平御幸(Miyuki.Taira)の鳥瞰図

古代史において夥しい新事実を公開する平御幸(Miyuki.Taira)が、独自の視点を日常に向けたものを書いています。

オカルトスピーカー

2011-01-14 01:20:25 | スピーカー工作
 更新が滞っていますが、スピーカーの設計・製作とは別に、引越しの話が持ち上がっていて、23日の試聴会を前にして超忙しい感じです(心理的に忙しいだけ)。引越しについては決まってから書こうと思ったのですが、ほぼ決まったので報告してもよいかなと判断しました。今回は広いスペースなので、冷蔵庫や電子レンジも置けます。詳しくは引越しが終わってから書きますが、選挙に出るわけではありませんが引っ越し祝いのティーパーティーを予定しています。

 スピーカー製作は、ケルビムジュニアのあとでスーパーケルビムを予定していますが、バックロードホーンは楽器であるとする自説について解説しておきたいと思います。どうも、ちまたではオカルトスピーカーが幅を効かせてきたようですし、そういうものを撲滅するためにも正しいスピーカー理論は必要不可欠です。

 オカルトスピーカーと言えば、あの蛆テレビの小倉智昭が番組中で絶賛したとされる、エムズシステムの波動スピーカーが代表です。丸めたダンボールの両端に、フォステクス製のローコストユニットを取り付けただけで十数万円というぼろ儲けの値段。こんなのを買う馬鹿が居るんですね。小倉智昭というだけで、胡散臭さがスカンク並みです。コストだけならば、弟子や徳島や愛知の小ミカエルと変わりません。

 オカルトスピーカーの二つ目は、寺垣波動スピーカーと呼ばれるもので、どちらも波動という言葉で騙すテクニックです。読者の中にもころっと騙されている人がいるかも知れないので、波動スピーカーの原理を解説します。

 寺垣氏が原理説明に使うのは、オルゴールとカーボン製のゴルフクラブと薄い紙や下敷きです。動画のコメントに次のような事が書かれていました。

“寺垣さんが私たちにオルゴールに繋いだ炭素棒と、その先に紙を押し当て、振動ではない音(物質を伝わって伝播する物質波)が出ること実験してみせてくれます”

 この説明で分かるように、オルゴールの振動がゴルフクラブを伝い、ゴルフクラブが曲げた板を響かせているのです。ですから、普通のスピーカーユニットの原理と全く変わりません。スピーカーユニットの原理とは、コイルを巻いたボイスコイルが磁界の中に置かれ、電気信号が加わったときに前後運動するエネルギーを振動板に伝える方法です。

① オルゴール=ボイスコイル
② ゴルフクラブ=ボイスコイルを巻いた筒(あるいはボンド)
③ 湾曲した紙や下敷き=振動板

 板を曲げると音の放射効率が良くなるので、弦楽器は曲面多用なのです。このような構図ですから、波動スピーカーは新しくもない言葉遊びだけの理論だと分かります。異なるのは、寺垣スピーカーやエムズシステムはキャビネットを振動板の延長として積極的に鳴らすことにあります。キャビネットが振動することで、無指向性に近い音が放出され、弦楽器と同じような音場感が得られるのです。氏が言うような、横波による音波の伝達などではないのです。第一、横波は聞こえないのですから。また、振動ではない音はこの世に存在しません。

 キャビネットを鳴らすということは、必然的に高域が伸びないことになります。高域を伸ばすにはヴァイオリンより小さなキャビネットにしなくてはなりません。逆に、低域を伸ばすには、コントラバスのような巨大なキャビネットが必要なのです。一台のキャビネットで、低域も広域もと欲張ると失敗します。高域が伸びないから、寺垣スピーカーは周波数特性を公表できないのです。

 鈴虫やセミの発音原理は、羽をこすり合わせて羽を振動させる鈴虫と、腹を振動させて音を出すセミとでは少し違います。鈴虫は弦楽器と同じ発音原理ですが、鈴虫は開いた羽でホーン効果を生み、セミは腹の空洞共振で音を増幅させます。音の増幅原理から見ると、セミは弦楽器に近く、鈴虫は管楽器に近いのです。

 僕が自分のバックロードホーンは楽器であるとする理由は、キャビネットを盛大に鳴らしているからではありません。キャビネットを盛大に鳴らすのなら、往年のアルテックの巨大同軸スピーカーでも良いのです。では、バックロードホーンは楽器とどのような共通性があるのか?

 実は、バックロードホーンは空気室とスロートというものがホーンの前に付いています。これが共鳴管との大きな違いなのです。でも、空気室とスロートの必要性について理解している人は極めて少ないのです。理解していなくても、体験的にあったほうが良いと帰結するので、空気室とスロートは勘所で設計されるのです。

 しかし、スロートというのは、単にラッパの吹き口というものではないのです。というのも、空気室から出る音波は、空気室内で反射して、波形が入り乱れた汚い状態でスロートに向かいます。ところが、スロートは面積が絞られているので、ここで音波が通りやすい状態に変化するのです。日本人は整列乗車が好きですが、音波も整列乗車が好きな性質を持っているのです。要するに、音波はエネルギー効率のよい方に向かうのです→こちらのサイトで仮想実験汁。

 この結果、スロートを通過した音波は波形が整理され、極めて綺麗な波形として管の中を進みます。そして、広がる管の途中で波形が乱れても、次に抵抗が大きくなる箇所でまた整列に向かうのです。ですから、スロートや管の途中の抵抗の大きい場所は、一種のフィルターとして働いているのです。フィルターで漉された綺麗な音波が広がった管から放射される。だから、バックロードホーンは音が澄んでいるのです。

 このように、バックロードホーンは高効率のフィルターを持つトランスデューサー(変換器)でもあるのですが、構造が複雑であることから、板厚や素材などの構成要因の少しの変化で音が大きく変わります。温度や湿度の変化で響きの変わる楽器と同じなのです。もちろん、演奏家の腕と同じように、セッティングや使うユニットとのマッチングも大切になってきます。

 バックロードホーンは楽器である。とんでも理論でオカルトスピーカーを作った寺垣氏がドン・キホーテなら、この世にドン・キホーテを愛する人間がいるように、彼の作品も存在価値はあるのかもしれません。でも、何百万円もかけなくても、楽器のような音場感を持つスピーカーはいくらでも作れます。僕は、騙す方にも騙される方にも関心はありません。騙される人は、きっと自分の耳に自信がないんでしょうね。

      エフライム工房 平御幸
コメント (3)
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