Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

伊万里 色絵 人物文陶板=菓子器仕立て

2020年11月09日 13時29分39秒 | 古伊万里

 今回は、「伊万里 色絵 人物文陶板=菓子器仕立て」の紹介です。

 

陶板が菓子器に仕立てられ、「菓子器」と書かれた箱に収まっています。

 

 

菓子器に仕立てられた陶板

 

 

菓子器に仕立てられた陶板の裏面

 

 

陶板部分のみの写真

 

 

陶板部分の人物文部分のみの写真

 

 

製作年代: 江戸時代中期

サ イ  ズ: 枠の外周;19.5×19.5cm   陶板部分;11.5×11.5cm

 

 

 

 これについても、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」で既に紹介済みですが、次に、それを再度紹介することで、この「伊万里 色絵 人物文陶板=菓子器仕立て」の紹介に代えさせていただきます。

 

 

 



 

         <古伊万里への誘い>

 


 

*古伊万里ギャラリー98 古伊万里様式色絵人物文陶板=菓子器仕立て (平成18年6月1日登載)

 

           表面                陶板部分の拡大               裏面

 

 

 この種のものは、南京赤絵や天啓赤絵によく登場する。そして、その絵のオリジナルは、中国明末に安徽省で刊行された「八種画譜」等に登場する。

 私も、最初、これは南京赤絵か天啓赤絵かと思ったが、やはり古伊万里であろうと思っている。

 伊万里においては、南京赤絵や天啓赤絵をお手本として、さかんにその写しを作っているし、直接、「八種画譜」等をお手本として作っている。

 つまり、この種のものは、中国の景徳鎮でも作られているし、日本の肥前地域でも作られているわけである。

 従って、この陶板がどちらで作られたかが問題となるが、木枠で囲まれ、「菓子器」に仕立てられてしまっているので、表面だけしか見えないわけで、その判断が難しい。肝心の裏面が見えず、表面だけからしか判断せざるをえないわけであるが、絵の線の調子、釉薬の色合い、磁器の肌合い等から判断して、私は日本製であると思っている。

 江戸時代中期    枠の外周 : 19.5cm×19.5cm ( 陶板 : 11.5cm×11.5cm )

 

 


 

*古伊万里バカ日誌37 古伊万里との対話(菓子器仕立ての陶板) 平成18年5月筆)

 

登場人物
  主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
  陶 男 (古伊万里様式色絵人物文陶板=菓子器仕立て)

 

            箱と共に               表面                  裏面

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 主人は、前回、網目文の小壷を見つけ出してきて対話をしたところである。ところが、網目文の小壷と対話をしていたら、ちょうどその網目文の小壷を買った頃に、網目文の小壷を売っていた骨董屋から、ちょっと変わった面白い物を買っていたことに気付いたようである。
 そこで、押入れの奥の方から、くだんの「ちょっと変わった面白い物」を汗だくになりながら引っ張り出してきて対話をはじめた。

 

  

主人: いや~、ずいぶんと暑くなってきた。もっとも、もう6月だものな。お前を引っ張り出してくるのに汗をかいてしまった。なにせ、押入れの奥の方にいるからな!

陶男: 奥の方に入れっぱなしだからじゃないですか! 私がこの家に来ましたのが昭和58年ですから、20年以上も太陽を拝んでないことになりますよ!!

主人: 悪い悪い。最初は、珍しいんで、眺めたり使ったりしていたんだけれど・・・。なにせ木の枠だろう。木の枠だと、傷付いたり、変形したりしそうなので、ついつい使いづらくなって、押入れに入れて、それっきりになってしまったのさ。

陶男: そんなに使い惜しみしないで、どんどん使って、木枠が壊れたら木枠をはずして、今度は陶板として鑑賞されてはどうですか。 

主人: 確かに、私もそう思ったこともあったよ。でもね、お前は古い箱に入っていて、その箱には「菓子器」と書いてあるんだよ。せっかく「菓子器」として仕立てられたんだから、それはそれとして大事に保存しようと思ってね。 

陶男: 私は、最初から「菓子器」とするために作られたのでしょうか?

