歴程日誌 ー創造的無と統合的経験ー

Process Diary
Creative Nothingness & Integrative Experience

コスモスと実存 時間の原子論批判 (1)

2007-04-14 | 哲学 Philosophy

付録1フォードの「時間の原子論(temporal atomism)」の批判

  ルイス・フォードはホワイトヘッドの時間論を「時間の原子論」(temporal atomism)として特徴付けた。小乗仏教の説一切有部の「刹那滅」の形而上学にもにた思想は、ホワイトヘッドの云う「エポック的時間論」をフォードの立場から解釈したものである。ホワイトヘッド解釈としてもこの説は様々な問題を孕むが、私は、事柄自体として、時間の原子論(フォード)いう議論は成立しないと考える。そのわけは、いうところの時間の「原子」がいかほど持続するか、という計量に関する問に難点が潜むからである。事柄は、時間の原子論を、4次元時空の原子論として一般化してもこの困難は解消されない。その理由を以下に説明しよう。

 時間の原子(刹那説)や時空の素領域を考えるものは、基本的に相対性理論以前の時空理解に立脚している。すなわち、拡がりを有つ閉ざされた有限の領域に不変の計量を与えることが出来るという前提である。これは時間と空間を分離して考える古典物理学の近傍概念であり、非相対論的な概念である。

ニュートン物理学では、時間的な近さと空間的な近さは、それぞれ独立であって、ある出来事の時間的かつ空間的なε近傍は、時間をdt、空間距離をdlとして|dt|<ε かつ |dl|<εによって表示される。要するに、ニュートン物理学の遠近法は、近傍が有界な閉じた領域を形成するという意味で、基本的には常識と一致するといってよかろう。

これに対して、相対性理論の遠近法は、時間と空間とが不可分離的であるために、dtdlもそれぞれ単独では不変の意味を持ち得ない。そこで、基準座標系の変換にたいして不変であるのは、|ds|<εであり、それは時間的にも空間的にも無限に延長する、開かれた領域であるという特徴を持っている。それは四次元ミンコフスキー時空におけるε近傍が、時間的にも、空間的にも双曲的な構造を持つことによって表されている。ミンコフスキー時空では、(光速度 c=1として)座標時間の経過をdtで、空間座標で表示された距離をdl(dl=(dx2+dy2+dz2)1/2)として、時間的な四次元距離は<v:shapetype id=_x0000_t75 stroked="f" filled="f" path="m@4@5l@4@11@9@11@9@5xe" o:preferrelative="t" o:spt="75" coordsize="21600,21600"> <v:stroke joinstyle="miter"></v:stroke><v:formulas><v:f eqn="if lineDrawn pixelLineWidth 0"></v:f><v:f eqn="sum @0 1 0"></v:f><v:f eqn="sum 0 0 @1"></v:f><v:f eqn="prod @2 1 2"></v:f><v:f eqn="prod @3 21600 pixelWidth"></v:f><v:f eqn="prod @3 21600 pixelHeight"></v:f><v:f eqn="sum @0 0 1"></v:f><v:f eqn="prod @6 1 2"></v:f><v:f eqn="prod @7 21600 pixelWidth"></v:f><v:f eqn="sum @8 21600 0"></v:f><v:f eqn="prod @7 21600 pixelHeight"></v:f><v:f eqn="sum @10 21600 0"></v:f></v:formulas><v:path o:connecttype="rect" gradientshapeok="t" o:extrusionok="f"></v:path><o:lock aspectratio="t" v:ext="edit"></o:lock></v:shapetype><v:shape id=_x0000_i1025 style="WIDTH: 72.75pt; HEIGHT: 15.75pt" type="#_x0000_t75"><v:imagedata o:title="" src="file:///C:/windows/TEMP/msoclip1/01/clip_image001.wmz"></v:imagedata></v:shape>によって、空間的な四次元距離は<v:shape id=_x0000_i1026 style="WIDTH: 72.75pt; HEIGHT: 15.75pt" type="#_x0000_t75"> <v:imagedata o:title="" src="file:///C:/windows/TEMP/msoclip1/01/clip_image003.wmz"></v:imagedata></v:shape>で表示されるから、四次元時空のε近傍は、ニュートン物理学のように、|dt|<ε かつ |dl|<εのような閉じた領域によって与えられるのではなく、|ds|<εによって与えられる双曲的な超曲面で囲まれた領域で表示される。それゆえに、この時空における「今此処」の近傍は光円錐に沿って過去と未来へ向かって限りなく延長しているのである。

 

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