山脇先生の紹介された「デイリー東北紙」のサイトは、「大間原発」の再開か工事中止か、核燃料サイクル政策の撤回か続行か、という日本の原子力政策にとって根本的な選択を考える上で、是非とも参照すべき現地の貴重な資料を纏めている。「大間原発」をこれから建設し稼働させることは、単に電力不足を当面補うという如き消極的な意味だけを有つのではない。それは、原爆製造に直結するプルトニウムをウランと混合して燃料として使用する「新原子炉」を認可し、稼働させるという電力会社・経産省・自民党政権の意思表明である。小選挙区のからくりによって圧勝した自民党であるが、原発政策については大多数の国民の意思とは異なる方向に動いている。
原子力発電維持派ないし推進派は、この原子炉建設によって、高速増殖炉「もんじゅ」の致命的な事故によって挫折中の核燃料サイクル政策の継続を狙っている。すでに北朝鮮の千倍以上のプルトニウムの備蓄をしている日本が、それを民生用に使用していなければ、核拡散防止条約に加盟している手前、日本の核武装疑惑をそらすことができないからである。論者によっては、プルトニウムをこのように多量に所有していること自体が潜在的な核抑止力になるという主張をする者さえもいる。彼らは、「エネルギーの安定確保」だけでなく「国防上の配慮」をその論拠の一つに置いているからである。もっとも、現在の日本のように、数多くの原子炉を一箇所に集中させて立地させていることが国防上いかに危険かという議論は、推進派の面々は無視しているようだ。原子炉が一箇所に集中している場所にテロやミサイルによる攻撃をされたならば、日本の受けるその被害は計り知れないだろう。
国防上のみならず、地震の多発する地域、活断層の近い場所に「もんじゅ」のような高速増殖炉を建設したということ自体の危険性ははかりしれない。金属ナトリウム冷却剤としてつかう高速増殖炉は、水とナトリウムを分離しておかなければ爆発事故を起こしやすい。まして地震や津波に遭った場合に、その災害に対してどうやって対応するつもりなのか。その危険性は福島の比ではない。またプルトニウムを混合燃料として使う「大間原発」の周辺にも活断層のある疑いが濃厚であり、この発電所の工事再開そのものに問題があることは、原子力規制委員会の指摘の通りである。