自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「雲を測る男」がまとう布

2005年06月13日 | ⇒トレンド探査
   去年10月にオープンした「金沢21世紀美術館」の入館者数が、きのう12日で100万人を突破しました。開館1周年で入館者100万人を見込んでいましたが、予想より4ヵ月も早く達成したので、関係はホッと胸をなでおろしているに違いありません。しかも、金沢の市祭「百万石まつり」の期間中に100万人ですから、ゴロ合わせもよくできています。
福を呼ぶ男      きょうは秘蔵の一枚をお見せします。秘蔵と言っても絵画ではありません。上記の写真です。美術館の屋上に据え付けられているヤン・ファーブル(ベルギー)のブロンズ作品「雲を測る男」です。美術館の作品目録によると、作者のファーブルはあの有名な昆虫学者ファン・アンリ・ファーブルのひ孫ということです。作品は映画「アルカトラズの鳥男」(1961年・アメリカ)から着想を得たそうです。サンフランシスコ沖のアルカトラズ島にある監獄に収監された主人公が独房で小鳥を飼ううちに、鳥の難病の薬を開発し鳥の権威となったという実話に基づく話。映画の終わりの場面で「研究の自由を剥奪された時は何をするか」と問いに主人公が答えたセリフが「雲でも測って過ごす」だったことからこの作品名がついたとか。昆虫学者の末裔らしい、知的なタイトルです。

   でも、この作品を実際に見た人なら「ちょっと違う」と気づくでしょう。そう、男が胴から腰にかけて白い布をまとっているのです。普段は身に付けていません。この写真を撮影した去年9月に、台風16号と18号が立て続けにやってきました。何しろ屋上に設置されているので台風で倒れるかもしれないと、まず布を胴体に巻いて、その上にワイヤーを巻いて左右で固定したのです。

   美術館はオープン前の一番あわただしいとき。その姿を、蓑豊(みの・ゆたか)館長が「金太郎さんの腹巻のようでしょう」とユーモアを交えて説明してくれたのが印象的でした。あれから8ヵ月、開館当初は「目標30万人」でした。それがすでに3倍以上にもなり大ブレイク。福を呼んでいるのは案外、屋上に立つ「この男」かもしれません。

⇒13日(月)午前・金沢の天気 晴れ
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