松山櫨(はぜ)復活奮闘日記

失われてしまった松山櫨の景観を復活させようと奮闘していく日々の記録。

櫨色(はじいろ)観察 その4

2007-07-14 22:09:39 | 櫨染(はじぞめ)プロジェクト
今日はいよいよ黄櫨染の話です。
「黄櫨染」

櫨の若芽の煎汁で下染めした後、上から蘇芳を重ね染めしてできる黄褐色です。

「延喜式」巻十四(縫殿寮)にこう書かれています。

黄櫨綾(こうろのあや)一疋(ひき)。
櫨十四斤。蘇芳(すおう)十一斤。酢二升。灰三斛。薪八荷。

蘇芳は南アジア原産のマメ科の植物です。つまり舶来モノ。

紫式部日記の中から引用すると
「色ゆるされたる人々は、
例の青いろ赤いろの唐衣に、地摺の裳、
表着は、おしわたして蘇芳の織物なり。」

高貴な人たちのみ許された色。
憧れと羨ましさの象徴でもありますね。

ところで、なぜこの黄櫨染が天皇の袍色なのでしょうか。
素材の蘇芳が高価だったからでしょうか。
しかし高価だったのは皇太子の黄丹も同じです。
また、黄櫨染は太陽の光を象ったものだと言われてきましたが、
渋い黄褐色がなぜ太陽なのか?
かなり首をかしげてしまいます。

すると、そんな疑問に答えてくれるサイトがありました!

なんと黄櫨染は光によってその色が変わるというのです!
しかも驚いたことに、光を通すと、
その部分だけ赤に変わるという摩訶不思議。

黄櫨染を再現した奥田祐斎氏は
「天皇がお召しになっていた着物が、
ろうそくをともすと真っ赤に変わるのを見て、
当時の人々は、沈んだ太陽がふたたび呼び戻された、
と思ったのでしょう」とコメントしています。

確かに、太陽を象るのに、単純な赤とか黄色じゃなく、
複雑な混色と高い染色技術によって生まれ、
光によって現れる色というところが
まさしく天皇にふさわしい色と思われたのかもしれません。

この黄櫨染、あまりに染め方が微妙だそうで、
歴代天皇の御衣でも同じ色に見えるものはほとんどないそうです。
(色見本はあくまで大体の色だと思ってください。)

前回でも述べたように、黄櫨染の制定は
黄丹が東宮(皇太子)の色だと制定されてから
100年近く経っています。
その一見ゆったりとした時間の中で、
染色職人たちによる、たゆむことのない研究と努力が
世界でも類を見ない「太陽が現れる色」の発明に
繋がっているのではないでしょうか。

天皇の黄櫨染と東宮の黄丹はともに禁色とされ、
今に受け継がれています。

(参考資料・福田邦夫著「すぐわかる日本の伝統色」)

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