今回は、「染付 草花文 小皿」の紹介です。
この「染付 草花文 小皿」につきましては、このブログでも、既に、2020年5月9日に『「初期伊万里の小皿」と「くらわんか手の小皿」』という記事の中で、チラリとは紹介しているのですが、ここで改めて紹介したいと思います。
これは、いわゆる「くらわんか皿」と言われるものですね。
表面
裏面
生 産 地 : 肥前・波佐見
製作年代: 江戸時代後期
サ イ ズ ; 口径;12.3cm 底径;4.9cm
ところで、私は、これを、平成15年に(今から18年前に)、骨董市で買ったものです。
その頃は、私も、まだまだ不勉強で、これは有田で江戸時代前期に作られたものと思っていました(~_~;) ただ、時代的には初期伊万里よりは新しいものだとは思っていましたが、、、。
その後、平成24年3月1日に、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で紹介していますけれども、その頃になりますと、私の勉強の成果も少しは上がってきたとみえ、この「染付 草花文 小皿」を江戸後期に波佐見で作られたものとして紹介しています。
そのようなことなものですから、役には立たないでしょうけれども、そのかつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中でこの小皿を紹介した部分の文章を次に紹介したいと思います。
蛇足の感を免れませんが、暇潰しにお読みいただければ嬉しいです(^_^)
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<古伊万里への誘い>
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*古伊万里ギャラリー168 伊万里染付くらわんか手小皿 (平成24年3月1日登載)
この小皿には、
① 成形が厚手で、その分手取りも重い。
② 陶石に鉄分を多く含むため、鼠色がかった地肌である。
③ 重ね積みして焼成するため、熔着防止用に、見込みを蛇の目状に釉剥ぎしている。
④ 高台が小さい。
⑤ 絵付けは粗雑である。
という特徴がある。
これは、従来、「初期伊万里」の特徴と言われてきたものとほぼ同じである。
従来の鑑賞眼からすれば、この小皿は、「初期伊万里」に該当するであろう。
しかし、これらの特徴は、いわば、古伊万里を美術鑑賞の面から捉えたものであろうと思う。
でも、そもそも、伊万里が、美術工芸品として作られたものではなく、産業として作られたものであることに思い致せば、見方もまた自ずと違ってこよう。
ここで、江戸後期になり、鍋島藩の隣の大村藩内の波佐見で、伊万里よりも低価格のものを大量に生産し、流通市場に打って出ていった「くらわんか」というものがあることに注目しなければならない。
今で言う、価格破壊商品というものであろう。
その「くらわんか」は、結果的に、従来言われてきた「初期伊万里」の特徴によく似ているのである。
この小皿は、やはり、「くらわんか」に属するものと思っている。
江戸時代後期 口径 : 12.3cm 高台径 : 4.9cm
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*古伊万里バカ日誌99 古伊万里との対話(くらわんか小皿)(平成24年3月1日登載)(平成24年2月筆)
登場人物
主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
くらわんか (伊万里染付くらわんか手小皿)
・・・・・プロローグ・・・・・
主人は、押入れ内をガサゴソ物色していたが、何やら、粗雑な作りのパットしないものを見つけたようで、さっそく引っ張り出してきて対話をはじめた。
主人: お前は何時見てもパットしないな~。いかにも安っぽく見えるね~。
くらわんか: しょうがないでしょう! もともとそのように作られて生まれてきたんですから(プンプン)。
でも、「初期伊万里」さんなんか、私と同じようでしょう。それでも、高く評価され、値段も高いではないですか!
主人: そうなんだよね。私も、お前を見た瞬間、「あっ、これは初期伊万里だ! 否、それよりももっと古い草創期の伊万里だ!」と思って飛びついて買ったんだよね。
だがね、買ってきて、手元に置いてしばらく眺めていたら、なんか、違和感を覚えるようになったんだ。
くらわんか: なにか根拠があるんですか。
主人: 草創期の伊万里は、造形法についてのみならず、登り窯で焼くとか、砂目積して重ね焼きをするとかの窯詰め法や焼成法等の基本的な部分については李朝陶技によっているけれど、染付技術は朝鮮半島からの渡来の陶工にはなかったと思われるので、染付技術などは中国陶技によるものだと言われているんだ。つまり、伊万里焼については、当初から、より高度な中国陶技の影響もあったと言われているわけだね。だから、磁器である伊万里焼は、当初から、より高度な技術も取り入れられて作られているので、そんなに粗雑で稚拙ではなかったわけだ。
くらわんか: でも、草創期のものは、素朴で稚拙に見えるというではないですか。そこにナイーブな美があるとか・・・・・。
主人: それは作られた神話だね。
こと伊万里に関してはそんなことはなかったと思っているよ。
そもそも窯業は、半農半陶の田園的・牧歌的な作陶生活の中で生産するならともかく、専業として、製陶業として成り立たせるためには、大量生産し、しかも高級な商品として生産し、広範囲に流通させなければならなかったと思う。そうでなければ、採算が合わず、成り立たなかったと思うからだ。その点、伊万里の場合は、流通に関しては、既に唐津焼が先導的役割を果し、開拓していたから恵まれていたといえるね。
だから、伊万里の窯も、当初は、陶器である唐津焼と磁器とを同一の窯の中で併焼していたが、磁器が商品として大量に売れる、磁器が専業として成り立つという見込みが立つや否や、続々と磁器専業窯に転向していったわけだ。
くらわんか: そうは言っても、現実には、その草創期に作られた磁器は、私のような、素朴で稚拙ともいえるようなものだったのではないですか?
