エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

山吹

2016年04月13日 | ポエム
関東の平野部では、山吹が満開である。
その色合いは、目に優しく暖かい。

山吹には一重と八重とがあるけれど、どちらも美しい。
一枝一枝に、黄色い愛情が連なっている。



一重の花である。



八重の花である。
何とも言いようのない、黄金色である。
小判色と云っても良い。

悪徳商人の、象徴的な色合いである。
「がっはっはっ!越後屋おぬしも悪よな!」と言い放つ駿河屋。
その膝元には、小判の切りもちが二つ・・・なんてね。







「山吹や八重も一重も黄金色」







どの花も、我が家の近くのグリーンベルトにある。
散歩しながら、愛でるのは幸せである。

その幸せが長く続くと嬉しい。
けれど、なんとなく自分の寿命が計り知れる。



孫たちの声や、所作がふっと脳裏に浮かんでくる。
父や母、祖母、そして今は亡き肉親が夢枕に立って目覚めるときがある。
「迎えに来たのよ!」なのか「まだまだ先だからね!」と云いにきたのか。
それは判然としない。



この花は「山吹草」である。
昨日この花を見た。
山吹は花弁が五枚だけれど、山吹草は花弁が四枚である。

この背の低い山吹草が、ぼくを迎えにくる花なのかもしれない。
母を迎えに来たのは、コスモスだった・・・!
ぼくの人生は、フリージアから始まった。



フリージアも山吹も、どちらの花も黄色が定番である。
優しい色なのである。
そうだ、ぼくも優しくあらなければと思うのだ。
だが切れ易い60代。
血液が逆流するような感覚が、時々ある。
少し怖い・・・。




      荒 野人