んだとき
あなたはわたしの中に入ってきた
身体の中が溶けてしまいそう
頭の中がカスミかかったように
真っ白になってゆきそう
この密着感は何なのだろう
わたしはからっぽになった頭の奥で考える
まるで、すっぽりと空いた自分の空洞に
ちょうど一つしかない鍵を合わせるように
あなたはわたしの中に密着している
自分の身体の中からは
汲んでも汲んでも涸れない
泉のような熱いものが流れ出てゆく
二人が一つになっている部分からは
ひそやかな湿った音がもれ
わたしの情感をよりかきたてる
「ああぁ~…」
不意にあなたがうめく
あなたの動きが激しくなる
わたしも嵐に巻き込まれる船のように
無意識に動きを合わせる
わたしの中であなたそのものが
激しく躍動する
鼓動が高鳴る
愛欲が激しくぶつかり合う
欲情が突き上げてくる
ああぁ~
今までにない激しい官能の疼き
身も心も一つになって激しく蠕動する二人
堪え切れなくなって登りつめたその極みで
あなたは激しく果てる
そしてわたしを初めて深い
底知れぬ悦楽へといざなう
ああぁ~ あなた、愛しい人
わたしをこのまま離さないで
by レンゲ
『禁断のぬくもり (2008年1月12日)』より
分かるでしょう?レンゲさんと坂田さんがなぜ満ち足りて心の奥でイケるのか?