今月26、27日に開催される伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)まであと21日。歓迎ムードは盛り上がっている。近鉄鳥羽駅前の広場では、「歓迎G7」の看板とともに、ベゴニアやマリーゴールドなど使って、赤や青、黄色など花の色分けでサミット参加国の国旗をあしらった花壇が設置されている。随分と工夫を重ねたディスプレイだと感心する。花でサミットの成功を祈念する地域の人たちの意気込みが伝わってくる。
「歓迎G7」の心意気、この地はすでに国際的な観光地
読売新聞社会面(5日付)によると、三重県の行政や企業やつくる「伊勢志摩サミット県民会議」が300人のボランティアを伊勢市で設置された国際メディアセンター(IMC)などに配置すると伝えている。各国から取材に訪れる新聞やテレビ、通信社の記者やカメラマンを道案内すると同時に、地域の観光や食文化など魅力も紹介する役目も担っている。300人のボランティアは1000人の応募から選ばれ、最高齢は82歳の元大学教授。この記事からは、伊勢志摩の魅力も併せて世界に情報発信したいと、地域ぐるみの意欲的な取り組みが感じられるのだ。
首脳会合と各国首脳の宿泊場所は賢島にある志摩観光ホテル(クラシック、ベイスイート)が予定されているが、そのほかにもサミット議長の記者会見場、各国首脳の記者会見場、サミット事務局、各国事務局、各国随行員の宿泊場所、サブ・メディア・センター(記者の待機所など)などは志摩観光ホテル近くの別のホテルで分散して設けられる。
主舞台の志摩観光ホテルからはおよそ20㌔離れた、伊勢市の県営サンアリーナに国際メディアセンターがある。野次馬根性で会場を見学してみたいと現地を訪れたが、入口で丁重に断わられた。確かにまだ工事中なので関係者以外の立ち入りは難しい。本館メインアリーナでは、テレビなど映像メディア向けのブースが120も準備される。サブアリーナでは記者の共用作業スペースとして800席の設ける準備が進んでいる。サンアリーナ南側では仮設の別館が設けられ、新聞や雑誌など国内メディアの記者たちの作業場となる。別館ではビュッフェ形式のダイニングスペースが設けられる。ざっと5000人のメディア関係者の参加が予想されている。伊勢志摩からどのようなニュースが世界に発信されるのか楽しみが増えた。
2泊3日の伊勢志摩ツアーの最終日、近鉄鳥羽駅近くの「ミキモト真珠島」を訪ねた。橋で渡るこの島は、1893年に御木本幸吉が世界で初めて真珠の養殖に成功した島との説明があり、真珠博物館海や女の潜水作業の実演、ショッピンも楽しめる真珠のテーマパークになっている。パールショップでは、外国人観光客がショッピングを楽しんでいる光景があちこちに。施設や広場の看板を見渡すと、すべてが日本語と英語の表記、ガイドでもショッピングでも店員スタッフが英語で対応している。様子を見る限り、スタッフの対応は下から目線でも上から目線でもない。客と正面から向きあって、丁寧に商品説明をしている。
ここで、はたと気づいた。冒頭のガイドボランティア300人の行動のお手本がここなのではないか、と。伊勢志摩の歴史と伝統、そして技術に育まれた名所や食文化を面と向かって丁寧に説明することが日本を理解してもらう「正道」で、海外の観光客に喜ばれるポイントだと地域の人たちは気付いている。その意味で、伊勢志摩、そして鳥羽を含めたこの一帯はすでに国際的な観光地なのだ。
御木本幸吉記念館でこんなエピソードが紹介されている。1905年、それまで半円真珠の養殖だったが、真円真珠の養殖に成功。1919年、ロンドンの支店で真円真珠の販売を始めた。天然真珠より25%安い価格設定だったので、天然真珠の価値が下がることを恐れたヨーロッパの宝石商たちは養殖真珠は偽物だと訴訟を起こした。しかし、イギリスとフランスの研究者たちが天然と養殖ものに本質的な違いはないと証明する。これをきっかけに「ミキモトパール」が逆に信頼を得ることになり、その後ニューヨーク、パリと事業展開、養殖真珠が輝く日本の文化として世界に認知されるきっかけとなった。
⇒5日(木)午後・鳥羽の天気 はれ