これを「矛盾」という。アメリカのシンクタンクが日本時間できのう9日夜に開催したオンライン形式の講演会で、河野防衛大臣は衆議院の解散・総選挙の時期について「10月中にはおそらく行われると思う」と述べたと報じられている(9月10日付・NHKニュースWeb版)。自民党の総裁選では政治的な空白が起きないように全国の党員票は割愛して、国会議員票と各県連の票のみで総裁を決めるとの党の方針が決まっている。ところが、総理が決まり、河野氏が言う通りに信任のための総選挙を10月に行うとすれば、総裁選で省かれた党員票を持つ人たちは「これは矛盾だ、詐欺だ」と声を出し始めるのではないだろうか。
河野氏が指摘するように、信任投票は必要だろう。しかし、新型コロナウイルスの感染拡が治まらない中では、「時期を見計らって、総選挙を」と言えば理解されたはずだ。「10月」と限定したことで、党員どころか、有権者全体から不信感を持たれる。ましてや、解散権は総理の権限だ。現職閣僚の立場にある人物がこのような発言をすることで、政権のガバナンスが問われるのではないだろうか。
自民党総裁選の告示を受けた共同通信の全国緊急電話世論調査(8、9日実施)が発表されている(9月9日付・共同通信Web版)。次期首相に「誰がふさわしいか」との問いでは、菅氏が50.2%でトップ、石破氏30.9%、岸田氏8.0%と続いた。前回の緊急世論調査(8月29、30日)では候補者は決まっていなかったが、石破氏が34.5%、菅氏14.3%、河野氏13.6%、小泉氏10.1%、岸田氏7.5%だった。この10日余りで石破氏と菅氏の順位が入れ替わり、菅氏は20ポイントの差をつけて、過半数を占めたことになる。調査は電話による聞き取りで固定電話525人、携帯電話530人だった。
これも共同通信の調査だが、自民党総裁選で1人1票を持つ党所属国会議員394人のうち菅氏を支持する割合は8割。総裁選は県連の141票を合わせると計535票になるが、菅氏の得票は7割に達する勢い。2位争いは岸氏が国会議員票でリードし、石破氏が県連票で強みを見せる展開で両氏が競り合っている(9月9日付・共同通信Web版)。
どうやら、「菅1強」の様相を呈している。前回のブログでも述べたが、メディアの記者にとって実務肌でスキを見せない菅氏は手強い。コロナ禍で落ち込んだ景気の回復、延期された東京オリンピック・パラリンピックの開催など山積する課題を乗り切るには、この手強さが必要なのかもしれない。逆にメディアは「菅1強」に何をどのように問うのか、試されることになるだろう。
(※写真は2019年4月1日、記者会見で菅官房長官が墨書を掲げて新元号を公表する様子=総理官邸ホームページより)
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