今回は、「色絵 男女人形一対」の紹介です。
正面
背面
これは、風俗人形というものでしょう。
ところが、この人形、どうも海外に輸出され、ヨーロッパで台座が取り付けられて最近里帰りしたように思えるんです。
それは、人形の本体と木製の台座の間にフエルトを挟み、また、台座の底部にもフエルトを貼ってクッションの役目を果たさせている状態になっていることから、そのように思えるわけです。
下の写真から分かりますように、本体と木製台座とはボルトとナットで連結してあるんです(特に、男の方の人形の台座の底部のフエルトの中心部が古くなって破れていますので、その様相がよく分かります。)。また、使用されているフエルトは、いかにもヨーロッパ製という感じなんですよね。
男の人形の台座の底部
女の人形の台座の底部
このようなことから、いかにもヨーロッパ帰りということがわかる人形なわけです。
しかし、考えてみますと、ここまでやるには、相当な費用がかかると思われますよね。それだけの費用を払ってまでもこのようなことを実行しようとしたのですから、当時は大変に貴重がられ、大切にされたのだろうと思われます。
これまた、そこまでして大切にされたわけですから、「ヨーロッパでは、どのような人が、どのような目的に使用したのであろうか?」とのロマンをかき立ててくれるものではありますね(^-^*)
ところで、女と思われる方の人形は、実は女ではないのではないかと言う方もいるようです(~_~;) 「ざん切り頭」の男ではないかと言うわけです。「ざん切り頭」といえば明治ですよね。それで、これは夫婦一対ではなく、共に男で、時代も明治ではないかというわけです。
確かに、強いてそんな風に見ればそんな風に見えないこともないですが、二体はよく似てはいますが、よく見ますと、男の方はチョンマゲですし、顔の表情だってそれぞれに違っていますよね。
また、女と思われる方の人形が「ざん切り頭」ではないかということですが、これも、よく見ますと、「髷」を結っていると思うんです。
江戸時代から明治時代を通じて最も代表的な女性の髪型は、島田髷と丸髷だったようですね。そして、未婚女性は島田髷を結い、既婚女性は丸髷を結っていたようです。この女と思われる方の人形は夫人と思われますので、既婚者ですから、丸髷を結っているはずですね。
ところで、この丸髷は、年齢が若いほどこの髷形が大きく、中年、老年となるにしたがい、髷型も小さく、地味になっていったようですね。この夫人は、中年以上なので、髷型も小さく地味に結っているのだろうと思われるわけです。
ということから、この女と思われる人形は、やはり女で、2体の人形は夫婦だろうと思うわけです。そして、ともに、製作年代は、伊万里が盛んに海外に輸出されていた頃の江戸時代中期であろうと思うわけです。
それでは、次に、この男女人形を、1体毎に紹介いたします。
男の人形の正面
男の人形の右側面
男の人形の背面
男の人形の背面の拡大
光線をかざして見ますと、着物には文様が施してあることが分かります。
男の人形の左側面
女の人形の正面
女の人形の右側面
小さく地味ながら、丸髷を結っていると思われます。
女の人形の背面
小さく地味ながら、丸髷を結っていると思われます。
女の人形の背面の拡大
光線をかざして見ますと、着物には文様が施してあることが分かります。文様は、背中のほうにまで施されていたように思われます。
女の人形の左側面
小さく地味ながら、丸髷を結っていると思われます。
生 産 地 : 肥前・有田
製作年代: 江戸時代中期
サ イ ズ : 高さ;男(本体のみ)13.8cm 女(本体のみ)13.3cm
追記(令和3年4月11日)
この人形は、本体と木製台座がボルトとナットで連結されているわけですが、遅生さんから、その状態の詳細を知りたいとのリクエストがありましたので、その状態の写真を次に紹介したいと思います。
なお、私は、現状をなるべく損なわないようにしたいと考えておりますので、その範囲での分解などに止めておりますことをご了承ください。
締付用ナット 木製台座 本体と木製台座との間のパッキング 本体
本体底部の拡大
人形等は、焼成時の内部の空気膨張による破裂を避けるため、底部等に空気穴を開けて焼成するわけですが、この人形の場合は、底部に穴が開けられて焼成されたものと思われます。
その空気穴にボルトを接着材のようなもので固定し、そのボルトに緩衝用のパッキングを先ず差し込み、更に台座を差し込み、しかる後にナットをボルトに嵌めて回して締め付けたものと思われます。
初めて見ました。
輸出されていたのですね。
やはり男女に見えますね。髷もみえますね。
打ち合わせを見るのですがハッキリはわからないです。
よくある(といっても本物は極めて稀)元禄美人の陶人形ではなく、渋い日本人男女。こちらの方が貴重だと思います。
二人とも扇を持っているので、何かお祝いの場面でしょうか。
フェルト台も付いて、大切にされてきたのですね。
私としては、ボルトでどうやって固定しているのかに興味があります。
研究熱心なDrなので、リスク覚悟で分解?(^.^)
本来は輸出向けの物ではなく、国内向けの風俗人形だったものが、何らかの事情で海外に流れて行ったのではないかと思っています。
やはり、男女に見えますか。
それに、髷も見えますか。女性からそのように言われると大変に嬉しいです(^-^*)
この人形の時代鑑定は、女性の人形に髷が有るか無いかが大きなポイントになりますので、、、。
上で、つや姫さんへのコメントにも書きましたが、これは、本来は輸出用ではなく、国内向けの風俗人形だったものが、何らかの事情で海外に流れて行ったのではないかと思っています。
二人とも扇を持っていますので、何かのお祝いの場面のものなんでしょうね。
ボルトでどうやって固定しているのかに興味がありますか。
ある程度までは分解出来ますので、その状態を明日の昼間に写真を撮り、追記します。
女性の方は顔つきや髪型、肩の円みから
女性と思いましたが、黒紋付きに仙台平の
袴?・・・女性もこんな服装をするのですか?
古い伊万里焼には、人形も多く登場してきます。
その内で有名な物は柿右衛門人形です。これよりももっと大きなものが多いですね。
やはり、男女共に作られていますが、女性の物のほうが人気が高いようですね。そのようなものは、我が家には、1体しかありません(~_~;) しかも、人気の薄い男のほうのものだけです(~_~;)
この人形は、女性の方も男性と同じ服装をしているところに問題を残していますよね。また、女性の髪型も、普通の江戸時代の女性の髪型とちょっと変わっているところにも問題を残していますよね。
多分、風俗人形だと思いますので、有田周辺の江戸時代の風習を調べれば確定するのではないかと思っているんです。
何かの祝いの場面の人形だろうと思いますので、調べる切っ掛けはあるのですが、それを調べるだけの情熱がありません(><)
仕組みが大変よくわかりました。
かなりしっかりとした細工をしていますね。
最大の疑問は、どうして台座を付けたかということです。
人形の安定性を増すため?
外国の部屋には少し貧相なので、下駄を履かせた?
いずれも、これだけの手間をかける理由にしては弱い気がするのですが(^.^)
仕組みがよくわかりましたか。
ありがとうございます(^-^*)
そうですよね。外国の部屋のサイズにしては小さいですよね。
どんな目的で、わざわざお金をかけて、こんな細工を施したのでしょうかね?
これまた、あちらさんの考えは、我々には想像を絶しますので、分かりませんね(~_~;)