むぎが死んでしまった。
悲しい。
8日(金)の朝、いつものように6時30分近くに散歩に出かけて帰ってきた。ほんの10分くらいの散歩だった。いつもと変わりなかった。
異変は玄関で足を拭いてやるときの苦しげな表情だった。伏せたまま立てないで、荒い息をしている。暑さのせいだろうとタカをくくっていたが、やはり苦しげだった。
いつものとおりぼくの膝にはさんで仰向けにして足を拭いてやった。自分で起き上がり、リビングまでやってきた。
家人がむぎの表情から異変に気づいた。声を上ずらせ、病院へ連れて行こうと言い募る彼女と少し口論になった。夕方、連れて行けばいいというぼくに対し、家人はすぐに連れて行きたいという。
結局、ペット病院が開いたら連れて行くことにして、ぼくは自分の部屋から遅刻する旨のメールを会社へ送った。午前7時53分だった。
送信したとたんに家人が寝室でむぎに声をかけていた。
「むぎちゃん、大丈夫? どうしたの? ね、むぎちゃん……」
家人の声が変わった。
「むぎが息してない!」
ぼくも弾かれたように寝室へ急いだ。
絶命していた。抱き上げると目を閉じ、全身の力が抜けていた。
「なんで、なんでこんなに早く……。ダメだ、むぎ!」
ぼくも叫んでいた。
病院へ出かける支度で家人が目を離したほんの15分ほどの間のできごとだった。
あっけない最期だった。最後まで手のかからない子だった。12歳と6か月、母犬のように慕い続けた16歳のシェラより先に旅立ってしまった。
情けないけど、辛く、悲しい。
*写真=先週の日曜日、最後に撮った一連のうちの一枚。