自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆GIAHS北京対話-中-

2011年06月11日 | ⇒トピック往来

 その瞬間に立ち会えて、北京に来た甲斐があったと感じた。きのう10日午後4時30分から始まった国連食糧農業機関(FAO)主催の「GIAHS国際フォーラム」の委員会で能登半島と佐渡のGIAHS(世界重要農業資産システム)認定が決まった。FAO側の責任者、GIAHSコーディネーターのパルビス氏が「日本からエントリーがあった能登半島と佐渡の申請に対して、拍手をもって同意を求めたい」と提案すると、20人の委員が拍手で採択した。能登地域GIAHS推進協議会(七尾市など4市4町)と佐渡市は去年12月17日にローマのFAOに申請登録書を提出していた。日本の2件のほか、中国・貴州省従江の案件(カモ・養魚・稲作の循環型農業)とインド・カシミールのサフラン農業も今回登録に追加された。

        農山漁村の国際ネットワークをつくろう

 GIAHSはFAOが2002年に設けた制度だ。伝統的な農業の営みや生物多様性が守られた重要な土地利用システムを登録し、農山漁村の持続的な発展を支援する仕組みで、ペルー、チリ、中国、フィリピン、チュニジア、アルジェリア、ケニア、タンザニアのパイロット地区8件が登録されている。もう少し詳しくこの制度を説明すると、1)食料安全保障と人間の福利を確保しながら、農業のシステムと生物多様性を育み適応させる、2)生物多様性と伝統的な知識を元の場所で保護するのと同時に、保護的な政府の政策やインセンティブを支援する、3)食料への権利、文化的な多様性、地元コミュニティーやその地域の人々の成果を評価し認識する、4)天然資源の管理のため、遺伝資源を元の場所で保護するという考え方に、さらに伝統知識や地元の慣例を統合していくというアプローチが必要であることを明確にする(「FAOホームページ」より)。簡単な話でいえば、共通の視点で、農山漁村の国際ネットワークをつくろうとうことなのだ。

 能登半島の場合、ユネスコの無形文化遺産として登録されている農耕儀礼「田の神アエノコト」を始めとして、1300年以上の歴史を持つため池と棚田の稲作、揚げ浜式の製塩技術など伝統と文化を売りとしている。農林水産業をベースとして、生物多様性や自然環境を守り、新たな価値を創造したいとの思いがある。フォーラムの2日目の10日、申請者の武元文平氏(石川県七尾市長)と高野宏一郎氏(新潟県佐渡市長)はそれぞれ能登と佐渡の農業を中心とした歴史や文化、将来展望などGIAHS申請の背景を英語でプレゼンテーションを行った。これ自体が画期的なことだ。

 選定のための委員会を傍聴して感じたことがある。当初非公開の会議と聞いていたが、オープンであり、撮影もとくに問題はなかった。足を引っ張る意見もなく、未来志向で人々と農業と環境の明日を考える、という雰囲気が漂っていた。きょう11日午前中に認証状の授与式がある。

※写真は、選定のための委員会で日本からの能登と佐渡のGIAHS登録を拍手で採択
⇒11日(土)朝・北京の天気  くもり

コメント (2)
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