歴程日誌 ー創造的無と統合的経験ー

Process Diary
Creative Nothingness & Integrative Experience

松本馨の信仰と自治会活動 その2

2007-09-11 |  宗教 Religion
一昨年に松本さんが亡くなられた後で、追悼講演会が全生園でありました。 そのとき私は司会を致しましたが、そのとき講演者の大谷藤郎先生から、松本馨さんの伝道誌「小さき聲」を本にして再刊したいものだというお話しがありました。 松本さんご自身も、口述筆記故の誤植を含むこの個人誌を推敲した上で出版したいという願いをもっておられたので、2003年5月から、今日この会場にお見えになっている前田靖晴先生のご協力を得て、校正と推敲の作業が行われました。諸般の事情で、復刻版の出版というわけにはいきませんでしたが、2004年7月に、松本さんご自身によって修正された原本を拡大コピーし全巻を製本したものが数部作成され、一部が全生園のハンセン病図書館に収められました。無教会キリスト教の施設、今井館教友会の図書室にも、初出の「小さき聲」をそのまま複写・製本したものが全巻収められています。また、「小さき聲」の一部はWEB(http://members2.jcom.home.ne.jp/yutaka_tanaka/matumoto/matumoto_index.htm)上でも復刻されていますので、それらを私達は自由に閲覧することが出来ます。
「小さき聲」は、1962年9月17日より1986年の3月1日までの24年間、これが第一期ですが、その間ほぼ毎月刊行され、全部で276号になります。自治会を辞められてから、これは、松本さんご自身が出版を意図されて書かれたと思いますが、第二期の「小さき聲」が、1987年6月15日から1991年の4月15日まで、全部で35号が発行されています。おそらく松本さんが書かれた本の中で最も読まれたものと思いますが、1993年に教文館から出版された「生まれたのは何のために」という本の中に、この第二期の「小さき聲」の一部が収録されています。
それ以外にも松本さんは1971年に、「この病は死に至らず」という本をキリスト教夜間講座出版部から出されています。この本はハンセン病図書館にはありますが、現在では入手しにくい本になっています。この本は、二つの部分から構成されていて、ひとつは第一期の「小さき聲」最初の9年間に書かれたものからの抜粋であり、もう一つは、「多磨」誌に掲載された松本さんの論説が七つ収録されています。その論説は、皆さんに配布された「ハンセン病資料セミナー2007年」という製本された資料にも入っております。つまり1971年当時、松本さんが最初に本を出版されたときに、どうしても一般の方に読んで頂きたい論説として、選んだものです。そのなかに「世界医療センター」、「最後の一人のために」があり、松本馨さんの当時の将来構想の基本になる論文があります。また、「全生園は病んでいる」「組合が強くなるとなぜ患者が泣くのか」のようにセミナー資料には入っていない時局的な論文、「自由を奪うもの」という重要な論文があります。
この「自由」という言葉が、伝道誌「小さき聲」でも多磨誌に書かれた評論でもキーワードになっています。「小さき聲」ではキリスト者の自由とは何かということが繰り返し問われ、また多摩誌に書かれた評論では、隔離された療養所の患者運動の原則はなんであるか、それは自由を求めることであるいう文脈で使われています。つまり自由という言葉が信仰と療養所の患者運動の二つの領域を結びつける役割を果たしています。
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