主人: そうだよね。昔はそのように思われてきた。初期伊万里の中でも最も早い頃の物だとね。私もそのように思い込んでいたものだから見誤った。
しかし、より高度な技術が駆使され、大量生産の中で高級品として商品化されて生まれてきたものには、もっとシャープな、キリットしたところがあるね。素朴で稚拙なナイーブさを売り物にするような、感傷的で甘ったれた態度は微塵も伺えないな。そのことは、発掘出土品が明瞭に証明しているよ。
くらわんか: それでは、私は、何時頃作られたんでしょうか?
主人: 初期伊万里が作られた時代よりはず~っと遅く、江戸時代も後期の頃になって作られたのではないかな。
それに、作られた場所も、鍋島藩領内の有田ではなく、その近くの、鍋島藩のお隣の大村藩領内の波佐見で作られたものだと思う。
くらわんか: そうしますと、私は、「古伊万里」とは言えないんですか・・・・・。
主人: そうね。人によっては、「伊万里焼」ではなく「波佐見焼」だと言うね。
ただ、私は、肥前地域一帯で焼かれた磁器はすべて「伊万里焼」と考えているんだ。その内の古いものを「古伊万里」と考えているわけだ。だから、波佐見で焼かれたお前も「古伊万里」だと考えているよ。平戸で焼かれたものでも「古伊万里」と考えているね。
でも、「波佐見焼」や「平戸焼」を「伊万里焼」と一緒にしたくはないとの意見も強いので、それらの意見と妥協し、当面、「波佐見焼」の場合は、その代表的なものが「くらわんか」なので、「伊万里○○くらわんか手××」というように表示し、「平戸焼」の場合は、「伊万里○○平戸手××」というように表示しようと考えているんだ。
くらわんか: そうしますと、私は、俗に言う「くらわんか皿」に属するんですね。
主人: そうだね。
くらわんか: しつこいようですが、「くらわんか皿」と言いますと、例えば、「古伊万里ギャラリー130」にある中皿(このブログでは、2021年3月19日紹介の「色絵くらわんか中皿」
)のようなものが典型的なもので、これに類似しているのであれば、私も納得しますが、私の場合は、どうも、これとは違うように思うんですよね。
主人: お前は、「古伊万里ギャラリー130」の中皿(このブログでは、2021年3月19日紹介の「色絵くらわんか中皿」)よりもず~っと古そうに見えるけど、残念ながら、「古伊万里ギャラリー130」の中皿(このブログでは、2021年3月19日紹介の「色絵くらわんか中皿」)よりは若干古い程度じゃないのかな。古伊万里草創期からはずれると、そこにしか行き場がないんだよ。
(注) 文中、対話形式としましたことから、その流れの中で、「伊万里」、「伊万里焼」、「古伊万里」と、呼び方がいろいろになってしまいました。混乱されるかもしれませんが、基本的には、「伊万里」=「伊万里焼」=「古伊万里」としてお読みいただければ幸いです。
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結局は、これは、波佐見のくらわんか手ということになりました。
波佐見で元禄頃から、大量生産されていたようです。
特に、江戸後期になりますと、膨大な量を作り、全国に出荷し、庶民の日用に供したようです。
そのようなこともあって、多くの方に愛されるように作られてきたこともあり、今なお、多くの方に愛されているのだと思います(^-^*)
お勉強させて頂きました。
好きか嫌いかでしか言えないのですが
このお皿は好きです。♪
ずっと見ていられます。
このような皿をくらわんか手というのですね。
やはり、初期伊万里だったのかと、複雑な心境です。
更に、もう少し意見が出てきて落ち着きましたら、報告したいと思います。
しかし、冷静に考えると、釉剥ぎ染付の創成期伊万里皿がそうそう転がっているはずはないですよね(^.^)
私も、他ジャンルの波佐見を多数所有しています(^^;