最近のニュースで解せない点が、このブログで何度か取り上げた、北朝鮮の漁船による能登半島沖の大和堆(日本のEEZ=排他的経済水域)での違法操業だ。地元紙は「1千隻規模の不審船がレーダーなどで確認している。夏より多い」との漁業関係者の憤りの声を記事にしている。しかし、9月の国連安全保障理事会による北朝鮮への追加制裁決議で、漁船の燃料となる原油や石油製品の規制を設けたはずだ。
追加制裁では、原油輸出は採択後の12ヵ月間の総量を採択前の12ヵ月間の実績を超えない、石油精製品の輸出量は2017年10-12月50万バレル、18年以降は年間上限を200万バレルに設定した。加盟国には北朝鮮への輸出量を毎月報告するよう求めた。追加制裁が額面通り実施されていれば、ガソリンなどは軍事優先で占められ、漁船への配分は限られると推測する。にもかかわらず、「夏より多い」とはどういうことだろうか。海上保安庁は8月までに延べ820隻の違法操業船を警告や散水して退去させたと発表している。
この背景は何だろう。追加制裁がまさにザル法と化して、漁業者に潤沢にガソリンが提供されているということなのか、あるいは食料自給が水産物に頼らざるを得なくなり国策として、漁業者に優先的にガソリンを回しているのか。
15日午後、能登半島沖360㌔のEEZ外で漁船が転覆してるのを海上自衛隊の航空機が発見し、海上保安庁の巡視船が乗組員を救助したとニュースがあった。救助された乗組員は北朝鮮籍の男性3人。漁船は小型船で15人が乗っていたという。残りの12人は不明で捜査が続けられている。乗組員は10月24日に北朝鮮北東部の清洋港を出港し、日本海で操業、寄港する途中にに転覆した。3人は帰国を希望しており、別の北朝鮮船籍の漁船に引き渡された。海上保安庁は新たに能登沖340㌔で別の船が転覆しているのを発見している。相次ぐ転覆。勘ぐれば、大和堆でスルメイカを獲り過ぎて漁船はバランスを崩したのか。
同じ日の15日、石川県漁協のイカ釣り漁関係者が水産庁を訪れ、北朝鮮による違法操業への取り締まりの強化を水産庁長官に要望した。能登半島のイカ釣り漁の拠点である小木漁協では、最盛期の11月でも水揚げ額は2億円、これは昨年の3割でしかなかく、「死活問題になっている」と窮状を訴えたと報じられている。イカ釣り漁関係者の一行は外務省や海上保安庁の担当者にも同様の訴えを行ったが、臨検や拿捕といった取り締まりの強化策には言及はなかったという。
これらの報道に目を通せば、日本海で今起きていることの現実が見えてくる。大量の北朝鮮漁船に違法操業の現実、国連安保理による経済制裁の実効性への疑念、北朝鮮漁船の帰港途中の転覆事故、日本漁船の水揚げ急減の窮状、懸念される所轄官庁の反応。日本海は日増しに「国難の海」へと状況が加速している。
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