自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆フジテレビは「課題のデパート」なぜ

2021年04月09日 | ⇒メディア時評

   フジテレビは「課題のデパート」なのか。また新たな問題が浮上している。フジ・メディア・ホールディングスは、フジテレビなどを傘下に持ち、放送法の「認定放送持株会社」として認定を受けている。放送局が報道機関として社会に大きな影響力を持つことなどから、外国の法人などが持つ議決権の比率を20%未満に抑える外資規制が定められているが、フジ・メディア・ホールディングスでは2012年9月末から2014年3月末にかけて外国の法人などの比率が20%以上となり、外資規制に違反した状態になっていた(4月8日付・NHKニュースWeb版)。

   単純な話、たとえば中国資本の企業が20%以上の株を持って、フジテレビに「中国に友好的な番組をつくれ」と要求してきたとすると、フジはおそらく呑むしかない。友好的な番組とはニュース番組も含めてのことだ。さらに、その中国資本の企業が番組CMのスポンサーとなって、意に反する番組をつくらせないとなったら、実質的にフジを乗っるような状態になってしまう。もちろん、これはフジテレビだけの問題ではない。すべてのテレビ局に言えることだ。何しろテレビ局は出資者とスポンサーには頭が上がらない。

   外資規制の違反があったからフジテレビの放送免許の取り消しをと言っている訳ではない。人気番組をさまざまに持つテレビ局の電波を停止することは視聴者の楽しみを奪うことになる。それにしても、冒頭で述べたようになぜフジに問題が集中しているのか。NHKと民放連によって設置された第三者機関「BPO」のサイトをチェックすれば、一目瞭然だ。審議案件はフジテレビが圧倒的に多い=写真=。

   BPOの放送倫理検証委員会で審議されたことは、フジが2019年5月から2020年5月まで14回にわたり実施した世論調査で、調査会社の社員が電話をしていないにもかかわらず「電話をした」として架空の調査データが入力されていた問題。また、同局のクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』は100人の参加者から選ばれた解答者1人が、残る99人を相手にクイズで競う番組コンセプトだが、参加者が不足した際、エキストラを出演させて補っていた。

   そして、放送人権委員会が取り上げたのは、このブログでも何度かテーマとした、女子プロレスラーの自死が問題となったリアリティ番組『テラスハウス』(放送:2020年5月19日未明)についての審理だった。

   ではなぜ、放送倫理や人権が問われる問題が発生するのか。女子プロレスラーの自死の問題について放送人権委員会が提起した問題は以下だった。「女性の精神状態を適切に理解するために専門家に相談をするなどのより慎重な対応が求められたのではないか」「制作責任者(チーフプロデューサー)、あるいはその他、社内の然るべき立場にある者の間ではこのことが深刻に受け止められていなかったのではないか」と指摘した。

   女性の自傷行為のケアをしていたのはフジテレビの局員ではなく、番組制作会社のスタッフだった。番組の制作現場は、局の制作プロデューサーやディレクター、制作会社ディレクター、孫請け会社の制作スタッフなど二重、三重の構造になっている。そのため、局の制作責任者は末端にまで目が行き届かず、現場任せの状態になっている。これは憶測だが、外資のチェックも社外スタッフに任せていたのではないだろうか。

   フジの業務の下請け化は番組制作にとどまらず、経理や人事、営業などさまざまなセクションに及んでいるのだろう。人件費の圧縮に腐心したツケが回ってきたのだ。もちろん、これはフジだけの問題ではない、テレビ局全体が問われる話ではある。

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