北国の 山地渓流で 水商売

1998年06月09日 | 川について
 昨年に引き続いて今年も青森県において魚類調査を行うことになり,先週の3日~4日の2日間出張した。朝一番の飛行機で出掛けて翌日の最終便で戻るといった,例によってセワシナイ調査旅行ではある。今年度の調査対象河川はなかなかに魅力的な川で,かの有名な“世界遺産”白神山地にその源を発し,緑深いブナ原生林のなかを緩やかに谷を刻んで北流し,鯵ヶ沢海岸付近で日本海へと流出する二級河川赤石川である。

 折悪しく東北地方もちょうど梅雨入りした時期にあたり,調査中は終日ほぼ雨,時おり横なぐりの強い雨にも降られた。それでも,河川の水量がかなり増えたにもかかわらず中流域から上流域にかけての一帯では濁水はほとんど発生しない。さすがに豊かな森林に涵養された水系の証左である。

 中流域の早瀬に入り,サデ網やタモ網を使って魚類を採捕する。この魚を採るという行為,通常の川漁師であればある特定の魚種をなるべく効率よく沢山捕まえるのが本筋であろうが,私共の調査の主旨からすると数は少なくてもよいからなるべく多くの種類の魚を採捕することが第一に要求される。すなわち“川魚の住民基本台帳”作りを行うわけです。従って,例えばある地点の瀬を調査対象としたときに,カジカばっかり採っていたのでは全く埒があかない(佃煮にするわけじゃないんだから!) そこで,一見したところ同じように見える瀬で調査を行う場合でも,環境が少しづつ異なる場所でそれぞれに網を探る。具体的には,河床礫のサイズと配列,水深,水際からの距離,流速,水辺カバーの状態など,さまざまな環境構成要素を“魚の住みか”という視点から改めて点検・分類・再構成するのだ。

 すると,ある場所ではカジカが採れる。また別の場所ではまだ体長10cmにも満たない遡上稚アユが,美しい銀鱗ひらめかせて採れる。さらに,のっそりとしたシマウキゴリが採れる。ウグイの1才魚なども採れる。それから,おっとこれは珍しいことにアブラハヤが採れることもある(君は居場所が違うでしょ!).... とまぁ,当たり前のように申しておりますが,実際にはそう簡単にこちらの都合どおりに魚が採れるわけではない。むしろ予想を大幅にはぐらかされて失望したり,逆に意外な成果に喜んだりすることも多い。言ってみれば“お客”の気まぐれに付き合う“水商売”稼業,たかが魚採りとはいい乍らこれでなかなかに難しいものがございます。

 なお蛇足ながら,今年の調査には昨年に引き続いてA大学からS教授と学生2名が参加した。例のB助教授は(幸いなことに!)今回は不参加であった。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第三世界に向けての応援歌 ... | トップ | おとうさん,ダメじゃないかー! »
最新の画像もっと見る

川について」カテゴリの最新記事