福音歳時記 正月の読書始め
迫り来る「死」を「姉妹」とぞ呼びし人フランシスコの伝記読み始(そ)む
フランシスコについてもっとも信頼できる伝記のひとつは、彼から直接の教えを受けた弟子の一人であるチェラノのトマスの書いた伝記「敬慕する魂の追憶」であろう。
「(師父フランシスコは)仲間の兄弟たちの中でも特に愛していた兄弟たちに、自分と一緒にキリストを賛美するように願い、その帰天まで残されていた僅かな日々を讃美のうちにすごしたのでした。
(師父)自身は、その力の限りを尽くして、次の詩編を唱え始めました。「私は声を限りに主に叫び、私は声を限りに主に願います」云々と。また、嘗て(師父)自身が、神の愛を頌えるように励ますために作り上げた言葉を用いて、神を賛美するように、すべての被造物を招いたのでした。
そして、すべてのものにとって恐ろしく厭わしい死さえも賛美へと鼓舞し、喜び迎え、自分の客に加わるように招いて、「ようこそ、おいでくださいました、わたしの姉妹なる死よ」と言いました。医者に対してはこう言いました。「兄弟なる医者よ、勇気をもって、死が間近になったことを知らせて下さい。死は私にとって命の戸口となるのですから。」
(チェラノのトマスの、アッシジの聖フランシスコの第二伝記(小平正寿・フランソワ・ゲング共訳(あかし書房)257頁より引用)
下図はアッシジの聖フランチェスコ聖堂に描かれたジオットによるフレスコ画の連作「聖フランシスコの生涯」から「小鳥に説教するフランシスコ」