今月11日に成田空港、マニラ空港を経由してフィリピンに入った。13日と14日に開催されるイフガオ里山マイスター養成プログラムの授業とワークショプに参加するためだ。イフガオ里山マイスター養成プログラムでは月1回(1泊2日)、イフガオ州大学を拠点に現地の若者(社会人)20人がフィリピン大学やイフガオ州大学の教員の指導で地域資源の活用や生物多様性と環境、持続可能な地域づくり、ビジネス創出について学んでいる。
イフガオの文化・伝統資源を価値として活かす地域の若者たち
イフガオの棚田は1995年にユネスコの世界文化遺産、2005年には国連食糧農業遺産に認定されている、壮大な棚田だ。その面積はざっと1万7000㌶、東京ディズニーランドとディズニーシーを合せた面積が100㌶なので、その170倍も広がる広大な棚田だ。さて、そのイフガオの棚田で起きている現実はこれまで何度かこのコラムで述べてきたように、若者の農業離れだ。現地の人が言うには、最近は若者だけでなく、中高年の田んぼ離れも広がっている、と。世界遺産でもある地域の文化を今度どう守って、継続的に発展させていけばよいのか、まったく日本と同じような、いや世界で起きているこの若者の農業離れという問題に向き合えばよいのか。そこで、金沢大学が国際協力機構(JICA)草の根技術協力事業で実施しているが、「世界農業遺産(GIAHS)イフガオの棚田の持続的発展のための人材養成プログラムの構築支援事業」、別称「イフガオ里山マイスター養成プログラム」。フィリピンでのカンターパートナーはイフガオ州大学、フィリピン大学オープン・ユニバーシティだ。
13日はイフガオ里山マイスター養成プログラムの受講生20人による研究課題の中間発表会が開かれた。いつくか受講生たちの研究課題を紹介したい。ヴィッキー・マダンゲングさん(41)はイフガオ大学の教員で、研究テーマは「イフガオの民俗資料と写真展示」だ。本人の大学における研究テーマでもあるのだが、イフガオ里山マイスター養成プログラムの受講生の仲間を通じてさらに情報を収集したいとプログラムに応募した。実際にヴィッキーさんが大学で収集してる民俗資料を見せてもらい、少々驚いた。一部は日本、あるいは能登のそれとそっくりなのだ。
たとえば、現地で今でも使用されているストーン・ミルだ。米などを挽いて粉に昔ながらのものだが、これが日本の石臼(いしうす)にそっくりなのだ。しかもサイズや石臼も回す取っての棒の配置なども、である。このほか、蓑(みの)やザル、カゴなど、懐かしさがこみ上げてくるようなものがさまざまに。1万年ほど前、中国の長江流域で稲作を中心とした農耕が始まったといわれる。その農耕文化が南に伝播してイフガオに、そして北に伝わり能登など日本に。そんな農耕文化のダイナミックな広がりを感じさせるのだ。ヴィッキーさんは「イフガオの民俗資料をまとめて文化遺産の価値や誇りを未来に伝えたい」と意欲を持っている。
もう一つ気になる発表を紹介する。家業手伝いのマイラ・ワチャイナさん(29)の研究はライス・ワイン。当地では伝統的な酒づくり。大鍋を使って米を火で炒(い)る。こんがりきつね色になるまで炒って、水を入れて炊きく。そこに昔から伝わるイースト菌を入れてバナナの葉でくるみ、5日間発酵させれば出来上がり。イフガオ伝統のティブンと呼ばれるライスワイン。酸味が効いて、甘味があり、確かに日本酒よりもワインに似た味だ。マイラさんをこれを地酒としてだけではなく、海外にも広めたいと考えている。どの品種の米が醸造に向いているのか、どのような販促活動をしていくのか研究する課題は多い。が、本人は「イフガオの米はすばらしいと思う。そこからすばらしいライン・ワインを世に出したい」と研究に余念がない。
地元であるイフガオの文化資源や伝統的な価値をもう一度見直して、地域を再生させたい、思いはまったく日本の現状と通じるのだ。
