自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆さいはてのアート <下>

2017年10月20日 | ⇒トピック往来
   先日(今月7日)、奥能登国際芸術祭の実行委員長でもある泉谷満寿裕・珠洲市長と立ち話だったが、今回のアートフェスティバルについて話をうかがうチャンスに恵まれた。「すごい反響ですね」と水を向けると、泉谷氏は「おかげさまで鑑賞者は目標の2倍の6万人を超えそうな勢いで、手応えを感じています」と口元がほころんだ。

    ~芸術はセットで一つ、可能性の示唆「Something Else is Possible」~

    次に「トリエンナーレ(3年に一度の美術展)で次回は2020年になりますが、『奥能登』と銘打っているので2市2町(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)へと会場を広げるお考えはあるのですのか」と質問した。「さいはてのアートなので、他の自治体とも連携してできればさらにアートの面白味がでてきます。しかし、運営資金を出し合うとなると途端にハードルは高くなります」と今度は口元が引き締まった。1週間後の14日夜、再び泉谷市長にお目にかかった。地元のキリコ祭りの会場で、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」で知られる新潟県十日町市の関口芳文市長の訪問を受けて、市内を案内されていた。珠洲市と十日町市の連携イベントを模索しているのかと直感したのだが。

   鉄道の能登線の終着駅だった旧・蛸島(たこじま)駅から数百㍍点前、かつての線路上にカラフルな作品がある。「なにか他にできる Something Else is Possible」(作者:トビアス・レーベルガー)。何か可能性を引き出してくれそうな、響きのある言葉だ。ドイツ人作家であるレ style="float:left; margin: 5px;">    ーベルガー氏が能登に贈ったメッセージではないだろうか。「さいはて」であるがゆえに出来ることがある、と。

    黄色からピンク色への暖色に塗られたトンネルのようなカタチをした作品だ。レールの上を意識したのだろうか。そのトンネルの出口付近に双眼鏡を置いてあり、のぞくとネオンサインの看板が見え、そこに「Something Else is Possible」の文字が描かれている。ボランティアの男性ガイドによると、ネオンサインの看板とセットで一つの作品なのだと解説してくれた。なるほど。肉眼であれ、双眼鏡であれ、近くでも遠く離れていても「作品の場」は構成できる。なるほど、芸術はセットで一つだ。 

   もう一つセットがあった。作品から100㍍ほど山側の線路上に錆びた電車が1車両ある。2005年4月に穴水駅以北の能登線が廃止された後、地元の有志が買い取ってイベントなどに使っていた。が、最近ではガラスが割れ、錆びなどの痛みも激しく、利用されず放置状態となっている。そこで、錆びた車両、カラフルなトンネル、ネオンサインの看板と3点セットで見てみると、過疎の現実からアート表現へ、過去・現在・未来へ、絶望から可能性へ、など一本のレールの上で物語が構成されていることに気付く。

   「さいはて」のアートは22日に千秋楽だ。大型台風が来ることも予想される。衆院選総選挙の投票日も重なって、慌ただしさの中でフィナーレを迎える。2020年、どのような運営コンセプトで開催され、作品が鑑賞できるのか。

⇒20日(金)夜・金沢の天気  くもり 
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