自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★輸出すれど食さず、欧米人の「マツタケ観」

2020年09月08日 | ⇒トピック往来

           金沢の気温はきょう36度もあった。南風のフェーン現象だろうと想像がつく。体温並み、うだる暑さの猛暑日だ。ただ、庭先に出てみると、コオロギの鳴き声が聞こえて秋の気配を感じる。ヤフーニュースで目を引いた記事(9月8日付)があった。アメリカのオレゴン州のマツタケが危機というのだ。

   記事によると、アメリカ西海岸の山林で毎年のように起きる山火事が今年は異常に広がっていて、マツタケの採取ができず、日本への出荷に待ったがかかっている。オレゴン州ではマツタケは高価で売れることから、「白いゴールドラッシュ」と呼ばれているそうだ。   

   フィンランドやスウェーデンからもマツタケが日本に輸出されている。森林にマツタケがもともとはえていたが、食する習慣がなく放置されていた。日本のマツタケとほぼ同じDNAを持ち、価格も安く、日本では人気がある。ここで不思議に思うのは、欧米では、すしなど日本食ブームでそれに合う日本酒の売れ行きも好調と聞く。にもかかわずらず、輸出はすれど、欧米人はマツタケを食さない。それはなぜか。

   これは知り合いの料理人からかつて聞いた話だ。いわく、「欧米の人がマツタケを食さない理由は、マツタケの香りが靴の中のこもった臭気を連想させるからだそうですよ」と。確かに、そう言われればそのようなにおいかも知れない。欧米では靴の歴史が長いので、「においマツタケ、味はシメジ」などと説明しても理解はしてもらえないだろう。日本では靴が入ってきた文明開化の明治以前からマツタケを珍重していたので、「においマツタケ」は昔から脳にすり込まれていた。

   でも、ひょっとして日本の若い世代が「あんな靴の中の臭いがする高価なマツタケなんて食べたくない」と言い出す日がくるかもしれない。あるいは、「オレたちの感覚が間違っていた。これこそ世界最高の食文化だ」とすき焼きにマツタケを入れて食する欧米人が増える日がくるかもしれない。

⇒8日(火)夜・金沢の天気     はれ

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