※写真説明:写真・上はイフガオの伝統的な高床式の茅葺家屋を説明するヴィッキー・マダンゲングさん(右)、写真・下はマイラ・ワチャイナさん(左から2人目)がつくったライス・ワインの試飲会
⇒13日夜・イフガオの天気 はれ
イフガオの文化・伝統資源を価値として活かす地域の若者たち
イフガオの棚田は1995年にユネスコの世界文化遺産、2005年には国連食糧農業遺産に認定されている、壮大な棚田だ。その面積はざっと1万7000㌶、東京ディズニーランドとディズニーシーを合せた面積が100㌶なので、その170倍も広がる広大な棚田だ。さて、そのイフガオの棚田で起きている現実はこれまで何度かこのコラムで述べてきたように、若者の農業離れだ。現地の人が言うには、最近は若者だけでなく、中高年の田んぼ離れも広がっている、と。世界遺産でもある地域の文化を今度どう守って、継続的に発展させていけばよいのか、まったく日本と同じような、いや世界で起きているこの若者の農業離れという問題に向き合えばよいのか。そこで、金沢大学が国際協力機構(JICA)草の根技術協力事業で実施しているが、「世界農業遺産(GIAHS)イフガオの棚田の持続的発展のための人材養成プログラムの構築支援事業」、別称「イフガオ里山マイスター養成プログラム」。フィリピンでのカンターパートナーはイフガオ州大学、フィリピン大学オープン・ユニバーシティだ。
13日はイフガオ里山マイスター養成プログラムの受講生20人による研究課題の中間発表会が開かれた。いつくか受講生たちの研究課題を紹介したい。ヴィッキー・マダンゲングさん(41)はイフガオ大学の教員で、研究テーマは「イフガオの民俗資料と写真展示」だ。本人の大学における研究テーマでもあるのだが、イフガオ里山マイスター養成プログラムの受講生の仲間を通じてさらに情報を収集したいとプログラムに応募した。実際にヴィッキーさんが大学で収集してる民俗資料を見せてもらい、少々驚いた。一部は日本、あるいは能登のそれとそっくりなのだ。
たとえば、現地で今でも使用されているストーン・ミルだ。米などを挽いて粉に昔ながらのものだが、これが日本の石臼(いしうす)にそっくりなのだ。しかもサイズや石臼も回す取っての棒の配置なども、である。このほか、蓑(みの)やザル、カゴなど、懐かしさがこみ上げてくるようなものがさまざまに。1万年ほど前、中国の長江流域で稲作を中心とした農耕が始まったといわれる。その農耕文化が南に伝播してイフガオに、そして北に伝わり能登など日本に。そんな農耕文化のダイナミックな広がりを感じさせるのだ。ヴィッキーさんは「イフガオの民俗資料をまとめて文化遺産の価値や誇りを未来に伝えたい」と意欲を持っている。
もう一つ気になる発表を紹介する。家業手伝いのマイラ・ワチャイナさん(29)の研究はライス・ワイン。当地では伝統的な酒づくり。大鍋を使って米を火で炒(い)る。こんがりきつね色になるまで炒って、水を入れて炊きく。そこに昔から伝わるイースト菌を入れてバナナの葉でくるみ、5日間発酵させれば出来上がり。イフガオ伝統のティブンと呼ばれるライスワイン。酸味が効いて、甘味があり、確かに日本酒よりもワインに似た味だ。マイラさんをこれを地酒としてだけではなく、海外にも広めたいと考えている。どの品種の米が醸造に向いているのか、どのような販促活動をしていくのか研究する課題は多い。が、本人は「イフガオの米はすばらしいと思う。そこからすばらしいライン・ワインを世に出したい」と研究に余念がない。
地元であるイフガオの文化資源や伝統的な価値をもう一度見直して、地域を再生させたい、思いはまったく日本の現状と通じるのだ。
※写真説明:写真・上はイフガオの伝統的な高床式の茅葺家屋を説明するヴィッキー・マダンゲングさん(右)、写真・下はマイラ・ワチャイナさん(左から2人目)がつくったライス・ワインの試飲会
⇒13日夜・イフガオの天気 はれ