以前、久留米市長門石で「長門石ろうそく店」をされていたSさんが櫨屋敷に訪ねてこられました。
昭和30年代、Sさんのお父さんが作っていた和ろうそくです。
櫨蝋特有のオレンジ色となっていました。
櫨蝋は時間が経つと、ウグイス色から次第に白くなり、さらにオレンジ色へ変化します。
色が変化することで燃焼には変わりはありませんが、やはりパラフィン蝋みたいな合成品と違って生きている証みたいなものでしょうね。
Sさんが「父がやっていた和ろうそくの店を続けたかった」と言われた時、時代の流れに逆らえないとはいえ、和ろうそく職人とは、このように愛される職業だったのかと、改めて感じ入りました。
ふと「清浄」という文字に目がとまりました。
櫨ろうそくのラベルには、時折「清浄」という言葉が使われますし、なにより寛延三年に書かれた「農人錦の嚢」の一文を思い出しました。
…平和な世が続くにつれて、寺や神社への参詣者も日夜途絶えることなく、やむをえず灯明として牛からとった蝋を用いるようになりました。まことに汚らわしい事です。
もし櫨を盛んに植えるようになれば、牛をする仕事は自然となくなり、誰でもほっとするでしょう。まさに今こそ時がきたというべきでしょうか。
清浄な木蝋を使えば、神灯の光はいよいよ明るさを増して神と人とを近づけ、泰平の御代は永久に続くことでしょう。これこそ櫨の功徳というべきです。
櫨蝋は明らかに闇を払う「清浄」な炎として認識されていたのです。
以前から櫨蝋を灯すと空気が浄化されることは気づいていましたが、単にその場の空気だけではないのではないかという気がしてきました。
特別な何か、うまく言えないんですが、もっと神秘的というか信仰的な力が働いているのかもしれません。
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昭和30年代、Sさんのお父さんが作っていた和ろうそくです。
櫨蝋特有のオレンジ色となっていました。
櫨蝋は時間が経つと、ウグイス色から次第に白くなり、さらにオレンジ色へ変化します。
色が変化することで燃焼には変わりはありませんが、やはりパラフィン蝋みたいな合成品と違って生きている証みたいなものでしょうね。
Sさんが「父がやっていた和ろうそくの店を続けたかった」と言われた時、時代の流れに逆らえないとはいえ、和ろうそく職人とは、このように愛される職業だったのかと、改めて感じ入りました。
ふと「清浄」という文字に目がとまりました。
櫨ろうそくのラベルには、時折「清浄」という言葉が使われますし、なにより寛延三年に書かれた「農人錦の嚢」の一文を思い出しました。
…平和な世が続くにつれて、寺や神社への参詣者も日夜途絶えることなく、やむをえず灯明として牛からとった蝋を用いるようになりました。まことに汚らわしい事です。
もし櫨を盛んに植えるようになれば、牛をする仕事は自然となくなり、誰でもほっとするでしょう。まさに今こそ時がきたというべきでしょうか。
清浄な木蝋を使えば、神灯の光はいよいよ明るさを増して神と人とを近づけ、泰平の御代は永久に続くことでしょう。これこそ櫨の功徳というべきです。
櫨蝋は明らかに闇を払う「清浄」な炎として認識されていたのです。
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