自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆イフガオにて‐中

2014年11月14日 | ⇒トピック往来
  イフガオに入って2日目。イフガオ里山マイスター養成プログラムを現地で支援する「イフガオGIAHS持続発展協議会(IGDC=Ifugao GIAHS Sustainable Development Committee)が11月14日開催された。イフガオGIAHS持続発展協議会はことし3月25日に設立され、イフオガ州のアティ・デニス・ハバウエル知事が会長に就任した。今回の会合はイフガオ里山マイスター養成プログラムの活動状況を報告する目的で、州知事はじめ、バナウエ、ホンデュワン、マユヤオの3自治体関係者が参加した。

        州知事をうならせた受講生の課題研究プレゼン           

  開会挨拶のなかで、イフガオ州大学のセラフィン・ゴハヨン学長が、イフガオの棚田を保全する人材養成を支援するための学内組織「GIAHS支援センター(仮)」の設置を表明した。続いて、JICA事業「世界農業遺産(GIAHS)イフガオの棚田の持続的発展のための人材養成プログラムの構築支援事業」の日本側実施責任である金沢大学の中村浩二特任教授が能登里山里海マイスター育成プログラムの取り組みの進捗状況を説明。イフガオ州大学のダイナ・リチヤヨ教授がイフガオ里山マイスター養成プログラムこれまでの活動状況(6回の講義、能登研修など)を報告した。その後、受講生の中から選ばれた5人が課題研究の中間報告をプレゼンし、イフガオに伝わる農耕や文化資源の価値を再評価し、現代の視点で活かす試みを披露しました。この協議会のハイライトは前回のコラムでも掲載したように受講生たちの課題研究のプレゼンだ。

  アマラ・ダーエンさん=民間事務職員=の研究テーマは「伝統的な薬用植物」。イフガオの集落の多くは人里離れており、伝統的な薬用植物を自前で調達してきた。咳止めや糖尿病に効くといわれる薬用植物を10種類採取し、専門家の意見を聞きデータ収集。市販も視野に。ジェネリン・リモングさん=自治体職員(農業)=の研究テーマ「市販飼料と有機飼料による養豚の比較」。市販の飼料による 養豚より、伝統の有機飼料の養豚の方がコストも発育も優れていることをデータにより示した。マリヤ・ナユサンさん=保育士=の研究テーマは「離乳食に活用する伝統のコメ品種」。保育士の立場から、離乳食の歴史を調べる。乳児の発育によいイフガオ伝統コメ品種を比較調査している。マイラ・ワチャイナさん=家事手伝い・主婦=の研究テーマは「伝統品種米の醸造加工」。親族が遺した伝統のライス・ワイン製造器を活用し、イネ品種や、イースト菌の違いによる酒味やコクを調査。売上の一部を棚田保全に役立てる販売システムを検討している。

  受講生たちの発表を受けて今後のイフガオGIAHS持続発展協議会の取り組みの方向性などが話し合われた。まず、議長を務めたハバウエル知事は、「かつて先ほどの発表のような伝統資源のビジネス化をテー マとした事業化を計ったことがあったがうまくいかなかった。今回のプレゼンを聞いて、研究調査計画がよく練られており、たとえばライス・ワインなどは市場価値が高いと感じている。州政府として今後予算化も含めて、イフガオ里山マイスター養成プログラムの受講生たちを支援する取り組みを始めなければならないと考えている」と高く評価した=写真・下=。

  ゴハヨン・イフガオ州大学長は「受講生たちはこれまでのマイスター授業(6回)で里山概論、土地利用、生態学的な視点、伝統的なコメづくり、地元食材の料理法などを学んでいる。その上で、イフガオ棚田を保全し、活性化することを自らのテーマとして選び、調査し、議論を重ねた上でプレゼンしている。これらの課題研究はイフガオにとって非常に有用で、可能性がある」と述べた。

⇒14日(金)夜・イフガオの天気    はれ
        



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