主人: う~ん? それはよくわからないな。少なくとも、お皿などの中心部分でないことは確かだね。お皿の縁の部分が割れてしまったので、中心部分だけを四角に削り取って作ったものでないことだけは確かだと思うよ。湾曲してなくて平だからね。恐らく、陶板として作られたのだと思う。どのような目的のための陶板だったかは知らないけど・・・・・。それを、誰かが、「菓子器」に仕立てたんだろうと思ってるんだけどね。

陶男: そうですか。わかりました。
 ところで、私は、何時、何処で生まれたのでしょうか。

主人: 戸籍調べだな。
 ハハハ。確かに気になるところだね。ところがね、私にも正直よくわからないんだよ(笑)。

陶男: えっ? ご主人様ほどのお方でも時代判定ができないんですか!(軽蔑のまなざし)

主人: ん? それはどういう意味だ。褒めてるのか? 貶してるのか?

陶男: 勿論、褒めているつもりですとも。(「アカンベー」をしている。)

主人: だってね、お前は表面だけしか見えないだろう。表面の一部だけから判定するのにはむずかしいものがあるんだよね。

陶男: そんなものですか。ご主人様ほどのお方なら、表面だけでも十分に判定できると思いましたが。(再び軽蔑のまなざし。)

主人: いや~、そんなに簡単ではないな。「やきもの」の鑑定というのはな。
 いかにも自信たっぷりに、大きな声で、断定的に言えば、聞いた人には十分に説得力を与えるように感じるだろうけど、自分自身が納得しないね。良心の呵責が許さないというやつだね。
 お前は、表面だけ見てると、中国明末の天啓赤絵といっても通るだろう。今でこそ「古伊万里」というものが評価されているが、以前は、古伊万里は「型物」と言われるような極く一部のものしか古伊万里としては評価されていなかったから、もしお前が「古伊万里」だったとしたら、「菓子器」に仕立てられた当時は、全く評価されず相手にされなかったろうね。
 お前には悪いが、私は、お前を天啓赤絵写しの「古伊万里」だと思っているんだ。でもね、私は天啓赤絵よりは「古伊万里」の方が好きだから、お前を「古伊万里」と思ったからこそ買ったんだよ。

陶男: それはそれはありがとうございます。

主人: それにしても、お前を見るたびに、木枠を壊して裏を見たくなるね。「やきもの」の鑑定には、裏の、特に高台等の釉薬のかからない土見せの部分がポイントだからな。素地の色、性質、削り具合等の作業方法等、鑑定のポイントがいっぱい詰まっているからね。「やきもの」の鑑定にはお尻がポイントだよ。ニワトリだってそうだろう。ニワトリのヒナの雌雄の判別はお尻でするよね。

陶男: なるほど。(へんな所で感心)

主人: 思えば、「やきもの」の尻を追いかけまわして30有余年がたった。お前達にとってはいやなやつだったろうと思うね。でも、人間の尻を追いかけまわさないで済んだので人生を踏み外さないですんだと思っている。その点、お前達に感謝するよ。


最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Dr.Kさんへ (遅生)
2020-11-09 14:29:01
これは珍しい。
私も、最初、南京赤絵かと思いました。
でも、筆使いや色、人物の表情からして、和物ですね。
陶板の用途といっても、硯屏くらいしかないですから、これはひょっとして、この菓子器のために作られた品かも知れませんね。
先日の南蛮小壺に続いて、珍品中の珍品です。
正直、欲しい、です(^.^)
返信する
こんにちは (つや姫日記)
2020-11-09 14:48:56
素敵な陶板というか菓子器ですね。
絵を見ていると
心が落ち着きます。

