福音歳時記 博士達のなかの少年イエス
我が父の家にこそ居る少年に博士も親も驚きあやしむ
イエスの両親は律法に従い、毎年過越の祭りの時にエルサレムに上京していたが、イエスが12歳になり、律法を守る義務の生じる年齢になったとき、イエスを同伴してエルサレム神殿に出かけた。ルカによる福音書はそのときのエピソードを語っている。都への上京中、巡礼者は詩編120-134篇を歌った(これらの詩編には「上京の歌」という表題がある)。普通、巡礼者の先頭には女子、そのあとに男子が従ったが、おそらく、マリアはイエスがヨセフと共に居ると思い、ヨセフはイエスがマリアと共に居ると思っていたので、イエスがエルサレムに残っていたことに気づかず、二日間さがした後に、エルサレムに戻り、神殿の中でイエスが博士達(律法学者)と問答をしているのを発見したのであろう。そのときのイエスの言葉ー何故われを尋ぬるか、我はわが父の家に居るべきを知らぬかーは、福音書に記されているイエスの最初の言葉である。
(画像は、ハインリッヒ・ホフマンによる「博士達の中のイエス」(1884))
ルカ傳3:40-52(聖書協会 文語訳聖書-大正改訳)
幼兒は漸に成長して健かになり、智慧みち、かつ神の惠その上にありき。かくてその兩親、過越の祭には年毎にエルサレムに往きぬ。 イエスの十二歳のとき、祭の慣例に遵ひて上りゆき、 祭の日終りて歸る時、その子イエスはエルサレムに止りたまふ。兩親は之を知らずして、道伴のうちに居るならんと思ひ、一日路ゆきて、親族・知邊のうちを尋ぬれど、 遇はぬに因りて復たづねつつエルサレムに歸り、三日ののち、宮にて教師のなかに坐し、かつ聽き、かつ問ひゐ給ふに遇ふ。 聞く者は皆その聰と答とを怪しむ。 兩親イエスを見て、いたく驚き、母は言ふ『兒よ、何故かかる事を我らに爲しぞ、視よ、汝の父と我と憂ひて尋ねたり』 イエス言ひたまふ『何故われを尋ねたるか、我はわが父の家に居るべきを知らぬか』 兩親はその語りたまふ事を悟らず。かくてイエス彼等とともに下り、ナザレに往きて順ひ事へたまふ。其の母これらの事をことごとく心に藏む。イエス智慧も身のたけも彌まさり、神と人とにますます愛せられ給ふ。