世界農業遺産(GIAHS)のことが6月9日のテレビ朝日報道ステーションで取りあげられたり、共同通信の配信があったりしたおかげか、自在コラムへのアクセスが6月5日から25日までの集計で4900(訪問者数)にも上った。ところで6月18日付で国連食糧農業機関(FAO、本部ローマ)のGIAHS事務局長、パルビス・クーハフカン氏がGIAHS認証セレモニーに出席のため能登入りしたことを伝えた。そのときに、パルビス氏の演説(英文)を掲載したところ、友人たちから「そこまでやるんだったら、日本語も掲載しろ」としかられた。そこで今回は、その翻訳版を掲載したい。
【翻訳文】 石川県知事、能登の市長町長、武内(和彦)教授、政府関係者や地域の皆さん、そして友人知人の皆さんの前で、能登半島が世界的に重要な農業遺産システムとして世界農業遺産に登録される大変素晴らしいお祝いの日に、FAO(国連食糧農業機関)を代表してお話しできるのは、私にとって光栄で名誉なことです。
皆さんにぜひとも知ってもらいたいのは、世界農業遺産は過去についてではなく、未来についてのものであるということです。人類は、多くの困難に直面しています。金融経済危機、食糧、治安、貧困、環境悪化、気候変動、人口動態の均衡、そのほかにも多くの困難があります。現在の私たちの開発手法の土台が疑問視されており、グローバル化は地域の価値観に多くのひずみをもたらしています。そして、私たちの次世代の向かう先も疑問視されています。多くの科学者などが近年認めているように、私たちは新しい未来を築くために基本原則へ立ち返る必要があるのです。
GIAHS(世界重要農業資産システム)とは、生態学的、経済的、社会的な持続可能性の柱です。すなわち、地産地消、地域社会の強化、カーボンフットプリントの削減といったものです。それは、自然と調和して生きるための能力を使いこなし、向上させるために、地域固有の知を活用し、生物多様性の保全と持続可能な利用をすることです。それは、文化的多様性や、私たちの持つ深い信念や価値観を促進することであり、また美意識であり、私たちの深い信念を守ることであり、私たちの風景、つまり私たちの里山を評価することでもあります。世界農業遺産になるということは、名誉なことであると同時に、責任を負うことでもあるのです。
GIAHS地域の一員として活動する最初の段階は、利害関係者との協議、および事前のインフォームド・コンセントです。この原則は、生物多様性条約の主要原則の一つです。つまり、政治家、意思決定者、政府関係者は、地域社会や市民と共に議論し決定する必要があるということです。
次の段階は、GIAHSの原則を地域の方針と実践の中に取り入れることです。これは、生物多様性や文化的多様性を大切にし、地域固有の知識を保護し、美意識を大切にすることを意味します。それはすなわち、地域社会の強化であり、ブランド化やエコツーリズム、若者の移住やその生活といった新たな機会を提供するために、地域社会を整備・支援することです。
日本、中国、インド、そしてチリのような大国、およびその他の多くの国々が農業遺産を大切にしていることを非常に嬉しく思っています。しかし、これは無条件にそう認識されているわけではありません。GIAHSの原則をお手本のように実践している農場や農家を見定める必要があります。こうした人々・グループを支援し、生業がよくなるための手段を提供することによって、誰もがその生活や危機的状況を改善することができるでしょう。私たちには、環境志向経済の時代における環境志向農業が必要です。こうした目的の達成に向けて私たちが互いに協力し、さらに子供たちや若者世代の人たちが(農業に)戻ってきてこそ、私たちが本来目指す幸福な取り組みになると確信しています。どうもありがとうございました。
※写真(下)は、珠洲市の塩田村を見学するパルビス氏(6月17日)
⇒29日(水)朝・金沢の天気 くもり
【翻訳文】 石川県知事、能登の市長町長、武内(和彦)教授、政府関係者や地域の皆さん、そして友人知人の皆さんの前で、能登半島が世界的に重要な農業遺産システムとして世界農業遺産に登録される大変素晴らしいお祝いの日に、FAO(国連食糧農業機関)を代表してお話しできるのは、私にとって光栄で名誉なことです。
皆さんにぜひとも知ってもらいたいのは、世界農業遺産は過去についてではなく、未来についてのものであるということです。人類は、多くの困難に直面しています。金融経済危機、食糧、治安、貧困、環境悪化、気候変動、人口動態の均衡、そのほかにも多くの困難があります。現在の私たちの開発手法の土台が疑問視されており、グローバル化は地域の価値観に多くのひずみをもたらしています。そして、私たちの次世代の向かう先も疑問視されています。多くの科学者などが近年認めているように、私たちは新しい未来を築くために基本原則へ立ち返る必要があるのです。
GIAHS(世界重要農業資産システム)とは、生態学的、経済的、社会的な持続可能性の柱です。すなわち、地産地消、地域社会の強化、カーボンフットプリントの削減といったものです。それは、自然と調和して生きるための能力を使いこなし、向上させるために、地域固有の知を活用し、生物多様性の保全と持続可能な利用をすることです。それは、文化的多様性や、私たちの持つ深い信念や価値観を促進することであり、また美意識であり、私たちの深い信念を守ることであり、私たちの風景、つまり私たちの里山を評価することでもあります。世界農業遺産になるということは、名誉なことであると同時に、責任を負うことでもあるのです。
GIAHS地域の一員として活動する最初の段階は、利害関係者との協議、および事前のインフォームド・コンセントです。この原則は、生物多様性条約の主要原則の一つです。つまり、政治家、意思決定者、政府関係者は、地域社会や市民と共に議論し決定する必要があるということです。
次の段階は、GIAHSの原則を地域の方針と実践の中に取り入れることです。これは、生物多様性や文化的多様性を大切にし、地域固有の知識を保護し、美意識を大切にすることを意味します。それはすなわち、地域社会の強化であり、ブランド化やエコツーリズム、若者の移住やその生活といった新たな機会を提供するために、地域社会を整備・支援することです。
日本、中国、インド、そしてチリのような大国、およびその他の多くの国々が農業遺産を大切にしていることを非常に嬉しく思っています。しかし、これは無条件にそう認識されているわけではありません。GIAHSの原則をお手本のように実践している農場や農家を見定める必要があります。こうした人々・グループを支援し、生業がよくなるための手段を提供することによって、誰もがその生活や危機的状況を改善することができるでしょう。私たちには、環境志向経済の時代における環境志向農業が必要です。こうした目的の達成に向けて私たちが互いに協力し、さらに子供たちや若者世代の人たちが(農業に)戻ってきてこそ、私たちが本来目指す幸福な取り組みになると確信しています。どうもありがとうございました。
※写真(下)は、珠洲市の塩田村を見学するパルビス氏(6月17日)
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