エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

筆竜胆

2016年04月22日 | ポエム
竜胆は、仲秋の季語だけれど「筆竜胆」は春の季語である。
意識して探さなければ分からないほど、小さくて可憐な紫色である。

おそらく遠目では「スミレ」にしか見えない。
それほど背の低い鼻である。



この筆竜胆は、秩父美の山で見つけたのである。



春の山は色彩が仄かで、心が限りなく静まってゆく。
一方近目でみれば、翠が豊かであって心が安らぐのである。







「野の草や豊かな小さき筆竜胆」







かつてより、多くの俳人が竜胆を詠んでいる。
ただし、以下の二人は仲秋の竜胆を詠んでいる。


「りんだうや枯葉がちなる花咲きぬ」    与謝蕪村「夜半叟句集」

「好晴や壷に開いて濃竜胆」        杉田久女「杉田久女句集」


なかなか素敵な句である。
筆竜胆だと、以下の俳人である。
筆竜胆は、春竜胆とも云う。


「春りんだう入日はなやぎてもさみし」   安住 敦

「筆竜胆山下る子が胸に挿す」       廣瀬町子




筆竜胆のささやかな美しさは、小ささの中にあるのかもしれない。



      荒 野人