自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★ニュースのサイコパス

2017年11月13日 | ⇒メディア時評
   テレビのニュース価値は下がるばかりだ。おそらくテレビ局側も現場は士気が下がっているのではないだろうか。今月6日夜、札幌のススキノからタクシーに乗った男が運転手が道順を巡って、タクシーの防護板を足でけって破壊する様子が今でも繰り返し番組で流されている。男は990円の料金を払わずにタクシーを降り、スマートフォンを投げつけた。その後、ネット上では早々と、この男が札幌弁護士会に所属する30代の弁護士だと実名出ていた。

    そこで、札幌弁護士会のホームページを確認すると今日(13日)、「市民の皆様へ」と、札幌弁護士会の会長のコメントが掲載されていた。「当会の会員が、タクシー乗車中、車内の器物を損壊する等に及んだことが報道されております。事実であれば、断じてあってはならないことであり、極めて遺憾というほかありません。当会としても、必要な情報収集を行い,会員の非違行為が確認できた場合には,厳正に対応する所存です。」と。

   このコメント自体に違和感を感じるというか、「ぬるい」。「会員の非違行為が確認できた場合には,厳正に対応する所存です」との部分だ。非違行為は非法行為と違法行為のことだが、あの映像は誰が視聴しても破壊行為であり、暴力行為だ。運転中のドラバーの後ろのシートを蹴っているので、道路交通法違反(運転妨害)でもあるだろう。単なる、器物損壊ではない。それを「会員の非違行為が確認できた場合には、」などとコメントすること自体、違和感を増幅させる。「厳正に対応する所存です。」でよいのではないか。

   テレビのニュース価値を下げている、もう一つのニュースがサイコパス(精神病質者)的な犯罪と言われる神奈川県座間市の連続殺人事件。先月31日に事件が発覚して以来、その事件の異常性が伝えられている。その惨状を想像すると嫌悪感がわく。知り合いは「最近テレビのチャンネルを変えるどころか、テレビそのものを見たくない」と拒否反応の様子だ。

   そうした視聴者の心境を察してか、テレビ局はこぞって、トランプ大統領と娘のイヴァンカ大統領補佐官の来日(それぞれ今月5-7日、2-4日)を競うように明るい話題として扱った。それも、メラニア大統領夫人のファッションがどうだこうだ、と。日本政府主催の「国際女性会議WAW!」で、イヴァンカ氏が「アベノミクスはウーマノミクスである」とスピーチをすると、父親のトランプより演説のレベルが高いなどと番組のコメンテーターが褒めそやす。そんな程度なのだ。

   7日にトランプ大統領が離日、するとまた座間の連続殺人の続報、それに札幌のタクシー事件が加わった。それにしても、座間事件は9人も殺害された凄惨な事件だ。果たして裁判員裁判が成立するのか。裁判員を辞退するのは3人に2人といわれる。その理由に、遺体写真を見てトラウマ(心的外傷)になることを恐れる人が多い。もし、私にこの事件の裁判員の通知が届いたらどう判断するだろうか。そんな余計なことまで考えてしまう。
   
⇒13日(月)夜・金沢の天気   はれ
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