それと主人の最後の言葉が
良いですね♪
熱中する物があるって素晴らしいです。
返信する
遅生さんへ (Dr.K)
2020-11-09 16:19:59
遅生さんも、和物と見てくれましたか(^_^)
陶板の外周の文様などを見ても、和物の感じはしますよね。
でも、やはり、裏面を見られないのが残念です(><)
焼き物は、裏面を見ることが大事ですよね。
なんか、もどかしいんですが、木枠を壊すのもはばかられますしで、気分がすっきりしません(><)
返信する
つや姫日記さんへ (Dr.K)
2020-11-09 16:29:50
陶板を菓子器に仕立てたらしいです。
素敵に思われましたか。ありがとうございます(^_^)

陶板の絵を見ていると心が落ち着きますか。
この陶板の絵には、そんな力があるんですね。ありがとうございます(^-^*)

未だに古伊万里ばっかりを追いかけ回しています(__;)
古伊万里にとっては迷惑かもしれませんが、我慢してもらいましょう、、、(笑)。
返信する
Unknown (不あがり)
2020-11-09 19:04:03
Dr.K様へ
先ずはお詫びから。先程、昼過ぎからインスタの動作がおかしくなっておりまして。先ず『いいね』が押せない。押しても、『時間をおいて・・』となりまして。何時間経っても同じです。コメントも拒否されます。コメントが出来ても先程確認に行くと消されております。参っております。
所で私はこういう品物を初めてみます。インスタで縁文様に桜が描かれているので伊万里ではと書かれている方がおられて。成程となりますが。私にはわかりません。こちらに来て、この品物が何で裏を見る事が出来ないのか分かりました(笑)。これはバラせないないですよね(笑)。大切にして下さい。勉強になりました。有難うございます。
返信する
Dr.kさんへ (酒田の人)
2020-11-09 23:20:40
 伊万里で陶板というのは見たことがありません、それだけでも相当な珍品のはずですが
それを菓子器に仕立てるというのは、明治あたりの数寄者のような発想で、すごいセンスを感じます。
確かに表面だけでは判らない部分はありますが、絵の感じとかかは伊万里の雰囲気が強いようには思われます。
それにしても世の中には個性的な品があるものですね。
返信する
不あがりさんへ (Dr.K)
2020-11-11 10:16:54
パソコンの機嫌が直ったようで、よかったですね(^_^)

こちらからも、リコメが遅れてしまったことを、お詫びいたします。
昨日は、所用で、車で東京まで行ってきました。それで、遅れてしまいました。


これの裏が見えないことを理解していただけましたか(^_^)
パソコンからのインスタへの投稿(インスタではポストとか言ってますね、、)では、写真を1枚づつしか送れませんので、必要最小限になってしまって、なかなか理解出来ないところがあるでしょうね。
不あがりさんは、常日頃言ってますよね。「焼き物は高台が命だって」。
そうなんですよね、その命に当たる裏面が見えないんです(><)
もどかしい限りなんですが、せっかく菓子器に仕立てられた木枠を破壊する勇気もなく、そのままにしています。
このままにし、後生の方の判断に任せたいと思います。
返信する
酒田の人さんへ (Dr.K)
2020-11-11 10:26:46
伊万里では、何処かの寺院の側壁の一部を飾った柿右衛門の陶板が有名ですよね。でも、それは、かなり大きなものですよね。
しかし、確かに、このように小さな陶板は見かけませんよね。
それで、皿の一部を切り取って陶板に加工したのかなとも考えたんですが、それでもなさそうなんです。薄くて軽いんです。皿の一部だとすれば、もっと重くなりそうですから、、、。
まっ、伊万里ではいろんなものを作っていますから、このようなものも作ったのだろうと思うことにしたわけです(^_^)

<絵の感じとかかは伊万里の雰囲気が強いようには思われます>か。ご賛同、ありがとうございます(^-^*)
返信する

コメントを投稿