自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★イフガオ再訪-追記

2013年12月09日 | ⇒トピック往来
  イフガオの棚田には青年海外協力隊員2人が派遣されており、金沢大学の説明会があると聞いて訪ねてきてくれた。渡辺樹里さんは、棚田で食材として利用されるドジョウの養殖を、中島千裕さんは日本企業のCSRで設置された小水力発電を活かした地域開発に取り組んでいる。

        イフガオの地域開発に携わる2人の青年海外協力隊員

  28日20時過ぎにイフガオ州立大学のゲストハウスに到着した。渡辺樹里さんがまっていてくれた。たまたま、マヨヤオ町長あてに出した手紙の封筒に「金沢大学」の名があり、金沢大学のイフガオ入りを知った。渡辺さんは東京都まれ。水産高校と大学で7年間水産学を学んだ。2012年10月から青年海外協力隊員(任期2015年8月)としてイフガオ州マヨヤオ町の町役場の農業事務所に赴任した。同地では、稲作農家に対して「水田養殖の普及活動」に取り組んでいる。ドジョウ養殖の普及活動。これは、棚田における単一稲作農業が、農家の現金収入にならないことと、それに伴い、肉体労働を敬遠する若者が都市へ流出してしまう…という後継者問題の対応策として始めたプロジェクトだ。

  現在、イフガオ州では渡辺さんと中島さんの2人が活動している。協力隊の特徴は、現地の人たちと二人三脚で草の根レベルで活動していける、という点にある。今後、金沢大学のJICA草の根技術協力(地域経済活性化特別枠)「世界農業遺産(GIAHS)「イフガオの棚田」の持続的発展のための人材養成」に、協力隊員である渡辺さんたちが何らかの形で加わってもらうことで、プログラムがより現地に根差したものになる、そのような可能性を見出している。

  渡辺さんは学生時代から「途上国における環境保全型養殖」をテーマに取り組んでいる。「ドジョウ養殖」は、新たな産業の導入を自然と人の調和を壊さずに実践していくかという課題の解決のヒントになる。ドジョウ養殖はこれまで、フォンデュアン町のOTOP(One Town One Product)に指定され、州をあげて力を入れた開発プロジェクトだったが、技術が定着することなくお蔵入りとなっていた。しかし、ドジョウはイフガオ州の気候条件に適しており、フィリピンの他の土地では生産できない、いわばイフガオの特産品となりうるもの。北ルソンでは好んで食べられている。配合飼料を与えずに育てられるため、環境に悪影響を与えず、棚田の景観を崩さない。イフガオ州での生息数が激減していることから、販売されている魚の中で最も高値がついており、1㌔600ペソもする。目指すところは、「人々のライフスタイルと環境に適合・調和する養殖の導入」ではある。

  しかし、ドジョウ養殖が根付き、年月が過ぎたときに生産効率を上げることに注力し、人々が養殖池をつくって高密度養殖を始めてしまう可能性もある。これを未然に防ぐためにも、今から「SATOYAMA」という考え方を地域の人たちに地道に伝えていく必要がある。そこに金沢大学の人材養成プログラムの意義があると、渡辺さんは期待している。

※写真は、イフガオのドパップ相撲。日本の相撲と違うのは、片足で競い、両足を先に着いたら負け。

⇒9日(月)夜・金沢の天気
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