自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆空路も鉄路も

2015年04月10日 | ⇒メディア時評

  先月29日付のコラムでこんなことを書いた。北陸新幹線金沢開業にもかかわらず、富山県庁や富山市役所では職員の東京出張は飛行機でと呼びかけている、という。4月から6月の利用状況によっては今後、減便や機体の小型化が予想されるからだ。東京駅から富山駅は最速で2時間8分なので、それぞれの利用者にとっては都心、あるいは市の中心街へのアクセスを考えれば新幹線に利便性がある。しかし、空のネットワーク(富山‐羽田‐成田)で国内外へのフライトを考えれば当然、空の便も確保しておきたいと行政が必至になるのは当然だろう、と。

  4月6日付の「J-CASTニュース」で、こんな見出しで記事が紹介された。「『はしご』はずされた北陸新幹線? 富山県・市「東京出張は飛行機でのワケ」。ヤフーニュースでもこの記事は高いアクセスランキングで、きょうも掲載されている。J-CASTニュースの内容は、「北陸新幹線開業を熱望したはずの地元自治体が、首都圏への出張には飛行機を使うように職員に呼びかけるという珍現象が起こっている。」として、新幹線開業に対抗して航空運賃が値下がりし、富山駅‐東京駅で通算すると飛行機が経済的に安いとその理由を上げている。

  確かに、北陸新幹線の開業で、3時間14分だった東京-富山間が2時間8分に短縮された。ところが、開業2日前の3月12日、富山県庁は職員に対して、東京出張の際にはできるだけ飛行機の「特割」を利用するように求める通達を出した。富山空港と羽田空港の間は全日空が1日に6便往復しており、新幹線開業後も引き続き飛行機の利用を求めた格好だ。「開業の祝賀ムードに水を差すようにも見える動き」と同ニュース。県庁側は「経済的な理由」だと説明しているという。

  飛行機の場合、搭乗日前日まで購入できる割引運賃の「特割」が最も安い場合で片道1万1290円。北陸新幹線は、指定席で片道1万2730円。富山駅から富山空港までのバス代410円、羽田空港から東京駅までの電車代580円を加算して、富山駅‐東京駅で比べると、飛行機の方が450円安くなる計算になる。ただ、富山駅から富山空港までは20分、羽田空港から東京駅まで35分かかるので時間的なメリットはない。

  富山県庁がこのような通達を出したのは、はたして経済的なメリットのためだけだろうか。冒頭で述べたように、空路を確保しておきたいのである。空のネットワークは欠かせないのいうまでもない。新幹線効果で、富山‐東京便が減便になってはむしろ不便なのだ。地域の行政としては、空路と鉄路ともに確保しておきたい、通達は苦肉の策なのだ。地方に住む住民ならば理解できるのではないか。

⇒10日(金)朝・金沢の天気   くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする